旧宅探訪  第9回

神宮前で「脳天気商会」を旗揚げ

 
下関マグロ(第14号で「僕の八〇年代エロ本仕事」を執筆)
 
 
 
 
 
高円寺の2DKに引越したあと、僕は岡本くんや北尾トロと有限会社を設立しようという話をした。今から考えれば、バカな話だけれど、オフィスは荻窪じゃなくて、もっといい場所にあったほうがいいんじゃないかと話し合った。やはり、原宿でしょう。なぜか、そう思った。本当にアホな発想だ。当時の自分に話ができるなら、タナベビルで十分だと伝えてやりたい。

前回、事務所の名前を暫定的にBWCにし、名刺まで作ったと書いた。BWCとは、
Brain Weather Company 脳天気商会の直訳だ。でも、やはりちゃんと「脳天気商会」にしようということになった。時間のあるとき、僕は原宿の不動産屋さんへ行き、物件をさがした。ちょうど新築の物件があるという。家賃は16万円。見に行ったら、新築というより、まだ建築途中だった。最寄り駅は千駄ヶ谷駅だが、それでも15分くらいはかかるといい、原宿駅だと20分以上はかかるという。住所は神宮前。というようなことをタナベビルに戻り、岡本くんと北尾トロに伝えた。
 

 

その日の夜、僕たちは北尾トロの車、古いタイプのベンツに乗って、建設中のビルにやってきた。建設中の建物に入り込んで、懐中電灯で照らして、中を見た。2人ともいいかんじだと言ったので、契約をすることにしたのだ。


 

 
今もその建物はある。一階にあるのは、大家さんが経営するスパゲティ屋さんで、僕たちのオフィスはここの二階だった。デスクや椅子などを購入し、さっそくオフィスを稼動させた。昭和が終わり、平成が始まった頃のことだ。

晴れた日は、たまに高円寺のマンションから、マウンテンバイクに乗ってこの事務所に通った。副都心あたりは、ちょうど建設中でその下を走った。

たいていは、総武線で高円寺駅から千駄ヶ谷駅まで行き、そこから歩いた。通っているうちにすぐに近道を見つけた。東京体育館の敷地を横切っていけば、近道なのだ。そこから裏道を選んで歩くと、なかなか楽しかった。角を曲がると、村上春樹さんとすれ違ったりした。そして、久住昌之さんの『タキモトの世界』の写真家、滝本淳助さんが(たぶんご自宅だろうか)車を洗っているところに遭遇したりして、なかなか楽しいロケーションだった。

しばらく、脳天気商会のオフィスはここにあったが、僕の住まいは、変わった。なんと、茅ヶ崎に引っ越すことになるのだ。

北尾トロの撮影したどうがはこちら→

 
 
 
 
動画撮影/北尾トロ  似顔イラスト/日高トモキチ
 
 
 
-ヒビレポ 2014年3月2日号-

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