ヒビムシ  2 – 5


足摺岬:オオキンカメムシ

沢田佳久
(第11号で「五十円玉はどこだ」執筆)
 
 
 
 四国を三日間ぶらついた.良い天気だった.しかしその間に風邪をもらったらしい.ダニにも食われていて,気づくのに遅れた.16日の朝に行った足摺岬のことを19日に書くことにする.

 足摺岬の近辺,土佐清水から岬にかけては照葉樹林がよく残されている.観光業界は営業上「亜熱帯樹林」という表現を多用している.タブノキとかアカガシとかの常緑の樹木が,ちょうど新しい枝を伸ばし葉を広げ始めていた.遠くから見ると森全体が色とりどりである.個人的に気になる植物として,低木のイヌビワは小さな実を付けており,キブシの花が満開だった.
 足摺岬といえば営業上,椿のイメージが強い.今回はヤブツバキの花が終わりかけで,ツツジの花が目立っていた.真っ赤な花が密集して咲いていて圧巻である.本州の山でときどき見かけるヤマツツジと似た色なのだが,それとは別種のオンツツジという種らしい.
 

 

ヤブツバキ


 
 朝8時半にもなると十分暖かく,トベラの花にハナムグリ(ナミハナムグリ)ばかりが多数飛来していた.別の樹種にはやや小ぶりのアオヒメハナムグリが集っていた.なんだか棲み分けである.
 前者では滞在時間が長い,後者では花から花へのサイクルが早いかな,急行と各停みたいな事かなぁと推測.発着の多い小さいほうを狙って飛んでいる空中の姿を撮ろうとしたが,時間がかかるわりにハズれまくった.脚や裏側が赤く写っていたので,すべてアオヒメだと思いこんだのだが,今,写真を見直してみるとコアオハナムグリっぽい個体も写っている.二種混じってたのかもしれない.
 

ハナムグリ


 
 オオキンカメムシにも2匹出会った.集団で越冬する虫だが,もう単独行動に移っているようだ.写真は2個体目で離陸体勢である.
 この虫は見た目がいかにもトロピカルである.西日本に広く,しかしごく稀にしか見ることができない.見つけると嬉しいクラスの虫である.ただし安定して見られる場所として足摺岬や室戸岬が知られており,そこではザコである.この写真もそうだ.
 

オオキンカメムシ


 
 一方で,長距離移動するらしいとも言われている.といっても移動の具体的なイメージ,”移動像”は定まっていない.
 太平洋岸で集団越冬した虫は北へ飛行し,たとえば山陰の日本海岸まで到達してアブラギリで繁殖するのだという,そして羽化した虫は南に飛んで足摺岬や室戸岬などで集団越冬する,きちんと二地点間を往復する,こういうのが今,考えられている”移動像”の一つである.季節を感じて移動方向を切り替えているとする説である.アサギマダラ(チョウ)に似た感じである.
 オオキンカメは兵庫県の明石公園でもしばしば見つかる.筆者が昨秋11月に偶然見かけたのも単独の個体だった.明石海峡を隔てて淡路島,島を南下すれば四国への経路である.明石で見つかるやつはここで一休みしているのか,ここで良いやと思っているのか?
 そもそも太平洋岸への回帰は組込済みの事なのか? 南下への情熱はそれぞれで,いろんな南下程度があって,濃縮された地域で似たもの同士が寄り集まって越冬を試みてみて,その冬の厳しさ次第,全滅か生存か,結果は運任せということかもしれない.
 ちょっと冷たい見方をするなら,彼らの移動に指向性などないのではないか? 単に繁殖と分散を全方位に,風任せに繰り返しているだけではないか? とも考えられる.たまたま越冬できた個体群が翌年の出発点となるだけであって,安定した越冬場所はごく数ヶ所に限られる.とうぜん大部分が死滅回遊になっているとも考えられる.これもまた一つの”移動像”であろう.水田に飛来するウンカなどに似た感じである.
 なんかもう,この話題ばかり書いてしまった.しかもまだ十分説明できてない.というか結論はないので,書くべきマトメが書けない状態である.要するにこの虫の”移動像”は確定しておらず,厳密版〜アバウト版のいろんなものがあり得るということだ.
 なので興味のある方は適宜検索してみてください.[ウンカ 飛来予測]なども是非どうぞ.なお[移動像]は説明のために使った言葉であり,きちんとした用語ではありません.

 さて,オンツツジの花も撮っておこうと品定めしていると,なにやら幼虫を発見した.何匹もいて花弁や花糸を食っている.少し赤い色をしている.食物由来の色なのか,ともかくケナゲな適応だ.たぶん蛾の幼虫だと思うのだが帰宅後調べても同定できないでいる.ただ面白そうなので掲載することにした.虫3+花1にしては華やかな今回と自負.
 

オンツツジを喰う幼虫


 

◆立体写真の見方◆

同じような2コマが左右に並んだものは「裸眼立体視平行法」用の写真です.
平行な視線で右の目で右のコマ,左の目で左のコマを見ると,画面奥に立体世界が見えてきます.
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色がズレたような1コマのものは「アナグリフ」です.
青赤の立体メガネでご覧ください.
メガネは右目が青,左目が赤です.
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-ヒビレポ 2014年4月30日号-

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