イメージの詩 第41回

意気揚々!

 
 
えのきどいちろう
(第12号で「山田うどんの青春性、そして僕の非・青春性」を執筆)
 
 
 
 J‐WAVE『クラブ・ド・トキオ』が終わった春、僕は文化放送で初めてのオビ番組を持つことになった。『えのきどいちろう意気揚々』という朝ワイドだね。月〜金、朝8時半から11時の2時間半。これは未体験ゾーンだよね。大体、高校時代以来、朝早く起きる生活を15年くらいしてない(ちなみに番組開始時、僕は35歳だ)。明け方まで原稿を書いて5時頃寝て昼に起きるパターンで暮らしてきた。

 それからそんな毎日2時間半もしゃべったことがない。ていうか、ライターってそうはしゃべるもんじゃないでしょう。この頃はもう結婚してたけど、ひとり暮らししてた頃なんか特に仕事がたて込むと一日、ほとんど言葉を発さないイメージだった。体力的にもつかな。

 あと契約で身体を押さえられてるから旅行ができないね。土日で帰って来れないと番組に穴があく。といって悪天候で飛行機が飛ばないなんてことがあるから、土日も遠出はできない。一応、契約上、夏と冬、一週間ずつ休みがもらえるから外国旅行はそのタイミングだね。煮詰まらないといいなぁと思った。あんまり行動を制約されるのに慣れてないもんね。
 

 

 相方は水谷加奈さんという局アナに決まった。朝ワイドの同じ枠をずっとやってた(立川志の輔さんとコンビだった)みたいなんだけど、何しろいちばん熟睡してた時間帯なので聴いたことがない。顔合わせしたときも強い印象はなかった。スタジオ入ってみてだね、この人は相当デタラメだぞと感心したのは。天才肌っていうのかな。いやぁ、ホント抜群に面白かった。

 4月の初回放送が忘れられない。終わってぐったりした。2時間半しゃべるってこんなに大変なことか。体力的にいっぱいいっぱいだ。あと頬の筋肉が痛かった。こんなに笑い顔をつくったことがなかったんだね。へろへろになって家に帰って「こんなの毎日やるの絶対無理だよ」と弱音を吐いた。ネタも持ち出しだ。体力ももたない。生活サイクルも狂う。半年くらいやったら倒れるんじゃないか。

 だけど、やってるうちに慣れてくるんだよね。特に体力面。よくスポーツで「試合の体力」っていうんだけど、ケガのリハビリ明けの選手なんかがいくらジムトレーニングしても、実際の試合を何度も踏まないとなかなか「試合の体力」って身につかないんだ。それと似てると思う。2時間半なら2時間半の番組を走り切ることで「2時間半走り切る体力」がついていく。ちなみに今、僕は1時間か1時間半くらいで状態がガクッと落ちるね。そのくらいの尺の番組やイベントしかやってないからだね。これ以上、引っぱるには実戦のなかで「試合の体力」をつけてくしかない。

 あと「ネタの持ち出し」問題だけど、最初は怖かったんですよ。その場で持ちネタ繰り出してるとそのうちエンプティになって、話すことも書くこともなーんもなくなっちゃうんじゃないか。だから、生番組でパッと出た話題に「あ、それで思いだしたんだけど…」って持ちネタ繰り出すのは、エッセイの原稿依頼に応えて書くのと原理は同じなんだよね。使っちゃうともったいないじゃんって意識が最初働いた。だけどね、違うんだ。使ったほうがいい。使うとネタとして固まるし、発展するし、新しい何かに変化したりする。

 あと、1年くらい経ってわかったのは、どんどん使ったほうが自分に埋蔵されてたものが掘り出せるって感覚なんだ。よく人と話していて、あ、俺、そんなこと考えてたのかって自分で驚くみたいなことってあるでしょう。あの感じに似ている。繰り出して、うわ、こんなもんが埋蔵されてたかってびっくりする。こりゃ無尽蔵だぞって感じ。

 だから文化放送の朝ワイドは4年間やったんだけど、すんごいトレーニングでもあったんだね。あれを経験したら何だってできると自信がついた。番組の中身については次週にまわそうかな。

 
 
 
似顔イラスト/日高トモキチ
 
 
 
-ヒビレポ 2014年3月3日号-

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