ヒビムシ  2 – 12

片品川:キバネツノトンボ

沢田佳久
(第11号で「五十円玉はどこだ」執筆)
 
 
 
 
 
 6月4日のことを書こうか,6月4日に書こうかと,薄っすら目論んでいたのに結局,6月2日のキバネツノトンボのことを6月8日に書いている.この間に梅雨入りして既に各地で大雨が伝えられている.
 今年も北関東に遠征した.群馬県の沼田市郊外に泊まって2日の朝からて武尊山方面へ向かった.好天に恵まれているがラジオでは九州では雨が降っていると言っている(九州山口がこの日入梅).その雨がいつごろこちらへ来るのか? その場合の撤退の大戦略を考えた.ゆっくり来るのなら逃げる形で北東方向へ流すことで実働時間が稼げるし,早く来るのなら南西へ進んで早めに断念すれば退却経路が短くなる.北関東をぶらつく事だけ決めてきた漠然とした無計画な遠征である.
 結局,後者の戦略で5日までうろついた.6月4日は渡良瀬遊水地付近をうろついたが良いネタがなく,秩父まで戻って車中泊したので書ける状態ではなかった.

 さてその2日朝,片品川に沿って道路を遡っていくと,良さそうな場所を見つけた.道路を付け替えた際に発生したらしい新旧の道路に挟まれた空き地である.そこが良い感じの野原になっている.水面は見えないが,湿地性の植物も生えている.見下ろすとウスバシロチョウやモンキチョウにまじって変な虫が何匹か飛んでいる.遠目にも長い触角が見てとれる.キバネツノトンボである.
 ツノトンボの類はトンボではない,という事は以前書いた(前連載の第二回).と,思って自分で見なおすと「ツノトンボの類はぜんぜんトンボではないとか,幼虫はこんなだとか,そういう話が定番だがここでは省略《興味のある方は検索してみてください》」などとお茶を濁している.でもそのとおりで,ツノトンボの類はトンボとは全く異なる虫で,そもそも完全変態するのだ.日本には数種しか生息しておらず,その中でたぶん最も美しいのがキバネツノトンボである.切手にもなってるし,絶滅危惧種だし,けっこう箔付きの種である.


 
 近づいて見ていると,飛び立つユスリカなどを空中で捕っているようである.空中を周回して,侵入する同種を追いかけている個体もいる.他種の蝶などにも反応している.他個体を抱えたような状態で飛んでいるものもいて,たぶん交尾中の雌雄だと思うが,どちらが♂かは分からなかった.

 様々な草が生えているが,キバネツノトンボは茎の細い単子葉植物に好んで止まるようだ.大きな虫なので離着陸の邪魔にならない位のスペースが必要なのだろう.ヨモギなどは葉が込んでいて良くないようだ.そのつもりで見てみると脚の先のツメが良く発達していて,細い滑らかな茎に適応しているように思う.
 

キバネツノトンボ♂


 
 茎に止まっている♂を撮っていると,ときどき翅を開く.体温調節なのかディスプレイなのかはっきりしない.ともかく翅を開いた状態のほうがかっこいい.なんだかとても華やかな写真になった.ごらんのように♂の腹端には立派なハサミがある.交尾の際に役立つのだろう,一旦つながってしまえばぶら下がっていられるのかもしれない.だとすると交尾中の飛行は♀主導なのだろう.

 腹を膨らませた♀が重たそうに止まっていたので,見たり撮ったりしていた.すると一旦飛び立ってホバリングして元の場所に止まった.これを数回繰り返した.そのあと産卵を始めた.産卵場所の最終確認だったのだろう.
 産卵は腹を曲げて左右交互に一卵ずつ貼り付けていく.前の卵に隣接させるよう,体を少しずつ上に移動していく.卵は縦二列に並ぶ.10分ほどで60卵あまりを産んだ.
 

キバネツノトンボの産卵


 
 いつものように飛行中の姿を撮ろうとか,複数個体が空中戦しているところを撮ろうとか,いろいろ試みたが,いつものようにイマイチ.
 この場所のハルジオンには次々と蝶が来るので,それもついでに撮った.ウスバシロチョウは名前は「…シロチョウ」となっているけれどもショロチョウ科ではなくアゲハチョウ科だというのが定番の薀蓄,モンキチョウは♀に黄色いのと白いのがいるというのが定番の薀蓄である.いつものように《興味のある方は検索してみてください》.
 

ウスバシロチョウ


 
 

モンキチョウ


 
 やはり6月4日のことを書こう.ネットで「虫の日」を検索すると,「漫画家の某先生らのよびかけで設立された某倶楽部が記念日として提唱」のような記事が多数出てくる.だが探してみても提唱の事実どころかその某倶楽部の存在すら確認できない.設立年まで明記されているのに… これは一種のネット伝説なのかもしれない.
 どこでだれが制定しようとも,だれも制定してなくても,ともかく6月4日は自動的に虫の日なのであって,あらためて制定しようとは誰も思わなかったのではないか,と思う.

 
 
◆立体写真の見方◆

同じような2コマが左右に並んだものは「裸眼立体視平行法」用の写真です.
平行な視線で右の目で右のコマ,左の目で左のコマを見ると,画面奥に立体世界が見えてきます.
大きく表示しすぎると立体視は不可能になります.

色がズレたような1コマのものは「アナグリフ」です.
青赤の立体メガネでご覧ください.
メガネは右目が青,左目が赤です.
緑と赤の暗記用シート等でも代用できます.

別サイト「ヒビムシ Archives for 3DS」にはMPO版を置いています.3DSの『ウェブブラウザ』で「ヒビムシ Archives for 3DS」のサイトを参照してください.お好みの画像を(下画面におき)タッチペンで長押しすると,上画面に3Dで表示されます(数秒かかるかも).表示された3D画像ファイルは保存することもでき,『3DSカメラ』でいつでも再生することができます.

MPO版とは,複数の静止画を一つのファイルにまとめたもので,ここでは立体写真の左右像を一つにまとめたファイルです.3DSをはじめ,多くのmpo対応機器で3Dとして再生,表示することができます.PCやスマホ等でダウンロードできますので,各機器にコピーして再生してみてください.

 
 
 
 
 
-ヒビレポ 2014年6月18日号-

Share on Facebook