ちょっとプアンなタイ散歩 〜新婚旅行編〜 第7回


スーハー天国

吉野 歩
(第13号で「選挙事務所に混じる」執筆)
 
 
 
 スーハー スーハー。ヒー ヒー フーーッ。
 あなたなら何を吸っちゃいますか。止めようと思っている煙草? アロマオイル?  それとも、浴槽で泡となったオナラの香り?
 私は断然、耳かきしたあとの竹棒の匂いなのだが、バンコクの人たちが吸っているのはダントツ1位でコレである。
 
(自分で再現してみた)
 

 

 街中のいたるところで、と言っても過言ではない。客待ちのタクシー運転手が、車内で怪しげな小瓶の蓋を開けてずっとスーハーしている。電車の中ではうら若き女子高生が、何食わぬ顔で鼻の穴に細長い容器を突っ込んでいる。タイスキ店のバイトくんなんて、フロアで客にサーブしながら手が空くとずっとコレやってんだ。
 初めて見たときは面食らった。昔ちょっと知ってたRUSHという気化性のドラッグにそっくりだったからだ。吸った瞬間に心臓がドクンとなって覚醒する感じが強かったので、受験勉強のお供や、落ち込んだときの“気合い入れ”なんかによく使われていた。
 思ったね。あ〜、曲りなりにもビッグシティバンコク。裏の面だって受け入れなきゃ。
 

 
 でも実際は違った。かなり怪しいけど、これスゴイんです。この薬は「ヤードム」といって、決して違法なものではない。
 細長い容器のタンク部分にメンソール臭の液体が入っていて、それを上部に開いた穴から嗅ぐのだ。位置づけとして日本で一番近いのは、タイガーバームとかベポラップだろうか。気分転換や乗り物酔いに効くし、あと肩こりや虫刺されのかゆみ等がある場合は、患部に直接塗るといくらか治まる。私は仕事でモンモンとしたときにこれで一発気合を入れるし、禁(減)煙中のうちの相方には、煙草を吸いたくなったときの代替品として勧めた。帰国して2ヶ月以上経った今でも使っているようだから、少なからず役に立っているのかもしれない。値段もペットボトルのジュース1本分ぐらいで、薬局や雑貨店、コンビニでも手軽に買える。

 あとは、こういう形状のもある。
 

 
 基本的な構造や用法は変わらないけど、こっちは薬が固形で漢方みたいな匂いがする。10年前、私のヤードムデビューはこれだった。「気分がよくなるよ」と友人ピ・モーに手渡されたのだ(やっぱり怪しい)。

 そして、上級者になると——
 

 
 両方の穴に同時に突っ込む人がいるので、最近はそのニーズに応えた商品も出ている。上の写真は、親友・ヌイの同僚だ。ヒビレポのために写真を撮ってもらい、バンコクからLINEで送ってもらった。何か言いたげである。そりゃそうだ。セルフポートレートへの美意識がものすごく高いタイ女性に、こんな格好をお願いしたんだもの。左に添えられた手が最後の抵抗か? すまんこってす。

 一つだけ残念な点を述べておく。それは、ポーチに入れておくとオッサンの整髪料(イメージ=会社の部長クラス)みたいな匂いに変化し、染み付くので注意。ま、オッサン好きっていう人もいるので、そういう人にはむしろうれしい副産物かもしれませんね。

 さぁ、今日もがんばっていきましょう。スーハースーハー。

 
 
 
-ヒビレポ 2014年2月13日号-

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