土偶をつくる  第4回

粘土を寝かせる

 

めるし
(第9、10号で「北千住大喜利ハウス」執筆)
 
 
 
 

 粘土が手に入った。これで土偶を作れるぞ。とその前に。少々やるべき処理がある。
 まず、石を粘土から取り除く。小石が混じっている粘土は、ふるう必要がある。が、採ってきた粘土には石が混じってない。ふるう作業が省けた。これは楽だ。
 
 つぎに、粘土を寝かせる。寝かせるとはどうするのか。子守唄でも粘土に唄ってやればいいのか。そうではなく、ビニール袋などで粘土を密封し、冷暗所に保存するらしい。こうすると、粘土の粘りが増すそうだ。
 私が採ってきた粘土、水をつけるとねちっとするけど、乾くとぼろぼろになりそうな感じだ。これがもうちょい、ねちねちするようになってくれたらいいなあ。
 この寝かせの作業、土器の類であれば1週間ほど寝かせた土でよいが、精巧な陶芸であれば、50年くらい寝かせた土を使うこともあるらしい。寝かせれば寝かせるほど良い。ワインやチーズみたいな世界だ。
 私が採ってきた粘土も、ビニール袋に詰めて、物置の隅でしばし寝てもらう。おやすみなさい。

 

 
 
作る土偶を考える

 さて、粘土が寝て起きたら、どんな土偶をつくろうか。
 1つ目は、私の大好きなハート形土偶。これのレプリカを作ろう。 
 

 
 2つ目は、自分オリジナルの土偶も作ってみよう。
 それから、これは地元の博物館に行って初めて知ったのだが、この北海道の地方都市でも土偶が出土しているらしい。知らなかった。子どもの頃から博物館に行っていたのに。採ってきた粘土も地元の土なのだから、3つ目は地元土偶のレプリカを作ることにしよう。
 ハート形土偶、オリジナル土偶、地元土偶、この3つを作ることにした。
 
             (苫小牧市美術博物館にて許可を得て撮影)
 
 この写真が地元出土の土偶だが、ご覧の通り六つに分割されている。どうやらこれは故意に壊されたものらしい。この土偶に限らず、多くの土偶がバラバラになった状態で出土している。
 なにゆえそのようなことに。縄文人が暇潰しに土偶パズルでもしてたんだろうか。もしかしたらその可能性もあるかもしれないが(?)、今のところ一番有力な説は、病や怪我の身代わりになってもらったというもの。例えば、足を怪我したら、土偶の足をぽきっと破壊する。(ちなみに、ハート形土偶はバラバラになっていないが、これはまた特別な用途に用いられていたと考えられている。)
 後世にも、撫でたら病気がうつると云われている牛の像や、穢れをうつされる流し雛、なんてある。それらと似た感覚だろうか。
 
 現代人の私には、病気が治る、というのは、病気が無くなる、消滅するというイメージがある。
 しかし縄文人にとっては、病気が治る、というのは、病気を別の人に移動させるというイメージなのだろうか。けれど、病気を貰って喜ぶ人はいないぞ。大好きな恋人からプレゼントされた小箱を開けてみると、中に入っていたのは、病気。かなりいやだ。それが、ダイヤモンドカットされた病気、でもいやだ。病気を貰ってくれる人は誰もいない。だから人に準じたものである、土偶に押し付ける。
 
 そういえば、昔読んだ立川談志師匠の本に、うろ覚えだけど、こんなことが書いてあった。談志師匠の奥さんが、部屋の掃除をしないので、どうして掃除をしないのかと師匠が問うと、「だって、掃除なんてゴミをあっちからこっちに移動させるだけじゃない」というようなことを答えたそうだ。
 なるほどなぁ、と私は思った。部屋に掃除機をかけるというのは、部屋の隅のほこりを掃除機の中に移動させること。その後、掃除機の中のゴミは、ゴミ袋の中に移動し、ゴミ集積所に移動して、処理場に移動する。
 縄文人はみんな談志師匠の奥さんなのだろうか。人にとって不要なものは、目の前に見えなったら無くなったように感じるけれど、実は消滅しているのではなく、どこかに移動しているのだという感覚。
 土偶はいわば、病と怪我の夢の島だ。なかなかハードなお役目だ。ごくろうさまです。
 土偶の身の上を思い、物憂げになった私は、粘土といっしょに寝てしまいたくなったけれど、私には粘土が寝ている間にやらなくてはならないことがあったのだ。
 
 次回は、縄文というだけに、縄を作りますぐう。

 
 
 
 

-ヒビレポ 2014年1月28日号-

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