明と暗の報告書 第9回

お馬さんもいる非日常(後編)

木村カナ(レポ編集スタッフ)

湯島〜御茶ノ水界隈をぶらぶらとレポする当連載。
第9回の今回は、5月11日日曜日に行われた神田祭のレポートの後編です。
前編はこちら

 

 抜けるような青空の下、10時からの「将門塚保存会神輿渡御」でのあかり&ちょこを目撃すべく、神田明神から大手町の将門塚をめざす。平日には往来が激しいのに、日曜日の午前中で人も車もまばらな本郷通りを、てくてくと歩いていった。
 

神田橋の手前でお神輿に遭遇、
第5回で取り上げた太田姫神社もこの土日が御祭礼。

 

「将門首塚」だけがローマ字表記な案内板、
塚の敷地内に設置されている三井物産社員有志寄贈の説明板では
“Masakado-duka(Masakado’s Tomb)”
と英訳されていました。

 
 都内、いや、国内でも屈指のミステリースポットとして名高い将門塚。
 平安中期の940年にこの場所に埋葬されたという平将門、その鎮魂のためにここに板石塔婆が最初に建てられたのは300年以上経った徳治2年(1307)、すでに鎌倉時代になっている。神田明神の神様なのに、どうして阿弥陀仏でお線香なのか、というと、この板石塔婆を作って、将門の怨霊を鎮めたのが、時宗の高僧・真教上人だったから。さらに、元々はこの付近にあった神田明神に、祭神として平将門を加えたのも、真教上人であったと伝えられている。
 将門塚に来るのは実は2回目。はじめて来たのは10年前の8月、はとバスの夏の名物「講談師と行く怪談ツアー」でだった。ガイド役の講談師・田辺一邑(たなべ いちゆう)さんが、ツアーの後半を盛り上げるべく、この塚の由来と将門伝説を紹介してくれた。さらに、将門公の祟りは過去の話ではないのだ、とも。周囲のオフィスビルで勤務するサラリーマンたちは、首塚のある方向に背を向けて座らないように気をつけている、なぜなら、将門塚にずっとお尻を向けていると、体調が悪くなるとか出世に差し障るとかいうジンクスが今でも信じられているからだ、と。ふーん、そんなのただの都市伝説でしょ、と受け流すにはムード抜群すぎた、何しろ、お盆で人気のないオフィス街、すでに日が暮れていて、そこだけぽっかり暗がりになっている将門塚に立ち寄ったんだもの、そりゃあ怖かったです。
 

真っ昼間だから、怪談ツアーで来たときほどには怖くなかった、かなあ……。
すでにミレニアム越えの将門伝説と御霊信仰パワーへの畏怖を感じて合掌。
それにしても、なぜ、この地が将門塚に選ばれたのか?
ミステリーは尽きない。

 
 さて、神田明神から車で移動したあかり&ちょこはいずこにありや?
 

将門塚のお隣、三井物産ビルの駐車場で準備万端!

 
 東の方角から賑やかにやってきたお神輿に、花籠馬車をひいたあかり&ちょこが合流した。神主さん、大手町・丸の内町会の提灯の後、お囃子、お神輿の前、という位置に入る。神馬・あかりちゃんが、弟分のちょこくんを従えて、神田祭の行列を先導する!という設定らしかった。
 将門塚の前から再び出発した行列は、内堀通りから永代通りへと進む。その進行と前後しながら、警察が交通規制を調整していた。日曜日の大手町、人も車も平日よりははるかに少ないはずで、神田祭の行列と無関係の通行人といえば観光客か皇居ランナー、それでも慌ただしく、緊迫感を漂わせて、制服警官が動き回る。そこにお囃子とお神輿の担ぎ手のかけ声が入り混じって、きっと1年に1度、この日だけの特別な雰囲気が醸し出されていた。祭りが立ち去れば、再びシーンと静まりかえる休日のオフィスビル街も、明日、月曜日になればきっと、ビジネスマンが闊歩するいつもの大手町に戻るのだろう、いつも通り、何事もなかったかのように。
 


 
 将門塚の前を出発する前から、なんとなく不機嫌そうだったあかりちゃん。歩いているときにはそうでもないのだが、お神輿がビルの敷地に入っていき、行列が止まるたびに待たされて、どんどん不機嫌が極まっていくように見えた。あかりちゃんをひいている馬チームによれば、去年よりもわがままになっているらしい。普段、神田明神境内にいるときとは違う形相で、目を見開いてよだれを垂らし、時々、不穏な動きをするのを、馬チーム男子が素早く押しとどめる。素人目にもわかるほどに剣呑なオーラを出している。
 

 
 行列の動きに合わせて、馬車の居場所を見きわめて、指示を出しつつ、
「あかりはどう?」
 と、あかりちゃんの状態にこまめに気を配る馬チームリーダー、
「今すぐにでも暴れ出してやろうかって顔してますよ!」
 と答えるあかり担当男子……そうか、やっぱりそうなのか。あかりちゃんを押さえこみつつ、通りすがりにお馬さんを見つけて、近寄ってくる人たちの質問に答えるなどの対応もしなければならない馬チーム男子は、
「神田明神の神馬のあかりちゃんです。いつもは神田明神にいるんですよー」
といった説明を何度でも繰り返す。笑顔を絶やさずに、立ち話や写真撮影にも応じつつも、あかりちゃんの挙動を常に意識していて、引き綱をしっかりと握り、あかりちゃんが暴れ出さないようにコントロールする。
「あかり、神馬の仕事だぞ、がんばれ。もうすぐ休憩だからな」
 と、首のあたりを撫でさすりながらなだめて、言い聞かせている声やしぐさは優しくて、しっかりしてるぞすごいぞかっこいいぞ、がんばれあかりちゃん! えらいぞおにいさん!と、心の中でずっと応援していた。
 

 
 すっかりいっぱいいっぱいな様子のあかりちゃんに付き従うちょこくんは、あくまでも平然とした構え、馬車に子供を乗せてひくというサービスまでもこなしていた。体重が問題なんだったら、ひいてもらわなくてもいいから、あのちょこ馬車に乗りたいナア……と羨ましくてたまりませんでした。大人になってしまったことが久々に本気で悔やまれた。

 12時になる頃には、神田祭の行列は、東京サンケイビル前の広場に到着、そこで1時間、お昼休みをとるのだという。行列に参加している何百人かが、思い思いの場所にばらけて、配られたお弁当を食べていた。
 

あかり&ちょこも、すぐに馬車と馬具を外してもらって、
ようやく一息。

休憩になってからすぐのあかりちゃん、
まだ不機嫌全開で、水を飲むのを拒絶。

だんだんといつもの表情を取り戻した。
 
 神田祭、将門塚保存会神輿渡御は、昼休みの後にもまだ続くとのことだったが、この昼休憩の段階で離脱……朝からずっとあかり&ちょこに密着して立ちっぱなし、体力がないからそれだけでへとへとだ。それでも、祭りが終わった後の2頭がどうしているかが気になって、夜になる前にまた、神田明神に行ってみた。
 

精根尽き果ててぐったりしていたあかりちゃん。

余裕ありげに見えたちょこくんも放心状態。

 
 2頭ともよくがんばった! 馬チームも本当にお疲れ様でした!!……って、後半は見てないけどね。
 来年の神田祭でも、あかり&ちょこが健気に馬車をひく姿を、ぜひ目撃したいものです!!!
 

https://mapsengine.google.com/map/edit?mid=znWZk_wCdeJc.k0znbXsQH6y0

 
 

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-ヒビレポ 2014年5月27日号-

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