明と暗の報告書 第11回

AKRとわたし

木村カナ(レポ編集スタッフ)


湯島〜御茶ノ水界隈をぶらぶらとレポする当連載、
神田祭の後、5月後半のあかりちゃん観察記録です。

 例大祭当日。
 境内に大きな白いテントが設置されていた。
 あかりちゃんは小屋の中にいた。ちょこはもういなかった、熊野幼稚園にもう帰ったのだろう。

おがくずの寝床でお昼寝中。
祭の疲れがいまだに癒えず?
お誕生日なのに……!

 例大祭翌日。
 放牧場に出ているあかりちゃん、ゆっくり休んで、もうすっかり元気になったのかな?
 神社の方と一緒に、スーツ姿の男性が、あかりちゃんににんじんをあげていた。
 その様子を見て、年配の女性が、
「ニンジンはどこで買えるの?」
 とたずねた。そういえば、動物園や牧場なんかで、ウマ・ヤギ・ヒツジなんかに、そういうエサやり体験サービスをしているところってありますね。
「ああ、これはぼくからあかりちゃんへの、誕生日プレゼントなんです。勝手にあげちゃいけないんで、あっちの社務所にお預けしておくと、決まった時間におやつにあげてくださるんですよ」
 なんと、そうだったのか! あかりちゃんファンからの耳寄りな提供情報である。

「おねがい
×このポニーは腹痛をおこしやすいので
食べ物は絶対に与えないで下さい。」


という注意が掲示されているにもかかわらず、カバンから食べ物を出して、勝手にあげている人をけっこう見かけるので、あかりちゃんのお腹の調子が心配だった。しかし、あかりちゃんったら、食べ物をくれた人を一度でちゃんと覚えて、その人がまた来ると、前足を鳴らしておねだりをする。傍で見ているだけでもそりゃあもうかわいらしく、覚えられてその仕草をやってもらえるのは、きっとすごくうれしい……だから、つい食べ物をあげたくなってしまう、その気持ちはわかるのだが、あかりちゃんを腹痛に苦しませたくない、と自制していた。だが、あかりちゃんの世話をしている社務所を通して、時間や量を管理してもらえば、あかりちゃんの健康に差し障る可能性はぐんと減るはず。あかりちゃんが喜ぶのはニンジン・リンゴ、それからモモなども食べるそうだ。神田祭の出発前にはバナナをもらってたなあ。しかも、タイミングが合えば、社務所の方のはからいで、届けた食べ物を自分の手であかりちゃんにあげられるという。今度、ニンジンを買ってきて、社務所に届けよう!

 ある日。
 雷雨が止んでから、神田明神に立ち寄る。小屋の中にいたあかりちゃんに挨拶の声をかけたら、小屋の横の狭いスペースにわざわざ出てきて、ブヒヒヒンと鼻を鳴らした。

少し前に鳴っていた雷におびえていたのか、
あるいは、小屋の中で退屈していたのか。

 ある日。
 男坂の脇のマンションの1階にある社務所分室に葉付きニンジンを届ける。その後、放牧場のあかりちゃんを見ていたら、ニンジンを手渡した、白い上っ張りを着た女性の職員さんが、ニンジンの葉だけ持ってきた。
「ご自分でもあげてみますか?」
 やったー! あかりちゃんにニンジンの葉っぱをあげると、ぱくりと一口で食べた、さらに、手をなめられた。

もっと欲しそうである。

落ちたニンジンの葉も食べたがる。

ほとんど夏毛になりつつある。

 ある日。

巫女さんと夕方のお散歩をするあかりちゃん。
散歩をしながら、境内の草木をぱくついている。
草むしり(食い)も神馬の仕事です???

 どうしてあかりちゃんにこんなに夢中になってしまったのか……あかりちゃんを見ているととにかく幸せな気持ちになる。そういえば、あかりちゃんを見に行くようになってから、上野動物園に全然行かなくなってしまいました。ジャイアントパンダも大好きです、でも、リーリーとシンシンがいるのは分厚いガラスの向こう。生まれも育ちも保護センターとはいえ、パンダは野生動物なのですから、本当は四川の山の中で暮らしているはずなのに、こんな狭いところで……という葛藤も心をよぎる。その点、あかりちゃんはポニー、小さくたってウマなのである、紀元前からヒトと暮らしてきた家畜である。環境としては、出生地の佐久高原のような、広くて自然が豊かな場所で暮らした方が幸せなかもしれないけれど、神田明神の神馬に選ばれてしまったからには、神社にいて、お祭りに参加したり、写真を撮られたりするのが、あかりちゃんのお仕事であるわけで。飼育員でもないのに、パンダに食べ物を直接あげるのは無理でも、あかりちゃんにおやつをあげることはできる。あかりちゃんにもう覚えられているような気がする。見に行くと、あかりちゃんの方から近寄ってくることもある。そんなときは、おでこやあごの下をそうっとなでる。時々、足を齧ろうとするので、油断がならない。噛むといっても、ちょっとした甘噛みで、痛くはないのですが。そんな風に、距離が近いのが魅力的で、いつも会いに行っちゃうのかも……。

 そんな話をしていて、話しながら、ハッと気がついた、わたしはあかりちゃんにいったい何を求めているのか?って、要するに「会いに行けるアイドル」ではないですか!!! その数日前、いわゆるアイドルへの愛情、ファン心理は、自分には持ちえないのかも、なんて言っていたのに! 握手会ってそんなにしたいものなの?などと、ニュースを見聞きしながら不思議に思っていたのだが、あああそうだ、わたしもあかりちゃんになら触りたい、おやつをあげたい。それができなくなったら、寂しくて悲しい。秋葉原のAKB劇場は神田明神のごく近所、おお、神田明神境内の放牧場はあかりちゃんのステージだったのか。そういえば、職員の方がこう言っていた、「あかりちゃんは最近、写真を撮られている自覚が出てきて、カメラを向けられているときには、そちらに意識が行きますね」。あかりちゃん自身も、アイドルとして日々成長しているのか。
 神田祭のときの、機嫌は最悪ながらも、行列を先導する馬車をひいていた姿、大変でかわいそうだけどかわいくって、いじらしくって健気で……って、アイドル好きの友人とアイドルのライブ映像を見ていたら、滂沱の涙を流していたので驚いたし、不可解だった、しかし、もしかすると、彼もそのような気持ちがつい極まって、あんなに泣いていたのかもしれぬ。

 AKB48のメンバーの見分けがつかず、名前と顔が一致しているのは数人だけだし、他のアイドルグループのことも、男女を問わずに全然知らない。2次元・2.5次元のキャラクターへの萌えも感じない。年をとって枯れた、というよりも、二十になる頃には、すっかりそんな風になっていたのだった。長年にわたってアイドル不在、ファン心理とは無縁のつもりであったが、わたしにもアイドルはちゃんといたのだ!……って、まあ、馬なんですけれどね。
 見分けがつかないといえば、48頭の牝ポニーによる、神田明神の神馬を決めるAKR総選挙がひそかに行われていて、実は「あかりちゃん」が定期的に入れ替わっていたとしたら――妄想してごらん、ものすごく珍妙な光景だよ。ああでも、高崎山のお猿さん&スタッフによる「TNZ総選挙」っていうのが行われているそうですね――その真実にちゃんと気がつけるかどうか……うわーっ! 正直、自信がありません!!

馬らしく見えるポージング。



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-ヒビレポ 2014年6月16日号-

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