ヒビムシ  最終回

中山大杣池:ゲンジボタル

沢田佳久
(第11号で「五十円玉はどこだ」執筆)
 
 
 
 
 
 早くも最終回,蛍の光である.なので昨日,蛍を撮りに行った.そのことを一夜明けた11日の朝に書いている.場所は以前にも書いた中山大杣池だが,蛍が出るのは例の青少年公園ではなく,園外の細い流れである.公園は6時に閉門するのだ.青少年がタムロするからだろう.

 蛍が目的だが早めに行った.今,写真のデータを見なおすと午後3時半には公園をうろついている.昨日の事なのに細かいことを思い出せない.最初に撮っているのはアカシジミの弱った個体だ.そうそう,その前にテングチョウが10匹ほどタムロしているのを見て,撮ろうとしたのに上手くいかなかったのだ.彼らは筆者との距離を確実に測っていて,決して一定の距離以内に近づけさせない.もう少しのところで一斉に,飛び立ちやがる.かなりの時間を無駄にしたことを思い出した.
 それに比べてアカシジミは楽だったのだ.弱々しく風に流されてきて地面のオオバコの葉に止まり,飛び立てなかった.いろんな角度で撮らせてくれた.匍匐体勢で撮っていたら車が通りかかったのを思い出した.まさか他に公園利用者がいるとは思わなかった.写真を見ると結構思い出すのだ.文脈というやつか.ただこのアカシジミは以前(前連載の第2回)に掲載している.同じ種はパスして,代わりにミズイロオナガシジミを掲載しておこう.この個体もあまり元気がなかった.日差しがなくなって急に気温が下がったからだろう.尾状突起が逆風で曲がり,撮るタイミングに困ったのを思い出す.
 

ミズイロオナガシジミ


 
 昼ごろの気温は高かった.虫がたくさん出てるわりに動きが鈍く,撮影しやすい夕方になった.ミスジチョウの類いが数匹,笹の生垣の上を舞っていた.こういうのはタムロに該当するのか?
 「タムロする」は本来「屯する」と書くようだ.新撰組の屯所の屯であり屯田兵の屯だ.でも昨今,駅や公園やコンビニの駐車場で禁止されてるタムロはカタカナで,独特の雰囲気を持っている.無条件に良くないことと決め付ける語感がある.
 そういう関係ないことを考えながら,その動きを追うと,生垣にもぐりこんで休んでいるようだ.裏側の星が見えてホシミスジと判明,こちらも生垣にカメラを突っ込んで撮影した.
 普段はすぐに飛び立つハンミョウの類も走るばかりで,なかなか飛べない.逃げる個体を追い回していると,奇跡の一枚が撮れた.飛翔中の状態が写っている.完璧ではないが,狙って撮れるものではないのでラッキーな一枚である.
 

ニワハンミョウ


 
 林床の,照葉樹の葉が厚く溜まった場所ではモリチャバネゴキブリが盛んに活動していた.繁殖の時期なのだろう.あちこちでカサコソと音がする.筆者が踏み込んでいくと,いままで落葉の下にタムロしていたものが葉の上を走って逃げだし,そこらじゅうゴキブリだらけである.走るだけではなく時々短く飛ぶ.手当たり次第に狙って撮っていると,これも離陸シーンが撮れた.
 ゴキブリというと不潔なイメージがあり,嫌われ者の代表みたいだが,多くのゴキブリはそうではない.野外にいるモリチャバネゴキブリは人家にいるチャバネゴキブリに似ているが別種である.
 

モリチャバネゴキブリ


 
 ほかにフタモンウバタマコメツキも見かけた.裏返すとペッチンと飛び跳ねる,あのコメツキムシの仲間なのだが,その中ではきわめて立派で見栄えのする,渋い色彩の虫である.
 これも飛び立とうとして枯れ枝に登ったまま逡巡している感じだった.筆者に気づいて落下したのでアカマツの丸太の上に移し,ポーズをとってくれるのを待って撮影.裏を向けて飛び跳ね態勢も撮影.
 図示したいのは山々だが,邪念が湧いてきた.前述のアカシジミの場合のような,重複を避ける観点からの出し惜しみの発想である.この種,フタモンウバタマコメツキは冬にも見つかる.というか,冬に枯れ株の樹皮を剥がしてコイツが出てきたら嬉しい虫なのだ.ヒビムシの冬編ができるかどうかは分からないが,再開した場合には貴重なスター候補である.なので今回は温存である《気になる方はググってください》.

 閉門前に園外に出た.下流にあたる蛍スポットに移動すると,そこでも路上にタムロするテングチョウの一群に遭遇した.こんどは明らかに鈍い個体がいて,間単に撮らせてもらえた.この種も冬の陽気に見られる貴重な戦力である.羽化したてのタベサナエや重そうに葉にぶら下がっているコガネムシ,ナガメの幼虫と雌雄成虫などなど,やはり虫は多く,しかも鈍い.
 蛍の撮影には二通りの道具を用意してきた.一つは9センチ幅のステレオ撮影用レンズで,これをいつものミラーレス一眼につける(三脚使用).もう一つは旧型コンデジ二台を60センチ間隔に並べた物である.どちらも感度を最高にし,地上に置いたままシャッターを30秒〜60秒あけっぱなしにする.
 これらを蛍が出そうな方向に向けてセットして,暗くなるのを待つ.一人でのタムロはあり得るのかな,などと考えながら待った(いま辞書を確かめて不可能と納得).
 天気は良い感じに曇っており湿度は高い.気温は低いが.蛍は例年通り8時10分前に光りだした.ゲンジボタルである.時期が早いのか,個体数は少なかった.
 とちゅうイノシシが出て驚いたりもしたが,川べりに止まった♀に♂が飛来するのを狙って何回も撮影した.というより適当に何回も何回も撮影して,その間に飛来や通過があればラッキーという戦術なのだ.
 その結果,いちおうそれらしい光跡が撮れた.掲載しているのは60センチ幅のほうである.露出は60秒.点滅しているのが分かると思う.薄っすらと背景も写った.コントラストや明暗をかなり調整したが合成ではない.環境中でのゲンジボタルの光跡,3D実写がこれである.
 

ゲンジボタルの光跡


 
 

◆立体写真の見方◆

同じような2コマが左右に並んだものは「裸眼立体視平行法」用の写真です.
平行な視線で右の目で右のコマ,左の目で左のコマを見ると,画面奥に立体世界が見えてきます.
大きく表示しすぎると立体視は不可能になります.

色がズレたような1コマのものは「アナグリフ」です.
青赤の立体メガネでご覧ください.
メガネは右目が青,左目が赤です.
緑と赤の暗記用シート等でも代用できます.

別サイト「ヒビムシ Archives for 3DS」にはMPO版を置いています.3DSの『ウェブブラウザ』で「ヒビムシ Archives for 3DS」のサイトを参照してください.お好みの画像を(下画面におき)タッチペンで長押しすると,上画面に3Dで表示されます(数秒かかるかも).表示された3D画像ファイルは保存することもでき,『3DSカメラ』でいつでも再生することができます.

MPO版とは,複数の静止画を一つのファイルにまとめたもので,ここでは立体写真の左右像を一つにまとめたファイルです.3DSをはじめ,多くのmpo対応機器で3Dとして再生,表示することができます.PCやスマホ等でダウンロードできますので,各機器にコピーして再生してみてください.

 
 
 
 
 
-ヒビレポ 2014年6月25日号-

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