イメージの詩 第43回

かからないリクエスト

 
 
えのきどいちろう
(第12号で「山田うどんの青春性、そして僕の非・青春性」を執筆)
 
 
 
 気がつくと3月10日で東京大空襲の日なんですよ。明日は11日で東日本大震災。で、サイト掲載が17日でしょ。早いなぁ、これを入れてあと3回? 最近の番組まで書くのは難しい気がしてきた。といってあんまりかけ足で行くのもどうかと思うんだなぁ。全部語り尽くさないと気がすまないって感じでもない。まぁ、お金もらってやってるんじゃないから大して責任感ないな。

 んーと、今クールをラジオ編にしたのはね、「80年代がライター、90年代がラジオパーソナリティーと主戦場を変えて生きてきました」と言いたいわけじゃないんですね。ま、現象面っていうかねぇ、エネルギーをどこにぶつけてたかってことなら「80年代雑誌、90年代ラジオ」はそう間違いでもない。たぶん多くの人が僕をそういう風に覚えているだろう。

 だけどね、僕としては「本籍ライター」なんですよ。「本籍ライター」は一生その自覚だと思うな。ライターっていちばんお金がかからない、いちばん気軽にできる自己表現ってとこがあるでしょ。他人と関わって予算がついたりしたら映画を作るかもしれない。役者として起用されるかもしれない。売れっ子タレントになるかもしれない。他人と関わったら関わった分のことをするだけ。ひとりじゃできないことがあるでしょ。ただ土台になってる発想はライターとして培ったものだよね。それは「現住所」がどこになっても変わらないと思うんだ。
 

 

 ただ「現住所」がどこなのかでメディア特性っぽいもんは違ってくるんだね。これはそれぞれ面白いものだ。今回メインに取り上げてる90年代、僕は画期的な体験をするんだね。「生番組を自分でまわす」だよ。それ以前だったらゲスト扱いで、あくまで「活字畑の人」「ライターさん」が特別に出てる状態だったものが、自分の体力知力を総動員してもいい媒体に変わる。

 生番組は本当に面白いんだ。活字の仕事じゃたとえ週刊誌でもあんなにダイレクトな反応は得られない。いや、これでも週刊誌でやってみたほうなんだよ。反応の速そうなところに仕掛けてみたり(そうだなぁ、週刊文春のコラムはテレビに仕掛けたから、テレビ番組から直接、僕にリアクションが返ってくることが何度もあった。びっくりするよ、テレビ見てたら自分の名前呼ばれるんだもん)、色々やってみたんだ。だけど、反応の速さはラジオがずば抜けてた。それと自由度。まず企画を投げて、その返りを受けてそれに上乗せして、そうするとそれに乗っかる反応や発展形が来て、それに更に上乗せする。決まった線路をどう踏みはずしてもいいんだ。問題はそれが面白いかどうか。

 やっぱりね、仕事部屋で自分ひとりでやってたら思いつかないようなことが出てくるわけですよ。まぁ、自分ひとりでやれるものはやれるもので良さもあって、それは自分が納得いくまで粘れるってとこだね。他人と一緒にやってるものはそんな自分ひとりで粘っててもメイワクかけるでしょ。完成度とか納得度はともかく、アイデアの飛躍度だよね。イメージしてたとこを飛び越える羽目になるのが面白い。

 だから内容変更だね、生番組でいちばん面白いのは。『意気揚々』の例だけど、オープニングトークをしてるうちにその日のテーマを全とっかえしたことが何度もある。覚えてるのは梅雨どきで皆、傘を持ってるんだけど、何か知らないけど柄の部分のビニールをとらない人が目につく、あれは何で剥かないんだろうかって言ってて、「傘の柄のビニール問題」を2時間半やったとき、あとちょうど台風が放送時間帯に関東を通過するらしいんで、リスナーに場所を言ってもらって台風の様子を伝えてもらう「台風どう?」って2時間半。まぁ、台風を動的、立体的に捉えようって趣旨だね。

 突発的に出たものは番組に生かすように心がけていた。槇原敬之が覚醒剤所持で逮捕されたとき、楽曲がレコード店の棚から引き上げられたり、放送局がかけるのを自粛するのはおかしいだろうって話になって、井上陽水とか研ナオコとか、とにかくもう薬物で捕まったことのある人の曲を2時間半かけまくる「歌に罪はないんだ特集」っていうのも実現した。もちろんトップを飾ったのは槇原敬之だ。こういうのはひとりで机に向かってても形にはならないよね。スタッフの熱意、ノリ、勢いが必要だ。

 あ、話の流れとカンケイないけど思い出したので書いとくことにするけど、『意気揚々』のオープニングで急に思いついて始めて、気に入ってたのに「かからないリクエスト」というコーナーがあった。これは突発的に思いついたんで、CDも用意してなきゃ、かける尺もないんだ。

 「では『かからないリクエスト』のコーナーです。おハガキいただいてます。流山市の○○さん、リクエストはサザンオールスターズの『女呼んでブギ』ですね。学生時代、よくカーステレオで聴いた思い出の曲だそうです。それじゃ今日の1曲目、『女呼んでブギ』!(わずかな間)かかりません」

 30秒くらいで処理できるミニコーナーだね。リスナーもすぐやり方をマスターして「〜という思い出のある曲です。ぜひかけないで下さい」とハガキが来た。

 「わかりました。それではカーペンターズで『雨の日と月曜日は』!(小さな間)かけません」

 曲をかけないということをリスナーとシェアするんでも遊びとして成立するんだね。ちょっと話がズレちゃったけど、ま、ラジオはラジオの面白さがあるってことです。

  
 
 
似顔イラスト/日高トモキチ
 
 
 
-ヒビレポ 2014年3月17日号-

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