超小市民あるあるパラダイス  第2回

ニックネームあるある

 
田中稲(11号で「大阪から来た女」執筆)
 
 
 
 
さて、皆さんは、小さい頃どんなニックネームで呼ばれていただろうか。
そして、現在、親しき仲間に如何なニックネームで呼ばれているだろうか。

本名はなかなか変更できないが、ニックネームは変幻自在である。
しかも付けられた時の自分のテンションや周りの環境が関係してくる。
たかがニックネーム。されどニックネーム。
ニックネームはその人の生きてきた歴史を端的に表現する記号……。
オオゲサすぎるかッ。私もそう思う!!

まあ、だいたい、ニックネームというものは本名の一部分から取られるもので、それに「ちゃん」をつけたり「くん」をつけたりがメジャーなところであろう。大阪では「やん」(例:茂→しげやんなど)も一般的だ。
私は本名がヤスコで、生まれて最初に付けられたあだ名が「ヤッコ」である。はっはっは。超無難!
きっとこのまま「ヤッコ」で定着するじゃろうて、と思っていた私のニックネーム歴に小学校中学年で早くも異変が起こる。どういうキッカケなのか全く覚えがないが、「オッチョコチョイ」の略で
「おっち」
と付いたのだ。これがクラス全員、何の疑問も持たず普及していった子どもの純粋さよ。そして私もまーったく拒否反応もなく受け入れた。そしてそれは中学を卒業するまで定着した……。
 

 
今考えるとすげー斬新。いや、マヌケではないか。「おっち」。このことを友人に話したところ。
「いやいや、全然マヌケじゃないよ。イタリアの首相でそんな名前の人いたし」
と言うではないか! ほぉー! まさか政治家さんと同じとは光栄なッ。ウキウキと調べてみたところ、「ジュリオ・アンドレオッティ」という方がいらっしゃいました…。
うーむ。「おっち」じゃないよね。「オッティ」だよね。しかも前にオスカルの相方と同じ名前がついてるよね。全然違うよね……。
私は首をひねりながらも、非常にスマートに私の話を格上げしてくれる友人の知識力と人間力に脱帽し、素直に感動した。でもアンドレオッティさん、マフィアとの関係が噂になってたのね。ぬーん。
いやいや、アンドレオッティさんの話では無い!ニックネームの話である。
その後高校で「ヤッコ」に戻った私は、就職後、職場で「やっさん」という横山やすし師匠に申し訳ないようなあだ名を頂き、さらにイラストレーター事務所に転職。そして、そこの社長さんが私と同じ「田中」であったことからまたニックネームが変わるのであった。

話はまたしても飛ぶが、「よくある名字族」、特に佐藤・鈴木・高橋・田中あたりはホンットにどこに行っても名字がかぶるという危険性と隣り合わせである。
「えーと、事務の鈴木さん」
「2人いますけどー」
「ほら、席が手前の方」
と呼ぶ方がだんだん面倒になって、ご指名の仕方がザツになるのはもはやデフォルトである。
私も以前こんなことがあった。某クライアントさんにお電話をした時のことだ。
「ライターの田中と申しますけど。●●さんいらっしゃいますか」
「はい、田中様ですね。少々お待ちくださいませ」
丁寧に対応してくれるフレッシュメンズ(←あくまでも声を聴く限りは!)。ところが、彼はなんと電話の口を抑えるのを忘れてしまい、取次の声が筒抜け状態になってしまった。
「おーい、●●、田中さんから電話―」
「えーとどの田中ー?」
「さあ? ライターの田中さん」
「ああ、分かった。背の高いメガネの田中ねー……(声、よそいきにチェンジ)はいっ、お待たせしましたー」
おいっ(汗)。今のはなんや。なんやったんやー!! 聞こえとるぞー全部―!!!
というように、よくある名前は無駄にキャッチフレーズが付きやすいのである。

話を元に戻そう。イラストレーター事務所の話である。事務所は全員で3人。社長と私が田中なので、私の師匠であるNさん以外は「田中」ということになる(ああややこしい)。
つまりNさんが「田中さーん」と呼ぶと、私と社長が2人振り向き
「はい?」「なんや?」(←異口同音)
と答えるというややこしい環境。これを解消したのが、事務所に出入りしていたディレクターさんである。
「これから女の田中さんは『ミス田中』と呼ぼう!」
彼の発案により、私はこの事務所で働いた1年間、なにやら帰国女子もしくは田中コンテストで優勝した人みたいなニックネームで呼ばれ続けたのであった。

いやはや、環境とともに変化するニックネーム。アイデアのカタマリ、ニックネーム。
私の友人の中には、その雰囲気からトムとジェリーの「ジェリー」と付いた者もいるが、理由を知らない人にとっては「なんでジェリー??」なんだろうなあ。さらには、フルネームがニックネームになっている人もいた。誰もが「●●●さん!」とどんな忙しい時でも名前全部を呼ぶのだ。多分、全部を呼びたくなる凛とした空気があったのだと思う。
普通に名前を縮めて「ちゃん」「くん」だけのシンプルなものでも、一気に時計の針を逆回しにし、その人が呼ばれていた齢に戻してしまう不思議。いまでは仕事の知り合いが多くなり「稲さん」と呼ばれる事が増えてきた私だが、昔の友人に「ヤッコ」と言われると学生時代に戻るし、「ミス田中」と呼ばれると「ハイハイハイッ消しゴムかけですねっ」と自動的に手が動くのである。
言葉のつづりとしてはとっても短いのに、ちょっとした呪文みたいで面白いなあ、とシミジミ。

 
 
 
-ヒビレポ 2014年4月10日号-

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