ヒビムシ  2 – 4


有馬富士公園:ミヤマセセリ

沢田佳久
(第11号で「五十円玉はどこだ」執筆)
 
 
 
 有馬温泉は日本書紀にも出てくるらしい.それとは遠く離れた場所に「有馬富士」はある.有馬? 訪れた人は腑に落ちないだろう.納得いかないと思う.富士? 不二? 確かに独立峰ではあるが標高差200mもない低い山である.有馬富士の名は花山法皇(986年退位,1008年崩御)による詠歌に根拠とするのもので,花山院菩提寺に近いこの山の事だというのだ.本当にコレ? との思いが払拭できない有馬富士なのである.
 ともかく福島大池(約190m)と有馬富士(374m)を含む雑木林が公園として整備されている.一つの公園のように見えて実は兵庫県と三田市の管理領域やサービス施設が混在しており,訪れた人はこれも腑に落ちないだろう.二重行政だ! と,有馬都構想しそうな有馬富士なのである.
 

 

 で,桜も終わりかけの4月10日に行ってみた.春の妖精にも例えられるギフチョウが飛ぶのが桜の時期なので,その産卵の様子が撮れればと思って行ってみたのだが結果は目撃ゼロ.でもほかの虫をいろいろと見たので翌日写真を選びながら書いている.
 桜(ソメイヨシノ)は終わりかけだが,コバノミツバツツジの花が次々と咲いている.満開の株もあれば,まだ蕾が小さい株もある.これはクローンではないので,個体変異がある,当たり前の事である.
 開花にばらつきがあって,虫は日を追うごとに咲き具合の変わる株を渡り歩く.早めに咲いた株は花粉を媒介してくれる虫を独占できるし,最盛期に咲させる株は害虫を分散できるだろう.遅めに咲けば効率よく受粉することができる.他にもいろんな要素が関係してこの花期でありこのバラツキの現状なのだ,種内での多様性とはそんな感じの事だと思う.
 
コツバメ
 
 まえに蝶をよくみかけた株が今年もよく咲いていたのでじっくり探していると,コツバメが吸蜜に来ているのに気づいた.これも早春だけにみられる蝶である.
 ツバメというと白黒のシンプルな配色とか,流れるような滑らかな形状を連想するだろう.その点でこの種はぜんぜんツバメっぽくない.褐色系のガキガキした模様の迷彩色である.もちろんこの渋いデザインもなかなか良い.ただ「〜ツバメ」は違うだろう.
 シジミチョウの中で尾状突起があるものは「〜ツバメ」の名前がついている.尾状突起も在るのか無いのか微妙なもので「近似種との比較上,在ると看做す」的な判断の結果としての「在る」にすぎない.
 あまり活発には飛び回らないようで,花から花へという感じではなかった.一つの花にしばらく留まったあと,筆者に気づいて飛び立った.目で追っていくと別の樹の見晴らしの良い梢に陣取り,縄張り行動をしているようだった.
 
ミヤマセセリ
 
 しばらく歩くと,褐色系の迷彩色の蝶が,またいた.今度はミヤマセセリで,変な格好で止まっていると思ったら,交尾中だった.写真の右側,白い帯が目立つほうが♀である.腹端がどう結合しているかはよく見えない.
 この冬に昆虫の交尾を描いた図鑑が出て,いろいろと物議を醸した.ふだん虫に親しんでいる人にとっては意外だったかもしれない.世間における交尾画像の商品価値の高さを再認識することになったのではないかと思う.インパクトの強さと言ってもいい,特別らしいぞ,と気づくことになった.
 じつは撮影者にとって交尾画像のレア度は高くない.野外で虫の写真を撮っていれば,交尾にはよく出くわすし,かなり撮りやすい状況でもある.たいていの幼虫は摂食マシンであり,成虫は交尾マシンや産卵マシンとして研ぎ澄まされている.特に♂にとっては交尾が最重要事項である.セキュリティーのレベルを最低にして状態で交尾している.多少の危険を察知しても交尾を継続する,専念とはこのことだ.なので撮影には最適,難易度の低い余裕の被写体なのである.あと,交尾中も産卵マシンのほうはまだ命が大事なので,離れようとしない交尾マシンを引きずって逃げようとする.そんな状況にもよく遭遇する.虫撮りアルアル.
 
ハンノキハムシ
 
 池の周りに多いハンノキが葉を開き始めていた.成虫,幼虫ともそれを食べるハンノキハムシも活動開始である.
 一方でカメノコテントウも獲物を求めて徘徊中.カメノコテントウは日本最大級のテントウムシで,幼虫はハムシの幼虫を食べて育つ.越冬あけのカメノコテントウ成虫はいち早く餌となるハムシいる場所を見つけ,産卵する.惨劇の舞台が整いつつある.
 
カメノコテントウ
 

◆立体写真の見方◆

同じような2コマが左右に並んだものは「裸眼立体視平行法」用の写真です.
平行な視線で右の目で右のコマ,左の目で左のコマを見ると,画面奥に立体世界が見えてきます.
大きく表示しすぎると立体視は不可能になります.

色がズレたような1コマのものは「アナグリフ」です.
青赤の立体メガネでご覧ください.
メガネは右目が青,左目が赤です.
緑と赤の暗記用シート等でも代用できます.

別サイト「ヒビムシ Archives for 3DS」にはMPO版を置いています.3DSの『ウェブブラウザ』で「ヒビムシ Archives for 3DS」のサイトを参照してください.お好みの画像を(下画面におき)タッチペンで長押しすると,上画面に3Dで表示されます(数秒かかるかも).表示された3D画像ファイルは保存することもでき,『3DSカメラ』でいつでも再生することができます.

MPO版とは,複数の静止画を一つのファイルにまとめたもので,ここでは立体写真の左右像を一つにまとめたファイルです.3DSをはじめ,多くのmpo対応機器で3Dとして再生,表示することができます.PCやスマホ等でダウンロードできますので,各機器にコピーして再生してみてください.

 
 
 
 
 
-ヒビレポ 2014年4月23日号-

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