ぜんざのはなし The final 第11回


初恋のゆくえ

 
島田十万
(第16号で「よろずロックバー『山路』」を執筆)
 
 
 談笑さん吉笑さんが出演しているフジテレビの深夜番組「噺家が闇夜にコソコソ」が始まった影響なのか。
 それとも吉笑さんがマクラで触れたように「番組中で檀蜜さんが『吉笑さんは元カレに似ている』という発言をした」からか。
 理由はハッキリしないけれども、第9回「立川談笑一門会in吉祥寺」は、史上最高の大入りだったとか。
 もちろんボクも行ってきました。
 
 昨年7月にあった第1回は100人くらいの入りだったように記憶していますが、今回はたぶんその倍は超えているでしょう。
 ほとんど宣伝もしない、チラシも前売り券もない。当日会場に来た人だけ入れるというのは気楽で客としてはありがたいシステムです。事前にネタを公表するというのもこの会の特徴です。

 第1回で談笑さんが、肩のこらない寄席のような会にしたいと発言していましたが、会を重ねるごとに理想に近づいてきたのではないでしょうか。
 なんだかほのぼの暖かい雰囲気がただよい、客席もだいぶリラックスしています。会場のアナウンスなどからなんとなく楽屋の和やかな様子も伝わってきます。
 もちろん談笑ファンが大半なのでしょうが、変種天才型の吉笑さん、ぐんぐん頭角を現してきた笑二さん、いよいよこれからの笑笑さんたち3人の魅力も相まって、ファミリー会として充実してきたように思います。


 
 ボクは3年前、フリーになった友人の編集者につれられて新宿の「カツ政」に行ったのがきっかけで落語を聴くようになりました(詳しくは『季刊レポ』6号「全身落語家、立川キウイ」をぜひ)。
 談笑さんの「イラサリマケー」のモデルになった居酒屋の「カツ政」で飲んで、後日立川流一門会に行ったのです。
 旨いけれどもどこにでもある普通の居酒屋、というのがボクの「カツ政」の印象でした。
 それが……

 本日は、開口一番「しの字嫌い」の笑笑さん、「ぞおん」の吉笑さんのあとの、談笑さんの一席目が「イラサリマケー」でした。
 新作爆笑系の鉄板ネタで、ストーリーは知っているのに涙が出るほど笑いました。会場の大半もそんな感じなのでしょう大ウケでした。
 あたりまえの居酒屋の話が落語になったというよりは、日常のあたりまえの風景をどのアングルから眺めて笑い飛ばすのかというのが落語なのだな、と思ったりしました。
 落語の題材はすべて身近なことを扱っています。

 中入り後に笑二さんが登場すると場内が沸きました。ほとんどの客が昇進を知っています。
 読谷村中学校の同級生「うえちさん」に生まれて初めてラブレターを出したきり、恥ずかしくてなにもアクションを起こせないまま卒業してしまった、という初恋の話がマクラ。
 フェイスブックを始めたら彼女から友達申請があり「あのときのラブレターは今でも大切に保管してあります」と現物の写真が送られてきたとか!
 おおっ!素晴らしい展開、と思って聞いていたらものすごいオチがあったのですが、ここには書きません(笑)。
 絶望的に悲劇だった、とだけ書いておきましょう。

 2年半前に吉笑さんと始めた「談笑の弟子!!」の初回で笑二さんは「こんな顔なんですが22歳です」という挨拶で笑いをとっていました。
 老け顔で造作もイマイチ!(本人談。ボクじゃないです念のため)と言うのです。
 それが、つい先日飲んだときには、
「島田さん、この顔どう思います? 本当にラッキーですよね。悪いことなんかなにも考えていないように見えるでしょう? 落語家にはうってつけ、これ以上ないってくらいの顔ですよ。ありがたいです。ラッキーです」
 と目をキラキラさせながら自分の顔について何度も、何度も熱く語っておられました。
 なるほど、そう言われてみれば笑二さんの顔は江戸時代の長屋住まいの町人の代表のような顔に見えてきます。

 昇格が決定し会も近づいたことで自信がついて、良いほうへ良いほうへ物事を考えられるようになっているのでしょう。絶望的な悲劇など何ほどのこともない、とばかりに高座もはつらつとしていました。
 落語は絶望を扱うことも少なくないようですが、まあちょっとアングルを変えて見ればどんなことであっても何ほどのこともないよ、と結論しているのが多い気がします。
 日ごろ、若い人が羨ましいなどと思うことはないのですが、この日は笑二さんが羨ましく見えました。

 本番は「親子酒」。
 親父も跡取り息子も、ともに大酒飲みの上に酒癖が悪く商売にさわるようになってしまい、ふたりで禁酒を誓う。
 息子は、大切な客にそそのかされてもおだてられても我慢するのですが、結局は飲んでしまい、最後は悪酔いして客をなぐってしまう。
 それを咎めるはずの親父も、どうにも我慢できず、婆さんを騙すように酒を出させて、とことんまで飲んでしまう。
 大酔っぱらいになった息子と親父のトンチンカンなやりとりが聴きどころ。
 大酒飲みで、酒癖のよくないほうだという自覚のあるボクは、他人事とも思えないけれどもおかしくて笑ってしまいました。
 そして前回の失態も前々回の失態も笑ってしまえば良かったのだと気がつきました(汗)。

 帰りの電車で、入場時にもらったチラシの束を見てみたら、7月に笑二さんが出る落語会が5日もありました。「談笑の弟子!!」「談笑一門会」「立川流一門会」などのレギュラーはふくまれていないし、まだチラシを配っていない会もあるでしょうから、これは相当忙しくなるということです。
(あとでHPを確認したら11日ありました!一体どんな前座? 詳しくは下記を参照。立川笑二公式ホームページ、tatekawashouji.com)

 アルバイトなんかまったく考える必要なし、公園滞在時間を延長、集中して稽古ができそうです。
 いよいよ明日にせまった昇進の会では当日のお客さん向けにシークレットのお土産を用意しているという話も聞いています。
 談笑イズムを継承する若い落語家の決意表明となる、落語ファンがびっくりするようなすごいお土産を!

 
 
 
-ヒビレポ 2014年6月16日号-

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