MAKE A NOISE! 第33回

メリル・ストリープのお言葉(第1回をご参照下さい)に従い、まだ知れ渡っていない面白い映画をロンドンからMake a noise!
 

フランク・サイドボトム

 

山口ゆかり
(第13号で「ロンドンでゲイ、レズビアンたちに混じる」執筆)
 
 
 
 前回予告のフィルム4製作映画は『Frank』といいます。こんなのです。

Photo credit:Lorey Sebastian

 
 どんなにクレイジーな映画かとワクワクしたのですが、そこまでじゃなかったです。ちなみに、真ん中の人の中身はマイケル・ファスベンダー(第21回に写真)です。
 のび太の家にドラえもんがいるように、大頭のフランクがいる世界かと思ったら、かぶりものの人の話。そして、それには実在のモデルが!違った意味でクレイジーだったのでした。
 

 

 
 この映画は、イギリスで笑える実話の書き手と言えばこの人、ジョン・ロンソンが書いています。
 

ジョン・ロンソン(左)とケヴィン・スペイシー
 2009年ロンドン映画祭『ヤギと男と男と壁と』会見(撮影:著者)

 
 ロンソンは、実際にあったアメリカの超能力部隊を描いた『ヤギと男と男と壁と』の原作者としても有名です。映画の中で壁をすり抜けたらSFですが、現実世界で壁をすり抜けようとした人を描いたらコメディになった映画です。

 前々回、前回とサイコパスにふれているのも、実はロンソンの『Psychopath Test: A Journey Through the Madness Industry』(訳本は『サイコパスを探せ!:「狂気」をめぐる冒険』)を読んだ影響です。
 謎の手作り本からサイコパスの世界へ、研究者や、事件を起こして拘束されているサイコパスにまで会っていく様子を描写しつつ、笑わせます。
 
 『Frank』のモデルは、フランク・サイドボトムといいます。また、いいとこ探してきたなあロンソンと思ったら、なんとロンソンはフランク・サイドボトムがボーカルをつとめるバンドにいたのでした!映画中で語り手の位置にいるキーボード奏者がジョンという名前なのは、そういうことだったのか。
 フランク・サイドボトムは、こういうのです。
 

 
 反応に困る宴会芸みたいですが、褒める気になればアナーキー、パンクとか言えるかもしれません。本物の中身はクリス・シーヴィーです。
 

 
 ロマンチックなサウンドを聞かせていたイケメンが、何故にかぶりものの宴会芸もどきに?
 お金とか気にせず、好きなことをやった人だそうで、2010年にガンのため54歳で亡くなった時、文字通り一文無しだったと報じられています。友人やファンの募金から葬儀の費用がまかなわれたというのが泣かせます。
 『Frank』はモデルがあっても話はフィクションですが、ファスベンダーのフランクはシーヴィーのそういう雰囲気は出しています。
 出だしはいい調子で、途中まではけっこうクレイジー。最後までオフビートで突っ走ってほしかったですが、後半はせつない話になってきます。せつなさにちょっと甘さを加えた結末は好みではないですが、バンド仲間だった人がそう終わらせたかったなら、よしとしたいです。
 文無しの変な芸人と聞いたら、好感を抱かずにはいられません。これから公開予定の『Being Frank: The Chris Sievey Story』というドキュメンタリーも、見る気満々です。
 
 今回のサンダンス・ロンドンでは、『Frank』はじめクレイジーの映画が多かったです。次回もその中から。

 
 
-ヒビレポ 2014年5月10日号-

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