MAKE A NOISE! 第30回

メリル・ストリープのお言葉(第1回をご参照下さい)に従い、まだ知れ渡っていない面白い映画をロンドンからMake a noise!
 

ムーブメントの人

 

山口ゆかり
(第13号で「ロンドンでゲイ、レズビアンたちに混じる」執筆)
 
 
 
 前回はゲイ狩りが行われた80年代イギリスのお話などもありしましたが、今回の映画はアメリカの60年代から始ります。コンチネンタル・バスについてのドキュメンタリー『Continental』です。

 コンチネンタル・バスは、ニューヨーク、アンソニア・ホテルの地下に1968年オープンのゲイ・バスハウス。プール、サウナ、ディスコ、キャバレーエリアがあったといいますから、日本の健康ランドやスーパー銭湯のような、お風呂に飲食する場所とちょっとしたステージもあったりする施設と、コンセプトは近いです。
 アンソニア・ホテルはブロードウェイにあるレジデント・ホテルで、著名人も多く住んでいます。一等地にドカンとゲイ・バスハウスが登場したわけです。なんたって6〜70年代、勢いあります。キャバレーで行われたショーの出演者が一流なら、お客もビッグ。

 ベット・ミドラーがデビューを飾ったのがここ。デビュー・アルバムのタイトルも『バスハウス・ベティ』です。その後、ミドラーが歌手としてグラミー賞を複数回獲得したうえ、女優としても大成したのはご存知の通り。貫禄ある大御所のイメージがありますが、当時から貫禄ある姐さんです。
 そのミドラーのかたわらでピアノを弾いていたのがバリー・マニロウ。ですが、映画には出てきません。いろいろ事情があるようです。
 かっちょいいのはラベル。ヘイ、シスター、ゴー、シスター♪『レディ・マーマレード』のオリジナルを歌ってます。残念ながら下の映像は当時のテレビ番組からですが、スーツにネクタイで踊る若者が時代を感じさせます。
 

 
  

 
 前回は、あんまり可愛くない男性ボンデージのトレイラーで申し訳なかったです。罪滅ぼしにクリスティーナ・アギレラ・ヴァージョン『レディ・マーマレード』も貼っておきます。この曲、こちらで知っている方も多いのでは。

 
 トランスジェンダーの女優ホリー・ウッドローンもステージに立っています。ウッドローンはアンディ・ウォーホール作品に多く登場し、ルー・リードの『ワイルドサイドを歩け』の歌詞にも出てきます。トレイラーの最後近くで「セクシュアル・レ・ボ・リュ・ション」と言ってる方です。
 

 
 というわけで、ウォーホールがお客として来たり、ボールみたいに太ったおじさんが来たと思ったらアルフレッド・ヒッチコックだった!という逸話もでてきます。ヒッチコックは妻帯者だし、女優へのセクハラ/パワハラも暴露されたことだし、ゲイではないでしょう。コンチネンタル・バスはゲイのみならず、幅広い客が訪れる場となっていったのでした。
 が、当初、腰にタオルを巻いた男たちの社交場だったのが、その男たちを見物に来る人も出始め、輝きを失っていき、70年代半ばクローズの憂き目を見ます。

 ディスコの名物DJがオバマ大統領と並んで納まっている写真などもあって、有名人目白押しですが、そんな方々よりスティーブ・オストロウが印象に残ります。「今はもう生活のためというより使命。私は性革命を起こしている。壁を押し広げる準備はできている。そう!政治の話をしてるんだ(ローリングストーン誌1976年5月6日号)」というコンチネンタル・バス・オーナーです。
 クローズ後、自分も終わってしまうどころか、別の場所で活躍し始めます。もともとオペラ歌手だった方でもあり、オーストラリアで舞台に立ちます。そして、今では、オーストラリア最大規模のゲイ支援団体を立ち上げ、活動中です。
 ムーブメントを起こす人は、一つが終わっても、また違うムーブメントを起こすのですねえ。もともと備わっているエネルギー量が大きいのかなあ。

 監督もエネルギー量大きそう。というか、体が大きいのか。プロフィールに好きなものとしてバーベキュー、ビール、そして虹をあげているマルコム・イングラム監督です。レインボーカラーはLGBTのカラーでもあるので、ジョーク交じりの自己紹介かと思ったら、Q&Aにもビール片手に現れました。
 最初はあんまりパッとしないコメディ映画を作っていたのが、自分の男性への志向に気づき、ゲイ関連の映画を撮るようになってから、評価され始めました。レインボーカラーがトゥルーカラーだったんですね。何色であれ自分のカラーを見つけた人は強いです。
 
マルコム・イングラム監督 2014年ロンドンLGBT映画祭(撮影:著者)
 
 
 次回も、ロンドンLGBT映画祭から。サイコパス?と思った怖い登場人物もいるドキュメンタリーです。ハンニバル・レクターとか、映画上のサイコパスなら、好きなんですけどね。
 

 
 
-ヒビレポ 2014年4月19日号-

Share on Facebook