土偶をつくる  第6回

粘土と妹とマグマ

 

めるし
(第9、10号で「北千住大喜利ハウス」執筆)
 
 
 
 
 「う〜ん」という唸り声がトイレから聞こえてくる。
 唸り声の主は妹だ。彼女は体内にうんこを備蓄しがちな体質である。
 女性にそういう人は多いと聞く。私は幸いなことに毎朝すっぽんすっぽんなタイプであるので、いまいちその辛さがわからないのだが、妹曰く、産みの苦しみや大変なものであるらしい。
 妹のこの体内備蓄問題、支障の及ぶ範囲が妹のみに収まってくれていればいいのだが、そうはいかない。妹のうんこは、ちょうど火山のマグマの如くで、溜まりに溜まると「周囲への八つ当たり」という形で大爆発を起こす。そうなってしまうと私を含め家族全員が噴火の被害を蒙ることとなるのである。
 私はあたかも桜島観測所員のごとく、毎日妹の機嫌を観測しては、妹島火山のうんこマグマの溜まり具合を推し測り、噴火に怯える日々を過ごしているのである。

 妹の唸り声を背に、私は物置へ向かった。
 土偶の材料となる粘土、この粘土の粘性が増すように、1週間前から物置に寝かせてある。その様子を見に来たのだ。
 崖から採ってきたばかりの、寝かせる前の粘土がこれである。
 

 

 

 水を加えているので形になっているけれど、乾くとぼろぼろになりそうだ。
 縄文土器の作り方の本によると、1週間も寝かせれば、土の粘性はあがるとのこと。
 そこで1週間寝かせていた。さあ粘土はどう変わっただろう。ねっちねちになってくれていたら嬉しいんだけど。果たして。粘土を密封していた袋を開く。
 

 
 ・・・うーん?
 1週間経って、何か変わった・・・のか?よくわからない。(写真がぼやけていてすみません。肉眼で見てもあまり変化が感じられませんでした。)
 
 1週間では寝かせが足りないのかも。もともと崖から採ってきたものであるから良い粘土ではなさそうだし。粘土は寝かせれば寝かせるほど粘性があがるらしいので、さらにもう1ヵ月寝かせてみる。
 
 そして、1ヵ月後。1か月前に開けて閉じた袋を、再び開く。
 

 
 ・・・うーん。
 よくわからない。私には1カ月前から変化したように見えないが、実は粘土の内部では、宇宙の崩壊へとその後つながっていくような、土偶どころではない大変化が起こっているのかも、しれない。しかし私にはそれはわからない。わからないから、粘土の寝かせは1カ月でやめることにした。宇宙の崩壊を食い止めた。

 さあいよいよこの粘土で土偶を形作っていくのだが、もう一つだけ、その前にやる作業がある。
 出土している縄文式土器や土偶の破片を観察すると、けっこうな割合で土の中に砂が混じっている。これは、粘土の粘性が高いと乾燥や焼成の際に割れやすくなるそうで、それを防ぐために混入していると考えられている。
 私の粘土はねちねちが乏しいので、砂を混ぜる必要は無いのかもしれない。けれど一応、この作業もやっておくことにした。
 
 近所の公園の砂場から砂を採ってきて、混ぜる。
 スコップと自分の手とを使って、粘土に砂を混ぜていくのだが、この、粘土を捏ねる、くにくにくにゅん、という触感が、童心に返るというか、・・・粘土って、うんこそっくり!
 

 
 わーいうんこ。うんこうんこうんこうんこ。ひゃはー。
 

 
 (前々回でチーズやワインという飲食物に喩えていたものを今度はうんこに喩えるってどうなの。)
 ・・・いささか童心に返り過ぎたようだ。
 我に返ったところで、粘土と砂を混ぜる作業は終わった。

 私が物置から戻ると、トイレから出た妹が晴れやかな顔をしていた。
 私が精神を解放しているあいだに、どうやら妹もマグマをリリース出来たようだ。よかった。

 次回からやっと、土偶の形をつくっていきますぐう。

 
 
 
 

-ヒビレポ 2014年2月11日号-

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