MAKE A NOISE! 第38回

メリル・ストリープのお言葉(第1回をご参照下さい)に従い、まだ知れ渡っていない面白い映画をロンドンからMake a noise!
 

新鮮な新作

 

山口ゆかり
(第16号で「どんなに幸せでも罪悪感と孤独感はぬぐえない」を執筆)
 
 
 
 明日はレポ16号の発売日ですね、フッフッフッ。
 意味深な笑いを残し、まずは新鮮な新作2本から。新鮮な新作、新の字が重なってますが、新作が新鮮とは限りません。むしろ、どこかで見たような新作の方が多いくらい。パターンを踏襲しているもの、オーソドックスなものにも良いものはありますが、やっぱりインディペンデント映画は新鮮であってほしい。

 『The One I Love』はジャンルにスッポリはまらないのが新鮮なんですが、強いて言えばトワイライトゾーンなラブコメともいうべきお話。R.E.M.の初期の名曲と同タイトルですね。あちらはラブソングのふりしたダークな歌でしたが、特に関係はなさそうです。

 母屋のほかにゲストハウスまである、2人にはスペース十分な所でホリデー中の夫婦、イーサン(マーク・デュプラス)とソフィー(エリザベス・モス)が主人公。ゲストハウスに行くと、もう1人のパートナーがいる、って、わかりにくいですね。トレイラーを見ていただけば話が早いでしょう。
 

 

 
 昨夜とは感じが違うし、いつもは嫌いで食卓に乗せることもないベーコンを焼いているソフィーに、イーサンがあれれっ?となってるシーンです。
 イーサンがゲストハウスに行くともう1人のソフィーが居て、ソフィーが行くともう1人のイーサンが居るらしいと気づく2人。同じ俳優が演じているので、当然、同じ人ですが、もう1人たちの方が何だか良いんです。しっかり演じ分けている両俳優に拍手です。
 実物のソフィーには時々苛立ちが見えるし、対する実物のイーサンは煮えきらないとこがあるのに、もう1人たちは違う。ソフィーはゆったりと優しくてセクシーだし、明るくハキハキしたイーサンはアルファ・メイル風。ひょっとしたら、出会った頃の2人はお互いに対してこうだったのかもと思わせます。
 
 関係修復のためのホリデーだった夫婦が心配です。もう1人が消えない実体のあるものなら、そっちに惹かれるのは目に見えてるし、幻か何かで消えてしまっても、後に残ったお互いのアラばかりが見えそう。
 この感じ、何かに似てると思ったら、写真の修正でした。デジタル写真のポートレート、ニキビを消す程度のものから、離れ気味の目を寄せちゃったり、鼻すじ細くしたりで、これ誰?なものまで。何もしなければ、ご愛嬌と見えていたかもしれないものが、修正したが最後、アラとしか見えなくなってしまいます。
 もう1人が何なのか、夫婦はどうなるのか、ほぼ2人劇(×2)なのに最後まで飽きさせず、オチも効いてます。
 これが初長編になるチャーリー・マクダウェル監督、上々のデビューです。監督としては新人ですが、俳優マルコム・マクダウェルの息子、女優ルーニー・マーラの恋人として、既に有名ですね。

 『Blue Ruin』はジャンルで言えばスリラーに納まる作品ですが、何が起こっているかわからせずに見せきってしまう手際が新鮮。
 湯船につかっている人がお湯を止め、そのまま何かを待つような、蛇口にかかった手のショットで始ります。何も起こらず、またお湯を出したのをすぐ止める。今度はどこかで物音が聞こえたと思ったら、湯船を飛び出し、窓から飛び出し、屋外で手早くシャツとズボンをつけ一目散。
 そこでようやく、髪とひげがボウボウで、どうやらホームレスの男と見当がつきます。野原に捨ててある車で寝起きしているところに、婦人警官が現れ、連行されてしまう。不法侵入で入浴したことかと、男が「あの家の…」と尋ねようとするのを黙らせた警官、署に着くと給湯室のような小部屋に男を通し「彼が出所する。どこか安全なところに移動したほうが良い」と新聞を差し出す。
 最初の数分でもう目が離せなくなります。軽微な犯罪を見逃し、身の安全をうながした警官の対応からも、悪人ではなさそうに思える男。不毛な暴力の連鎖。それぞれの家族。男がここまで壊れてしまった全容が、最後の最後にわかります。主演のメイコン・ブレア、台詞のない場面がほとんどですが動きと表情だけで様々を伝えます。
 こちらはこの作品が長編2作目のジェレミー・ソウルニエ監督です。
 

 
 米仏合作『Blue Ruin』は昨年のカンヌで国際批評家連盟賞を受賞しています。イギリスではこの5月に劇場公開されたところですが、日本での公開はまだわかりません。
 が、今年のベルリンでの同賞受賞作が、早くもこの8月に公開です。それが『FORMA』、こちらも新鮮な新作でした。
 というわけで、明日発売のレポ16号に、その『FORMA』の坂本あゆみ監督インタビュー掲載!
 

 次回は、それを面白いと思う自分が新鮮だった映画です。

 
 
-ヒビレポ 2014年6月14日号-

Share on Facebook