ヒビムシ  2 – 10


宝塚:ナミテントウ

沢田佳久
(第11号で「五十円玉はどこだ」執筆)
 
 
 
 一昨日,21日に宝塚市の「フレミラ宝塚」というところへ虫の話をしに行った.この文を書くためにウェブを見直すと,老人福祉センターと大型児童センターの複合施設となっている.生涯教育であり自発的学習であり世代交流なのだ.アミューズメント施設とは違い,平日にこそ機能を発揮しているところのようだ.そこで野歩き志望のシニア相手に虫探しは楽しいですよとの,いわば布教をするわけだ.
 宝塚といえば華やかな街のイメージだが,奥の方は自然も豊かである.少し足をのばせば虫放題なのに,この日は市街地で残念ながら座学である.前々日に市域内の好採集地で撮ってきた写真を見ながら虫のことを話す.天気の心配がない点は楽ではあるが.

 早めに家を出たときはまだ雨が降っていて,ビニール傘をさして出てしまった.失敗した.駅について以降,この日いちにち,傘はずっと邪魔になった.片手がふさがれる.物理的にもだが,意識の何%かが常に配分され続けることが大きい.
 宝塚で乗り換えの際,阪急にしては珍しい外装の車両に出会った.宝塚歌劇100周年仕様のようだ.阪急らしい押さえた派手さだ.梅田方面の発車音が菫の花,西北方面が手塚治虫になっていて,宝塚の駅は久しぶりだなと思った.

 
 最寄り駅の売布神社で降りると雨は止んでおり,折りたたみにすべきだったな,きっと忘れるぞと後悔しながら傘を持って歩く.歩道に沿って植えられたシャリンバイの列もすっかり洗われていた.見ながら歩くとテントウムシ類がやたらと目立っている.大きな幼虫と蛹,成虫もみられた.幼虫と成虫で見分けるとほとんどナミテントウのようだ.この種は様々な斑紋の型があることが知られている.たいていの場所では黒に赤星二つのやつが多いのだが,ここのナミテントウには様々な型がいた.
 時間の余裕を気にしつつ,撮影しながら進む.コンビニの前で羽化している個体を発見.雨上がりは羽化のチャンスなのだろう.ちょうど抜け終えたところで,まだ翅が黄色い.
 

ナミテントウの羽化


 
 ナミテントウとナナホシテントウはともによく見かけるテントウムシ類である.徘徊で出会うテントウはたいていこのどちらかだと言っても過言ではない.識別に迫られる機会が,百円玉と五十円玉を見分けるのに近い頻度で発生する(レポ11号に詳述↑完売らしい).
 この二種に絞った場合,成虫や幼虫は一目瞭然なのだが,蛹での識別が案外難しいのである.蛹は大きさや形がほぼ同じだ.斑紋はナナホシでは安定しているが,ナミテンの変異が激しいため,紛らわしい場合がでてくるのだ.明らかにナミテンというのは分かる.また,ナナホシっぽいのも分かる.問題はナナホシっぽいナミテンを見抜くことができるか? ナナホシをそれと確信できるか? という点である.
 この問題のソリューション(笑)は幼虫にある.両者の幼虫の姿はかなり異なっている.ナナホシはふっくらした体形で粉を吹いており,ナミテンは細めでトゲトゲしている.そして蛹化の際,この幼虫の脱皮殻が蛹の腹端に残るのである.蛹を鑑定する際,トゲトゲの幼虫脱皮殻が残っていればナミテンなのである.
 この理屈から写真の個体はナミテンだと言い切れるわけだ(どや顔).

 シャリンバイの葉にはポツポツとキジラミの仲間がついていた.これがテントウの餌になるのだろう.また,明らかにナミテントウより一回り小さい黒っぽい成虫がいたのでこれも撮影.赤い紋があった.違う形の幼虫や蛹もいた.食い終えて蛹になる直前の「前蛹」も発見.いろんな段階の個体を順不同で見ているようだ.
 後で調べてこれらはダンダラテントウだと判明した.キジラミはサツマキジラミというやつらしい.
 

ダンダラテントウの前蛹


 
 午前中は一年生への布教.写真を見ながら話すと見つけたときの感動が甦ってついつい熱が入り,時間の配分がくるった.まぁいいけど.

 昼休みに関連施設の敷地内をうろついてみた.さすが公共施設.意識的に残した部分以外の雑草は皆無だ.下草のないスカスカな空間に一本一本,たぶん備品番号の付いた樹木が植わっている.ただ樹種は多様だ.また,ボランティアだろうかサークル活動だろうか,幾つかの花壇もあって様々な園芸植物が華やかに育っている.
 あまり期待できそうでない環境に見えたが,けっこう虫がいた.アメリカミズアブとモノサシトンボを掲載しておこう.乾燥した場所のようだが,このような虫がいたのが意外だった.
 

アメリカミズアブ


 

モノサシトンボ


 
 このほか,偶然,ヒメカメノコテントウの模様違いのペアも見かけた.また,ウメの類の枝にタマカイガラムシがビッシリと着いており,アカホシテントウが出そうな状況に思えた.蛹の殻をさがしてみたが,結局,見つからなかった.なんだがテントウ三昧の日になった.

 午後は二年生への布教.すでに興味の対象が絞られているようで,虫への興味がある人ない人の差が激しい.こちらのペースで虫派の人だけに話す感じになってしまった.まぁいいけど.

 帰りは数駅先の豊中まで行って「高校野球発祥の地」を訪ねることにした.以前から気になっていたのだ.こちらは来年の夏が100周年である.
 傘を持って住宅街を進むと,まるまる更地になった一区画の先にそれはあった.一通り読もうとしたが,当時の紙面をそのままエッチングしてあって量が多い.掲示の意図が分からない部分もあり読み飛ばした.
 撮影の段になって,蔦が伸びて碑文に掛かっていることが気になる.おまけに天気が良くなりすぎて逆光.その間も頭の片隅にビニール傘の件.
 
 

◆立体写真の見方◆

同じような2コマが左右に並んだものは「裸眼立体視平行法」用の写真です.
平行な視線で右の目で右のコマ,左の目で左のコマを見ると,画面奥に立体世界が見えてきます.
大きく表示しすぎると立体視は不可能になります.

色がズレたような1コマのものは「アナグリフ」です.
青赤の立体メガネでご覧ください.
メガネは右目が青,左目が赤です.
緑と赤の暗記用シート等でも代用できます.

別サイト「ヒビムシ Archives for 3DS」にはMPO版を置いています.3DSの『ウェブブラウザ』で「ヒビムシ Archives for 3DS」のサイトを参照してください.お好みの画像を(下画面におき)タッチペンで長押しすると,上画面に3Dで表示されます(数秒かかるかも).表示された3D画像ファイルは保存することもでき,『3DSカメラ』でいつでも再生することができます.

MPO版とは,複数の静止画を一つのファイルにまとめたもので,ここでは立体写真の左右像を一つにまとめたファイルです.3DSをはじめ,多くのmpo対応機器で3Dとして再生,表示することができます.PCやスマホ等でダウンロードできますので,各機器にコピーして再生してみてください.
 
 
 
 
 
-ヒビレポ 2014年6月4日号-

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