超小市民あるあるパラダイス  第12回

親が入院あるある

 
田中稲(11号で「大阪から来た女」執筆)
 
 
 
 
ね、眠い。眠い。ここ数日、昼ご飯を食べた後がキケーン!!
瞼がどすこーいとシコを踏んでくるのである。抵抗しても落ちてくる落ちてくる(泣)。なぜこんなに眠いのかというと、オカンが膝の病気で入院し、家事と見舞いのため、早起きが続いたからなのであった…。
いやはや、オカンは今年サンザンでお祓いを考えるレベルである。昨年末、突然肉離れを起こして脚がナスビのように青く腫れ上がり、痛いのがピターッと止まるからとロキソニンを飲みまくり、
「もう大丈夫だもん!」
と中途半端な回復状態で自転車ガンガン乗りこなすという暴れっぷり。結局、ロキソニンの副作用で肝臓の数値が3倍になり、それが治ったと思ったら再び脚が腫れ上がり、最近やっと大きな病院に行ったところ
「肉離れとは別で、血が溜まってますねー」
と診断されてしまった。その血をファイバーなんちゃらで抜きキレイにするべく、入院と相成ったのだが、オカン、不安のあまり挙動不審に(泣)。なにせずっと「自分だけは永遠に元気」と本気で信じ込んでいた人である(浅はかな。あまりにも浅はかな…)。寝込んだこともほとんど無く、入院は10年以上前の白内障手術3日間コースだけ。ガッツリ入院は今回が初めてで、心細さMAXになったのだろう。分からなくはないが、2日前あたりから
「死ぬかもしれん」
と絶望の眼差し。ええええ? 悪いの膝だけだよねッ?? 思わず「おおげさなー!」と言いそうになるが、それは禁句。不安な人に心無い茶々を入れるのはマナー違反である。
さらには、どこの誰からかサッパリ分からないが、
「病院に売店が一切なく、お菓子不足に皆苦しむそうな」
という謎の情報を仕入れてきて、
「頼むから毎日菓子を運んでくれぃ(悲壮)」
必死に私に頼み込んできた。
「菓子がないくらいで死なん! もしくは隣のベッドの家族の人からおすそ分けが来るはずッ(←セコい)」
と言いそうになるが、それも禁句。不安な人に心無い茶々を入れるのはマナー違反である。


 
しかしオカンも不安だろうが、私も不安なのである。
なぜなら、オカンの入院期間私は超がつくキレイ好きの彼女の代わりに、掃除を完璧にしておかねばならないのだから(泣)。ホコリをたまらせようもんなら、意地悪な姑バリに
「すーっ…ふっ(←タンスの上を人差し指でなぞり吹く仕草)。あらまあ、ヤスコさん、あなた、お掃除の意味があんまり分かっていないようねぇ」
と責められるのは目に見えている! そして、なにより私を緊張させるのがオカンの趣味であるベランダ花壇。これを枯らすと、人殺しならぬ花殺しとして責められるのは目に見えている!
とにかくこの一週間は花嫁修行だと思って(←些かイタいが!)頑張るしかない。今までサボり過ぎていた家事を覚える良いチャンスではないか。
 が。意気込みで経験値の低さがカバーできるほど家事は甘くなかった…。私の手際の悪さの破壊力たるやもう(号泣)。炊事すりゃ台所を水浸しにし、花壇を整えようとすりゃ鉢植えを蹴り倒し、仏壇の花を変えようとすりゃ位牌にチョップしてしまい…。「ガチャン!」「ああっ」「ゴン!」「ひいぃ!」のエンドレスリピート。皿や茶碗が一つも割れずに済んだのは本当にミラクルである。
でも人間は慣れる生き物。こんな私でも、3日目にはなんとか掃除洗濯掃除をチャチャッと済ませ
「およ?一人暮らし…いけるかも?」
などと自信が湧いてきた。そうなるとちょっと「自立してるっぽい充実感」も楽しめてきたりする。しかし、その変化をオカンは霊感でキャッチしたのだろうか。なんと4日目の晩
「明日退院します」
とメールを送ってきた。えええ? 退院まであと3日あるよね?? どうしたッ。
本人は前倒し退院の理由を
「クーラーの効き過ぎで風邪を引いたから」
と主張。いやいや、それなら余計病院に留まり治してもらえっちゅう話である。で、よくよく話を聞くと「これ以上他人と寝泊りするの無理」というあまりにもオレオレな理由。チョモランマの如くプライドの高いオカンにとって、4人部屋は拷問部屋だったようだ。まあ、お医者さんの許可も出たらしく、精神衛生上、帰ってきた方がいいかもしれない。ところが
「はいはい次の朝迎えに行くよ」
と答えた直後、驚くべき返事が戻ってきた。
「病院代がまだ分からないけど、一応20万円持ってきて」。
ににに20万円ッ?? たった4日で? 4人部屋で? 膝だけで??
なにその盛りモリ会計ッ!!!
い、いやいや。心の叫びをそのまま声に出してはならない。心身共に弱っている人に強い否定形を投げかけるのはマナー違反である。落ち着け私。
「びょびょびょ病院代ってそんなに高けぇか?」
落着けなかったッ、残念ッ(泣)!!
そんな私の動揺をスルーし
「ほら、手術してるから。手術は絶対高いから。20万ほど持ってきて!」
と言い張るオカン。仕方なくトホホな貯金から泣く泣く20万円を引き出し持っていったが、入院代はぜーんぶ込みで5万もかかりませんでした(あたりまえ体操〜…)。ATMで残りのお金入れ直したっちゅうねん! 嗚呼虚しき二度手間ブルースよ。。とにもかくにも、入院は年老いた親を駄々っ子に変えると知った。

無事タクシーで家に帰ってきたオカンは、やっと落ち着いたのかリビングに入った途端、
「ごめんねーおつかれ―キレイにしてくれてるやーん」
と今までとは打って変わって明るい表情に。しかしテレビ台を見て一言。
「まあ細かいところにホコリたまっとるけどな」
はい、想定していた姑ツッコミいただきましたー。
しかももう一つ、彼女はまだ気づいていない。悲壮に枯れまくったベランダ花壇の様子を…(号泣)。毎日水やったんだけどなー。おっかしいなー。「てめーの撒いた水なんて飲めるか! ボスが返ってくるまで俺らは待つ!」と花達にハンストされた気分である。むーん。

 
 
 
-ヒビレポ 2014年6月19日号-

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