旧宅探訪  第3回

フレンドマンション

 
下関マグロ(第14号で「僕の八〇年代エロ本仕事」を執筆)
 
 
 
 
 
前回は荻窪ラーメンのことばかり書いてしまい、田島荘での出来事をほどんど書いていなかった。今回は、もう少し田島荘での出来事も書いておこう。

上京してまず住まいを決めてから就職先をさがしたのだが、この順序が逆だったら、僕は荻窪には住んでいなかったかもしれない。前回も書いたけれど、会社のある場所は地下鉄千代田線の乃木坂駅だった。もしも、就職先が先に決まっていたら、千代田線の沿線に住んでいたかもしれない。ひょっとしたら、千代田線と連絡がある小田急線の沿線を選んでいたように思う。

仕事は営業だったので、ほぼ仕事の時間は決まっていた。出社は10時半、終わるのは午後6時半だった。仕事を終えて、荻窪駅まで戻ってきて、駅前にある松屋などの店で食事して帰宅。テレビでも見て、近所の銭湯へ行くのが平日の日課だった。大学時代もだいたいが風呂なしのアパートに住んでいたので、銭湯通いは慣れていたのだけれど、大阪との違いといえば、湯が熱いなと思ったくらいで、あとは同じようなかんじだった。銭湯はすぐ近所だったが、消防車がたくさん停車しているのが見えた。最初はどこか火事なのかと思って歩いていたが、アパートに近づくにつれ消防車が多くなる。ドキドキした。たしかに、田島荘だ。自分の部屋のタバコはどうだったろう。火は見えなかった。そして、1階の自分の部屋ではなくてホッとした。どうやらボヤらしい。二階がドタドタしていた。なにか手伝えることがあるかと二階に言ってみた。二階の通路に大家の女性がいたので、「なにか手伝うことありますか?」と声をかけたら、キッとした表情で「二階は女性専用なのですぐに降りてください」と言うのだ。な、なんだ初めて知ったよ、女性専用なんだ。つか、火事は大丈夫なのか。事情がよくわからないので、表に出て野次馬のひとりに「どんなかんじなんですか」と聞けば、「二階でろうそくが倒れて火が出たそうだけど、幸いなんてことなかったみたい」と教えてくれた。
 

 

仕事に少し慣れてくると、会社の人と酒を飲みに行くこともあった。乃木坂や六本木あたりの安い居酒屋だった。ある夜、少し遅くなりすぎた。深夜0時近くに乃木坂駅より千代田線で国会議事堂前駅。そこで丸の内線に乗り換えたのはいいが、荻窪までの電車は終わっていて、中野坂上駅で止まってしまった。仕方ない。とにかく青梅街道を荻窪方面へ歩き始めたのだが、しばらく歩くと、ごみ置き場に子供用の自転車が捨ててあった。なんとか乗れるようだ。こりゃいいと、子供用の小さい自転車で新高円寺駅などを通り過ぎた。酔った体に風が心地よかった。そして、南阿佐ヶ谷駅の手前か過ぎたあたり、警察官に職務質問された。自転車の登録証を見たと言う。「そんなぁ。見ての通り、これは子供用で、ごみ置き場に捨ててあったものなんですよ」そう言ったが、「たとえゴミだとしてもそれを盗むのは横領罪だ」と言われ、パトカーに乗せられて、中野署へ連れて行かれた。せっかく中野から阿佐ヶ谷まできたのに逆戻りかよとパトカーの中で思った。なんだかんだ取調べされ、かばんの中を調べられた。で、がーん、さっき会社の同僚からもらった裏ビデオがあるじゃないか。これはなにかと聞かれ、知ってたけど、中身は知らないと言った。中身を見ることもなく、なんとか解放してもらった。この裏ビデオ、実は自分で見るためのものではない。まだ僕はビデオデッキを持っていなかった。ではなんのための裏ビデオかといえば、書店営業という僕の仕事のためのものだった。それまで高嶺の花だったビデオデッキがやっと低価格になって、一般の人も手に入れることができたわけだけど、地方の書店のおやじなんかが、「裏ビデオ手に入る?」と聞いてくる。こういう人のご機嫌をとるために僕たちは裏ビデオを持参していたのだ。言ってくる人がけっこういたのだ。それで、同僚からダビングしてもらったものを持っていたというわけ。1982年って、そんな時代だった。あ、そうそう、前回1983年と書いたけど、間違いで1982年が正しい。

そして、1982年の9月に会社の同僚であるスーさんから、中野坂上にある家賃10万円のマンションに一緒に住まないかと誘われた。それがフレンドマンションだ。敷金礼金はいらないそうだ。マンションの持ち主は、町田市に住んでいたお医者さん。口を利いてくれたのは、スーさんの知り合いで北関東に住んでいる塗装屋のお兄ちゃんだった。変わった条件がひとつ。北関東のお兄さんが仕事で東京に来たときに泊めてあげるというものだった。
 

 

最寄り駅は中野坂上駅。駅から徒歩6分のマンション。
こんなかんじで、下は今でもスーパーだ。


 
ここでも本当にいろいろなことがあった。それは次回で。

ちなみに今回の動画はこちら。これが最初に撮った動画。カメラに慣れていない北尾トロ、うまく撮影できず。これがテイク3。
 

 

 
 
 
 
動画撮影/北尾トロ  似顔イラスト/日高トモキチ
 
 
 
-ヒビレポ 2014年1月19日号-

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