明と暗の報告書 第1回

お馬さんもいる日常

木村カナ(レポ編集スタッフ)

西荻から湯島に引っ越して、1年と2ヶ月になる。
バイトで週に2日は西荻に通っているし、西荻が好きな気持ちに変わりはないのだが、去年まではほとんどまったく接点のなかった湯島界隈も、住みついて歩き回ってみるとなかなか面白くって、だんだん気に入ってきた。
しかし、2013年の大晦日から2014年の正月三が日にかけて、湯島天神の門前の道路が交通規制されて、深夜からすでに長蛇の列ができていたのには驚いた。初詣という習慣が元々身近ではなく、結局、身につかなかったので、自分は行かないから。盆暮れ正月に合わせての帰省という風習もすっかり他人事になっているから、このお正月も、ほとんど家から出なかった。でも、完全車両通行止めになるってお知らせが、年内のわりと早くから出ていたのは目にしていたので、どのぐらい混むんだろう?と見るだけ見に行ったのだ。これはたしかに車両通行止めにせねば、と感じ入るほどのものすごい混み具合であった。その行列を見ただけでビックリして、怖じ気づいて、すぐに家に帰った。基本的に出不精だし、人混みが苦手だし、行列に並んでまで待つのが好きじゃないのだ。

で、年が明けて、初詣客が減りはじめた頃に、散歩がてら、神田明神にもふらりと立ち寄ってみたところ。
馬がいたのです。小さいお馬さんが。
大きな社殿の横に、青いコートを着せられたポニーが、ぼんやりと立ち尽くしていた。

囲いの奥に置かれている立て看板にはこう書かれていた。

「神馬・神幸(みゆき)号 「明(あかり)」
信州 佐久高原で平成22年5月15日に生まれた牝馬です。
毛並みは「あし毛」といわれ、歳をとるごとに白毛が増え白馬になっていきます。
愛称
名前の「明(あかり)」は明るく平和な世を願った名前であるとともに、神田明神の「明」の文字をいただきました。
「あかりちゃん」と呼んでかわいがってあげてください。」

神田明神には去年も何度か立ち寄っていて、神馬がいるらしいとは知っていたが、まさかこんな風に、境内で飼われていたとは!
あかりちゃん、と愛称で呼びかけてみた。しかし反応はない。冬の曇り空の下、あかりちゃんはじーっと立っていた。空中の一点をただ見つめていた。まるで何かを我慢しているように。
柵に貼られているあかりちゃんからのメッセージ(?)やお守りの案内を見て、今年は午年だから、神馬・あかりちゃん推しなのかあ……などと思ったりした。
初詣に来た老若男女が、「あかりちゃ〜ん」と声をかけたり、スマホやケータイで撮影したりしては、通り過ぎていく。

「噛みますので手を差し入れないで下さい」

こんな注意書きも貼ってあるから、たいていの人がこわごわ、見るだけで立ち去っていく中で、そうっとたてがみに触れていく人もいた。あかりちゃんはそれでも無反応を貫いている。
なんだかもう、健気というか何というか……それ以来、あかりちゃんのことが気になって気になって、ちょくちょく神田明神に立ち寄るようになった。

という次第で、今年に入ってからは、上野動物園のパンダたちよりも、神田明神の神馬・あかりちゃんをもっぱら観察している。パンダ愛もあいかわらずなのですけれどもね。4月から6月までのこのヒビレポ連載「明と暗の報告書」では、あかりちゃんを中心に、湯島〜御茶ノ水界隈のあれやこれやを遊覧して、書き綴っていきます。どうぞよろしくお願いします。

https://mapsengine.google.com/map/edit?mid=znWZk_wCdeJc.k0znbXsQH6y0

Googleストリートビューの中の神田明神では満開の桜が咲いている。
あかりちゃんはお尻だけ!

-ヒビレポ 2014年4月1日号-

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