ヒビムシ  2 – 6


三木山森林公園:クマバチ

沢田佳久
(第11号で「五十円玉はどこだ」執筆)
 
 
 
 韓国のフェリーの悲劇,調べてみて11年前に乗った船だと気づいた.車を積んで沖縄へ行った復路,那覇から名古屋を経由して大阪南港まであの船に乗ったのだ.割引の関係で名古屋で降りるわけにはいかず,51時間50分を船内で過ごしたのだ.ニュースに焦れながら当時の記録を発掘した.だから何ができるというわけではないのだが.

 今回は「三木山森林公園」である.兵庫県三木市の街の真ん中に森林公園がある.ゴルフ場にしそこなった感じの場所だ.周りの丘陵も開発され市役所が建ったりしているので,結果的に街の真ん中に立地する森林公園となっている.森林公園と称し,森を残しつつも中央に芝生広場を作らざるを得ないあたりに存在の矛盾が感じられる.飲食施設もあってバイキングと立看板を出しながら価格不明というあなどりがたさである.
 筆者にとっては近くてよく行く森なのに,この連載では意外にも初登場である.24日に行った時の事を26日に書いている.この日は平日にもかかわらず,いつもより駐車場に車が多いように思えた.広場ではピクニック的なことを楽しんでいる人たちを見かけ,いよいよGWか? 人が多いのは困るなと思ったが,森の中を通るいつものルートでは人と出会うこともなかった.
 

 

 うす曇りである.園内の各所ではイロハカエデが最盛期,コバノガマズミも咲きはじめていた.とりあえず,これらの花を見て歩くが,虫は多くない.後者ではトゲヒゲトラカミキリを数匹見かけた.遠目にはアリのように見える.近づいて覗き込んでも反応は鈍かった.ごらんのように細っちょろいカミキリである.「イロハカエデの花」のほか「モチツツジの蕾」,「キリギリスの幼虫」などを撮る.季節ネタとして一応,押さえとくという感じ.
 

トゲヒゲトラカミキリ


 
 公園には舞台裏的な場所があり,幼木や花の苗が育まれている.料理の食材かと思われるものも植わっている.その育成花壇が花ざかりになっていた.緑と紫のキャベツらしきものが交互に植えてあり,すべて塔が立って,黄色い花が咲いている.いや待てよハボタンかもしれない.ともかくその花にクマバチが一匹だけ来ていて,盛んに吸蜜していた.

クマバチ

 大型のスズメバチなどを”熊ん蜂”のように呼ぶこともあるが,クマバチはそれとは違い,ニホンミツバチなどと同じハナバチの仲間だ.クマバチは大きく,見た目も羽の音も存在感満点ではあるが,凶暴な虫ではない.もちろん人側が攻撃すれば反撃するだろうが,敢えてちょっかいを出す人もいないだろう.明らかな存在感,わずかな緊張感は互いに適度な距離を保つ事にもつながり,逆に安心だといえる.
 蜂の♂は針をもっていないので100%安全である.見分けるポイントは複眼が大きいこと,この種の場合には頭楯が白っぽいことも識別点となる.慣れれば行動だけでも区別できる.自信は75%くらいだが.
 このクマバチに,このところよく出会っている.先々週の有馬富士でも既にソメイヨシノの周りに何匹ものクマバチの♂が防空識別圏を設定,三次元的に割拠していた.先週の四国ではフジの花が咲いており♀が訪れていた.♂の縄張りも盛んだった.そういう季節なのだ.今回の♂は,しかし,様子が違う.縄張り行動をとらずに吸蜜に専念しているようだ.すこし遅れて進んでいるのだろう.訪花の様子をねらって空中撮影を試みることにした.

 昆虫の撮影にはストロボを使うことが多いが,十分明るいときは自然光で撮ることもある.ストロボは充電に時間がかかるので単発の撮影となり連写できない.自然光なら連写して「当たり」を拾うこともできる.
 今回もその手を使った.使っているミラーレス一眼は連写が得意で,画素数を下げれば1秒に40コマも撮れてしまう.レンズはフォーカス固定である.この組み合わせで,空中の虫に向けてテキトーに撮ってみるのだ.雑な方法である.
 テキトーに撮っても,現場できちんとチェックすれば,「当たり」が含まれているのか「ハズレ」ばかりなのかを認識することはできるだろう.しかし,その作業には時間と電池が必要であり,それよりもう一連写ということになる.結局,テキトーに撮りっぱなしなのだ.雑な方法である.
 それでも今回は,たまたま「当たり」が幾つか含まれていた.空中に浮遊している様子が写っている.満足な撮れ具合といえる.ただ翅の先がブレている.感度をISO1600に設定してシャッタースピードが1/2500秒なのだが,感度を上げて,より高速で撮っていたら良かったかも知れない.と,今ごろ考えているわけだ.
 たぶんプロなら現場での結果確認も仕事の一部なのだろうと思う.確実性だ.しかしアマチュアは違う.全滅でも平気なのだ.評価も後悔も帰ってからのことであり,運よく「当たり」を得てもフィードバックを経てより良い「当たり」に到達したりはしないのだ.以上,たびたび書いている「空中撮影を挑んでハズす」の詳細はこんな感じである.

 今回は別パターンの「浮遊」も撮れた.水際でである.ミギワバエ科の一種だと思うが,体長3ミリくらいの虫が脚で立って水面に浮かんでいる.配色的にはアメンボなどと似ていて,上面は緑を帯びた暗色,下面が白くて撥水性が高そうだ.その体全体が水面を鏡にしても映っている.空中にせよ水面にせよ,このような浮いてる感じは立体写真ならではだと思う.

ミギワバエ科の一種

 この日は偶然,ムラサキヒメカネコメツキも見つけた.わりと珍しい種類だ.たぶん花を求めて離陸しようとしていたのだと思う.真鍮色の前胸と深紫の翅鞘の対比,きめ細かな彫刻が施された表面構造.大きくはないがコメツキの仲間では美麗種である.野外で見たときはとんでもなく輝いて見えたが,撮ってしまうとさほどの輝きには見えないかも.少し迷うが「イロハカエデの花」や「キリギリスの幼虫」を掲載する気にはなれない.やはりムラサキヒメカネコメツキを択ぶ.この日いちばんの「当たり」がこれなのだ.
 

ムラサキヒメカネコメツキ


 
 

◆立体写真の見方◆

同じような2コマが左右に並んだものは「裸眼立体視平行法」用の写真です.
平行な視線で右の目で右のコマ,左の目で左のコマを見ると,画面奥に立体世界が見えてきます.
大きく表示しすぎると立体視は不可能になります.

色がズレたような1コマのものは「アナグリフ」です.
青赤の立体メガネでご覧ください.
メガネは右目が青,左目が赤です.
緑と赤の暗記用シート等でも代用できます.

別サイト「ヒビムシ Archives for 3DS」にはMPO版を置いています.3DSの『ウェブブラウザ』で「ヒビムシ Archives for 3DS」のサイトを参照してください.お好みの画像を(下画面におき)タッチペンで長押しすると,上画面に3Dで表示されます(数秒かかるかも).表示された3D画像ファイルは保存することもでき,『3DSカメラ』でいつでも再生することができます.

MPO版とは,複数の静止画を一つのファイルにまとめたもので,ここでは立体写真の左右像を一つにまとめたファイルです.3DSをはじめ,多くのmpo対応機器で3Dとして再生,表示することができます.PCやスマホ等でダウンロードできますので,各機器にコピーして再生してみてください.

 
 
 
 
 
-ヒビレポ 2014年5月7日号-

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