明と暗の報告書 第7回

祭りの気配

木村カナ(レポ編集スタッフ)

湯島〜御茶ノ水界隈をぶらぶらとレポする当連載。
第7回の今回は、5月のお祭りと湯島聖堂について。

 ゴールデンウィーク、なのである。が、しかし、連休とはまったく無縁、いつも通りの日常……って、去年も同じ時期に同じようなことを書いてましたね(「白と黒の報告書 第6回 いつも見られている(後編)」)。Twitterの上野動物園公式アカウント(@UenoZooGardens)によれば、今年のGWもパンダ舎は30分待ちが基本、あいかわらずの盛況ぶりのようで。しかし、去年と今年でなんとなく違いを感じるのは、新緑がやけにまぶしく見えること。桜が咲いた頃にも、桜以外のいろんな花もこぞって咲き出したような気がして、春ってこんな感じだったっけ? 春の花ってもっと段階的に咲いていくものじゃなかったっけ?と不思議に思ったのだった。同じように、いやそれ以上に急激に、木々の緑や花々がみずみずしく輝きはじめて、あれ? 初夏ってこんな感じだったっけ?と驚きながら歩いている。モッコウバラやらジャスミンやら、まるでもくもくと湧き出るように、その鮮やかすぎる色と香りの不意打ちを受けて、道端で思わず立ち止まる。


 去年は大して意識もせずにいたけれど、5月は毎週末、お祭りがどこかしらで執り行われるのだなあ。祭礼の開催を知らせるのぼりが、いつのまにか辻辻にはためいている。昌平橋通りで町会の神輿の担ぎ手を募集するポスターも見かけた。町内の住民以外でも参加できるところがあるらしい。

  • 4月29日(火・祝)〜5月15日(木)神田明神例大祭(神田祭、今年は蔭祭)
  • 5月10日(土)・11日(日)太田姫稲荷神社御祭礼
  • 5月18日(日)鍼灸祭(湯島聖堂)
  • 5月24日(土)・25日(日)湯島天神例大祭

文京区湯島と千代田区外神田が入り組んだ交差点。
神田明神のすぐ近くなのに、湯島天神ののぼりが立っているのは何故!?
外神田二丁目の信号のそばのビルには湯島天神例大祭のための御会所もあった。
どうしてここだけそうなっているのかは不明。
氏子としての所属は、神社からの距離だけで決まるわけではないようだ。

 さて、前回、聖橋とニコライ堂を取り上げたので、今回は聖橋の反対側にあるもうひとつの聖堂、湯島聖堂を紹介したい。

聖橋の上から見た湯島聖堂。
丸ノ内線が地表に出て神田川を渡っていく様子も見える。
丸ノ内線の御茶ノ水〜淡路町間の開業は1956(昭和31)年。

 湯島聖堂は1690(元禄3)年に5代将軍・徳川綱吉が儒学振興のために創設。昌平坂という地名は、孔子の生地にちなみ、綱吉が命名したものだという。エリートが結集する学問の中心地であった伝統は、1868年の明治維新後にも引き継がれ、学問所の敷地は教育・研究方面に活用された。現在の東京国立博物館・国立科学博物館や上野動物園、国立国会図書館、東京大学・筑波大学・お茶の水大学のルーツになった機関も、この場所に最初に設けられた。聖橋のたもと、東京医科歯科大学の脇の植え込みには「近代教育発祥の地」という文京区の案内板が立っている。

湯島聖堂・大成殿(孔子廟)。
古都の神社仏閣にも引けをとらない威容。

 湯島聖堂の敷地には、夏季と年末の休業期間を除き、日中の開門時間内ならば、自由に出入りすることができる。土日・祝日には大成殿の内部も公開されている。入場料200円を支払って、大成殿の中に入ってみた。厨子に安置された孔子の像を中心に、諸子の像や肖像画が飾られている。中央には祭器と供物が並ぶ祭壇。ニコライ堂がまるっきりヨーロッパなら、ここはまるで中国。ちなみに大成殿内は写真撮影OK。

 江戸期に作られた建築物の大半は、1923(大正12)年の関東大震災で焼失、現在の大成殿は1935(昭和10)年に再建されたもの。つまり、1927(昭和2)年に聖橋が完成したときには、名前の由来となった両岸の聖堂はどちらも復興前。つまり、幕府の権勢をしのばせる湯島聖堂も、文明開化を象徴するニコライ堂も、もはや記憶と記録の中にしか存在しなかった。それでも公募の結果、聖橋と名付けられたこのモダンな新橋を、震災前の風景を知る人たちは、当時、どんな気持ちで渡ったのだろうか。その後、湯島聖堂は、太平洋戦争下で空襲を受ける。このときに大成殿をはじめとする建物が燃えなかったのは、関東大震災後の再建時、往時の規模や様式を踏襲しつつ、木造ではなく、火に強い鉄筋コンクリートで建造されていたからである。

屋根の上にかつて鎮座していた「鬼龍子」。
1799(寛政11)年鋳造、関東大震災のときに罹災。
大成殿の屋根の上にはこの子孫(?)の鬼龍子が今でも鎮座している。

1975(昭和50)年に台湾の有志から寄贈されたという孔子の銅像。
でっかい!

 菅原道真を祀る湯島天神と同様、孔子を祀る湯島聖堂でも、学問の神様として、合格祈願の絵馬や鉛筆が売っている。大成殿の前にある杏壇門のところに、奉納された絵馬が吊るされているが、その数は決して多くない。絵馬といえば社寺、聖堂でも学問成就がお願いできるなんて、あまり知られていないだろうし。それでも、絵馬を導入してしまうあたりが日本的? とは言え、湯島聖堂の塀の中には、なんとなく大らかで、大陸的な雰囲気が漂っている。木立の下には雑草が茂って、ちょっとした野原だ。予算がなくて、手入れをする余裕がないだけかもしれないけれど。でも、その全体的になんだか鷹揚な感じ、嫌いじゃない。神社やお寺とは違う、もちろん教会とはまったく異質で、学校でも公園でもない、現在の湯島聖堂はそんな、なんだかちょっと不思議な場所になっている。
 

★ゴールデンウィークのあかりちゃん

公式プロフィールによれば、平成22年5月15日生まれのあかりちゃん、もうすぐ4歳。

神田明神の神職の方たちのみならず、
常連客を識別している模様。

鉱塩を舐める。
暑さ対策。

ご機嫌麗しい。

 「あかり、出走」の予感。昨年の神田祭・神幸祭のレポートで、この花籠馬車を引いているあかりちゃんの写真を見た。今年の神田祭は蔭祭で、神幸祭・神輿宮入は行われないという。だとしたら、あかりちゃんがこの馬車を引くのはいつなのか? いちばん可能性が高いのは5月11日(日)である。だがしかし、この土日に限って、東京を離れる予定なのだ。故郷のお山に呼び出しを食らってしまっているのだ。神馬あかりちゃんの晴れ姿、11日日曜日に見逃したら、次の機会は来年の神田祭!?

https://mapsengine.google.com/map/edit?mid=znWZk_wCdeJc.k0znbXsQH6y0

-ヒビレポ 2014年5月13日号-

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