どす黒い私 2 鋼鉄のパン屋さん、いざ出陣!編  第11回


 
和田靜香
(第13号で「ホドがある! 新聞一面トップ どうして私が?!」を執筆)

 
 
 
 店長からの逆切れメールを受け取って、イラだちながらご飯を食べ、片付け、それからそのことをツイートした。
「バイトだと思ってフィギュア見るの我慢して寝たら、午前4時、店長から「店休みます」とメールが。ふ・ざ・け・る・な! 昨日はやると言ってたくせに。わかってただろう、この天候。明日行ったら話し合い、おそらく辞めるだろう。ズルズルしてたが、ここは意味がない。他のバイト探します」

 この時点ではまだ私は「明日」行こうとしていたことが今になると分かる。店長からの逆切れメールを見ても、まだ行こうとしてたんだから、私ったら実は事の次第をわかっていなかった。そして店長逆切れのことはツイッターには書かなかった。

 すると、何度か店にパンを買いに来てくれた友達からリプライが着た。
「災難でしたな・・。自分が朝、起きてみてこりゃダメだとあきらめたのかしら。根性あり過ぎな人についていくのは大変でもあきらめつくが、根性ハンパな人についていっても迷惑ぐらいしか手に入らんなあ。いっそのこと、店主ひとりで開店・営業してたら少し見直す・・・かも」

 これを読んで私は、
「もう、腹立ちまくり。フィギュアあきらめて寝たら、店休みって午前4時すぎにメールきた。ふ・ざ・け・る・な。もうやはり辞めます。いい加減すぎる。フィギュアの恨みは深い。ジュベールはどうだったんだろ? ジュベールが観たい。本当に悔しい。私の4年に1度の楽しみを返して」
 と、返信した。
 

 

 どうやら私はツイートを書きながら「ジュベールが生で観れなかった!」ということを思い出して怒りをフツフツと爆発させたらしい。ジュベールとはフランスのフィギュア・スケート選手のブライアン・ジュベールのことで、私は彼の大ファン。男がらみの怨みは根深い、と言っておこう。あら、やだ、アタシったら、そうだったの?

 とにかくこのやりとりで、同意を得た!と思って気持ちをガシッと強くした私は、先週も書いたとおり、店長への、こだわりの強い女性パート女性への態度改めよメールをくどくど送り、しかし、それに一切の返信がなく、そこではっきりと、辞めること、いや、クビになったことを悟った。あら、この人、もう、私のことを切ってたんか?と、やっと理解した。やれやれ、私、なんて鈍いんだ。

 それからツイッターにしばらく張り付いて、「パン屋クビになりました〜」となんだか急にはしゃいでたくさんツイートしまくっていたら、友達からメールや電話があったりして、みんな「大丈夫?」と心配してくれていた。申しわけない。

 でも、だんだん、だんだん、時間が経つにつれ、私はまた同じような失敗を繰り返してるだけなんじゃないか?と思った。何かをやると、そのたびにいちいち私はあれこれ重箱の隅をつつくように物を見て、それをあげつらい、叩いたり、逃げたり、ケンカしたりしてしまう。あれこれよく見えすぎてしまうといえば聞こえはいいが、なんでも細々気にしすぎで面倒な輩だ。同じパン屋で働いていた女子大生のように、たとえ細かく見つけてもそれを「カラカラカラカラ」と笑い飛ばせたらいい。でもそれは出来なくて、すぐにムッとしてイライラを自分の中に溜め込んで、ガッと怒ってしまう。店長の逆切れメールにも、笑って電話でもすればよかったのかも? 私っていつまでも大人になれない面倒でろくでもない人間なんじゃないか? どこででも生きていけないダメな人間なのか?と思って、どんどん気持ちが沈んだ。その日はたまたま私が応援していた都知事選の、宇都宮選対の反省会があったのでそれに行って気晴らしをしたから良かったけど、翌日は気が沈んで散歩に出て、前に住んでいた街までとぼとぼ歩いて行った。

 とぼとぼしながら友達に報告メールをしたら、「和田さんが朝方にバイトのことをツイートしていたのと同時に、○○さんが『雪で休みという報せが店から今しがた着た。経営者ってたいへんだな』みたいなツイートしてて、コメントしずらかった」という返信が着て、えっ?と思って家に帰ってそのツイートを探した。そうしたらその通りで、その○○さんという人はバイト先の経営者さんから朝出かけ間際に「雪で休みます」という連絡が着て、でも「経営ってたいへんだな」と思いやってツイートしていた。私は明け方、まぁ、店長からふざけた調子で着たからというのもあるけど、メールが着て、「なんだよぉ〜」と思って「もうちょっと早く知らせてくれたら」なんて返信をした。そして店長がブチ切れして、クビ。

 私がもうちょっと経営者の側に立って思いやれたらよかったの? やっぱり私、勝手で、すぐにカッとして、ケンカっぱやくて、ダメな人間なの?

 ああ、私、ダメ人間。落ち込んでみたが、落ち込んでみたところで、結局は自分のことば〜〜っか考えてる勝手な人間。それを突きつけられて、立ち尽くす感じだった。落ち込むことさえ許されないような。そんな感じ。

 ぐだぐだループのように悩んでいると別の友達が私に言った。「今度バイトするときはあんまり理想を求めないがいいよ」って。ああ。そうだ。まさにそれだ。私、どんなことにもすべて理想を求めすぎてる。仕事も。家も(注:引っ越したい病は前のどす黒に書いた)。自分自身にも。家族にも。友達にも。何もかもに。だから、こういう結果になる。でも友達が言った。「それは和田のいいところでもあり、ダメなとこでもあって。ライターとしてはそれはすごくいいんだろうけど、バイトとかだと、それで自分が損しちゃうんだから、もっと割り切ったがいいよ」と。なるほど、その通りだ。その通り。あの女子大生ちゃんのように割り切ってカンラカンラ笑い、これはこんなもん、と割り切ってやる。それがいい。それが理想だ。ん? 理想? そうなんだ。それもまた理想。そういうまた別の理想。

 なら。それは難しい。別の理想を追いかけたら、また自分はそこで破綻するだろう。ああ。果てしなきループよ! 私はもしかして、働くとか無理なんじゃないか? 社会的不適合人間なんじゃないか? 暗い穴倉で、「お前はダメじゃ。あれはムダじゃ」とぶつぶつつぶやきながら、1人仙人のように暮すしかないんじゃないか? バイトなんて、二度としちゃだめなんじゃないか?

 いまだ、これの答えは出ていない。
 
 
 
 

-ヒビレポ 2014年3月15日号-

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