土偶をつくる  第9回

乾燥させる

 

めるし
(イラストも)
(第9、10号で「北千住大喜利ハウス」執筆)
 
 
 
 
 日に日に白くなっていく。
 土偶である。
 粘土をなんとか、土偶の形に作り上げた。それらを乾燥させるため、土偶師匠・三上社長から聞いた通りに、室内に20日間くらい置いておく。
 

 
 採掘したときは茶色だった粘土なのに、乾燥するとこうも白くなるものか。
 白くなった粘土はなんだか骨のよう。胸にふと不穏なものがよぎった。

 翌日も土偶の様子を見に行く。と、そこで私が目にしたものは、
 

 
 

 
「うわぁーん!」。首無し土偶になっている!
 私が声を上げると、隣の部屋から「くすくすくす」という笑い声、その後に「お母さん、ちゃんと謝んなよ」という声が。笑い声は母のもの、その後の声は妹のものである。
 なんでも、母が床の拭き掃除をした際、土偶を安置している箱の下の新聞紙に足をひっかけ、その衝撃で土偶の首が落ちたらしい。
 昨夜、胸をよぎった不穏な感じ、それは、私が小学生の頃、母が拭き掃除の際にメダカの水槽に手をひっかけ、ひっくり返してメダカを窒息死させた記憶、それだったのだな、と思った。
 まあ、家の廊下の一角を占領して土偶なんぞを作っている私が悪いのですけれどね。
 壊れたものは仕方がない。私は淡々とぽろりした土偶の首を接着し直した。

 この事件、私にとっては大したことではなく、修復を終えるとすぐに忘れてしまった。しかし翌日、私が起きてキッチンに行くと、テーブルの上にケーキが2ホール置かれていた。この時は11月。母が地元のケーキ屋が販売するクリスマスケーキの試食ケーキを買ってくる話を聞いてはいたが、「え、2ホールも買ってきたの?」。家族は4人なのでひとり半ホールも食べなくてはいけない計算だ。母は、「埴輪のお礼に」と答えた。
 埴輪の・・・お礼?
 頭に?マークを浮かべる私の元に妹が寄って来て、私が起きてくる前に家の中で起こった事について話しはじめた。体内にうんこを備蓄傾向にある、あの妹です。
 妹が語るところによると、私が寝ている間に、妹の体内のうんこマグマの量が、いよいよ臨界点に達し、大噴火を起こしたらしい。ああ、そろそろくるかなと思っていたんだよ。やはりきたね。
 噴火を起こした妹島火山は、「言いたいこと言わないとうんこが溜まるから言うけどね! お姉ちゃんの土偶を壊した後のお母さん態度! よくないよ! 首ちょんぱになっちゃったって言って、笑ってさ! お母さんが丹精込めて育ててる薔薇、あれをもがれたらどんな気持ちするのさ!」と母に向かって噴き上げたのだという。
 妹は土偶に特に思い入れがあるわけではない。噴火時は辺りにあるものは何でも構わず巻き上げるのだ。
 だから、あのケーキは、土偶を壊したことに対するお詫びなのではないか、と、妹は言った。
 ああ、やはり「お礼」ではなく「お詫び」でいいのか。母のその言い間違いは、噴火に遭遇した動揺があったのだろうか。
 それにしても、私はケーキを食べたい素振りを見せたことはないはずだし、ケーキを買う話を聞いても全く関心を示していなかったはずだ。医者からコレステロール値に気をつけるように言われているのだ。それなのになんで「お礼」としてケーキを買って来るのか。そこのところがよくわからないのだが、母なりの不器用な「お礼」いや「お詫び」なんだろうと思い、食べたよ、ケーキを。ひとりで1ホール。
 考えてみると、土偶を壊され、妹の噴火に巻き込まれ、これまで散々「土偶」と言ってきているのに「埴輪」扱いされ、コレステロール値が高いのにケーキを食べなくてはいけない羽目になっている。私だけ、一方的にひどい目にあっていないか? という気がしないでもないのだが、そう思っても悲しくなるだけなので、何も考えずにケーキを頬張った。生クリームで胃がもたれた。

 そんな経過を辿りながら、土偶は完全に乾燥した。
 乾燥させたら、いよいよ野焼きだ。土偶は焼き物ですので、焼きますよ。
 土偶を外に持ち出そうと、玄関のドアを開けた瞬間、またしても事件は起きた。
 

 

 
 首無し土偶、再び。さあ、どうする。
 
 
 次回は、土偶を焼こうとしてみますぐう。
 
 
 
 

-ヒビレポ 2014年3月4日号-

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