MAKE A NOISE! 第29回

メリル・ストリープのお言葉(第1回をご参照下さい)に従い、まだ知れ渡っていない面白い映画をロンドンからMake a noise!
 

暗黒のゲイ80年代

 

山口ゆかり
(第13号で「ロンドンでゲイ、レズビアンたちに混じる」執筆)
 
 
 
 今週も先週に引き続き、ロンドンLGBT映画祭(元ロンドン・レズビアン&ゲイ映画祭、今年から新名称になりました)からの、『Age of Consent』という濃い映画。何が濃いって、そのものずばりのゲイ・キンキー・セックスです。そればかりではなく、意外に社会派でもありますが。

 この映画は、The Hoistというロンドンのレザー・バーを撮ったドキュメンタリー。ホイストとは、荷を上げ下げする荷役装置のこと。店の特製ホイストが、そのまま店名になってます。
 この店で吊り下げられるのは、荷物ではなくて人。あんなことやら、こんなことが無修正で繰り広げられます。私のお気に入りポイントは、登場してくる人のタイトル。ミスター・インターナショナル・レザーとか、ミスター・イーグルとか、聞いたこともないようなタイトルだらけ。
 半世紀を越えて生きてきましたが、世の中には私の知らない世界が、かなりの広がりを持って存在しているらしいことに打たれました。
 

 

 などと、面白がって見ていたら、トレイラーのように、レポ本誌読者のみなさまには、見覚えのある顔が出てきます。13号「ロンドンでゲイ、レズビアンに混じる」でご紹介した人権活動家ピーター・タッチェルです。ゲイを取り巻く時代の移り変わりを語ります。
 

 
 能天気な私は、景気が悪いとか、もう右肩上がりではないとか知っていてさえ、世の中はほっといても次第に良くなってくもんだと何となく思ってます。ゲイにも年々暮らしやすい世の中になってるだろうと無根拠に思ってました。
 ところが、そうではなかったらしい。例えば、イギリスでは、わいせつ行為で逮捕されたゲイの総計が、1966年より1989年が多いのだそうです。わいせつなことをする人が増えたのではなく、取締りが厳しくなったということ。若いイケメン警官が、レザージャケットにぴっちりしたジーンズとか、それっぽい私服で、公衆トイレなどで誘ってきた人を逮捕するおとり捜査が行われたといいます。
 そういえば、そんな映画を見たことあったなあ。手を出した途端にガチャリ、手錠をはめられるの、何でしたっけ?ドキュメンタリーではなくドラマでしたが、警察のやり口を、ずるい、ひどいと思ったものでした。
 エイズが出始めてゲイ・バッシングになった頃だったのと、何かと強硬姿勢のサッチャー政権下だったことも影響しているのでしょう。当時、タッチェルは、おとり警官の写真を貼り出して、対抗したそうです。
 遅ればせですが、タイトルのAge of Consentはセックスをしても良いと法で認められた年齢のこと。イギリスでは、当初、異性間16歳、同性間18歳と差がつけられていたのが、近年、ようやく同じ16歳になったものです。
  
 The Hoistオーナーも、もちろん登場します。ウィリアム・フリードキン監督『クルージング』を見たのがきっかけで、店を作ったそうです。ジェームズ・フランコは、その同じ映画を見て『Interior. Leather Bar.』(第23回をご参照ください)を作ったのですから、たいした影響力です。
 ですが、レザー・バー自体は消えつつあるようで、The Hoistもロンドンに残る数少ない中の1つ。今時の出会いの場はネットに移行して、そういう社交場は必要とされなくなってきているらしいです。

 ところで、レザー・バーでは肉体を誇示しあって惹きつけ合うみたいなことなので、当然と言えば当然ですが、みなさん、超ボディ・コンシャス。ミスター・レザーやミスター・イーグルでなくても、鍛えまくった体してます。
 映画館で大画面を見て、家でパソコンの画面に向かう、目だけ酷使の座ったきり生活で、すっかりボディ・ノーコンシャスになってる私。この映画を見つつ、せめて脂肪は落としたいと思いました。
 そんな登場人物たちに負けないような監督だったのも、びっくり。
  
チャールズ・ラム監督&トッド・ヴェロウ監督 2014年ロンドンLGBT映画祭(撮影:著者)
 
 
 太もものような腕にスキンヘッドのヴェロウ監督に、良く整えた白ひげのラム監督と、キャラが立ってる共同監督お2人でした。
  
 さて、今回はイギリスのゲイ史を飾る店のドキュメンタリーでしたが、次回はアメリカのゲイ史を超えて文化史に燦然と輝いた店のドキュメンタリーをご紹介予定です。

 

 
 
-ヒビレポ 2014年4月12日号-

Share on Facebook