MAKE A NOISE! 第28回

メリル・ストリープのお言葉(第1回をご参照下さい)に従い、まだ知れ渡っていない面白い映画をロンドンからMake a noise!
 

カミングアウト

 

山口ゆかり
(第13号で「ロンドンでゲイ、レズビアンたちに混じる」執筆)
 
 
 
 3月23日現在、ロンドンLGBT映画祭(元ロンドン・レズビアン&ゲイ映画祭、今年から新名称になりました)開催中です。今回の目玉はベン・ウィショー主演ホン・カウ監督『Lilting』。

 ウィショーは、昨年、シビル・パートナー制度で結ばれた相手がいると明かし、ゲイであることをカミングアウトした形。はれてゲイのキャラクターを演じることとなります。

 このところのイギリスのカミングアウトでは、そうじゃないかと思われていたウィショーより、トム・デーリーが騒がれました。飛び込み選手のデーリーは、14歳で北京五輪に出場した頃から、その若さと可愛らしい顔立ちでスター選手でした。そうとは思わなかった分、驚きつつも拍手。私に限らず、おおかたの反応は好意的でした。
 

 
 ウィショーの際もでしたが、マイノリティであることを自ら明かすカミングアウトは、勇気あることとして、暖かく受け止められるようです。
 それぞれパートナーとハッピーなのも、素直に祝福できます。そのあたりは、むしろ女同士の値踏みがない分、有利かもしれません。いけ好かない女とくっついたせいで、評判悪くなることもないわけですから。

 ヴァネッサ・パラディスと別れて、二回りも年下のアンバー・ハードと婚約したジョニー・デップなんて、危ないところです。ダーティ・オールドマンに見えてしまうのは致命的。ダーティ・オールドマン、日本では何と言うのでしょう? 若い女のけつ追いかけ回すヒヒ親父とでもしておきます。と、底意地悪く訳されるほど、二回りなんて表現を使ってしまうようなおばさん層の反感を買ったことは間違いなし。お若い方のために言うと、一回りは12歳です。正確には、ハードはデップの23歳年下です。
 ハードは、デップの前に女性とつきあっていて、バイセクシュアルであることを公言しています。若くてかっこいい女の人に走って、デップをふるような展開を期待してしまいます。

 ガールフレンドに幻滅することはあっても、ボーイフレンドに幻滅することはないです。ゲイとわかった途端に、どんなのとくっつこうが、ご勝手にとなります。今時、ゲイがダメージになることはないでしょうが、ダーティー・オールドマンはイメージ悪いし。
 ということで、女性ファンをがっかりさせるとか心配せずに、みんな、どんどんカミングアウトすればいいのに、と傍から見ている私などは思います。
 
 それに関して、明かさないという選択を認める度量を見せたのは、ガス・ヴァン・サント監督。ゲイであることを明かし、『ミルク』など関連の映画も撮っている監督です。自分と同じ属性を持った人がそれを隠してるなんて、悲しんでも良い立場、恥ずべきことじゃないから、みんな言おうぜ!とか訴えても許される立場なのに。
 ベルリンでの『ミルク』の会見で、仕事のオファーが減ることを心配する俳優の気持ちもわかるし、みたいなことを仰っていました。自分と違う選択をする人に理解を示せるのが、さすがです。
 

ガス・ヴァン・サント監督 2009年ベルリン国際映画祭『ミルク』会見(撮影:著者)
 
 さて『Lilting』は、カンボジア出身ロンドン・ベースのカウ監督の長編デビューとなります。低予算の小品ながら、なかなか良かったです。
 ゲイとストレートというより、文化間、世代間のギャップを描きつつ、失ったものへの追憶に浸る人々を柔らかく見つめます。
 ウィショー演じるリチャードと、その恋人カイ(アンドリュー・レオン)の母ジュン(ペイ-ペイ・チェン)の2人を中心に進みます。老人ホームにいるジュンは英語を解しません。そのジュンに息子の親友と思われているリチャードが、ホームを訪ね、何かと面倒を見ようとするのは…。
 悲痛なお話ですが、リチャードとジュンが共通して抱える喪失感がギャップを超えてつながるキーになりそうなのが救い。いつも悲しげ、心細げに見えるウィショーが、はまってました。
http://www.bbc.co.uk/bbcfilms/film/lilting

 残念ながら『Lilting』はまだトレイラーがネットにあがっていないので、代わりと言ってはなんですが『ブライト・スター』のトレイラーを貼っておきます。ウィショーがパートナーのマーク・ブラッドショウと出合った作品です。ウィショーは主人公のジョン・キーツ役、ブラッドショウは音楽担当でした。こちらは公開済みで、DVDも出てます。
 キーツは、肺を病んで、25歳で亡くなった詩人。27歳でドラッグで亡くなるロッカーと同じくらい、詩人としての王道を行ってますね。
 ジェーン・カンピオン監督の繊細な映像が、キーツとファニー・ブローンの儚い恋を彩ります。こちらもウィショーはまり役です。
 

 
 ロッカーや詩人のみなさん、ジョニー・デップも、勝手な期待を抱かれて、たまったもんじゃないでしょうが、傍から見てる人なんてそんなものさ。次回は、傍から見てるのとは、全然違ってた内側を撮った映画をご紹介予定です。

 

 
 
-ヒビレポ 2014年4月5日号-

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