MAKE A NOISE! 第40回

メリル・ストリープのお言葉(第1回をご参照下さい)に従い、まだ知れ渡っていない面白い映画をロンドンからMake a noise!
 

不謹慎だから?

 

山口ゆかり
(第16号で「どんなに幸せでも罪悪感と孤独感はぬぐえない」を執筆)
 
 
 
 ここでご紹介しているのは、映画祭を回っている段階の、一般公開があるかどうかわからない映画が多いので、その後の動向も気にかかります。
 最近では、第17回のアメリカ映画『Mistaken for Strangers』が、この6月からイギリスで公開となりました。2月のオーストラリア、3月のアメリカに続いての公開で、7月はドイツ、オランダと行くようです。この調子で日本にも行くといいなあ。

 面白かった映画は、やはり日本公開を願います。願い続けて早4年の映画が、2010年にサンダンス映画祭でお披露目されたイギリス映画『Four Lions』。イギリスのイスラム系青年が自爆テロをもくろむコメディです。
 

  
 これが初監督映画となるクリス・モリスは英アカデミー賞新人賞はじめ、イギリス以外でも様々な映画賞を受賞しています。モリスは、テレビではコメディアン/ライター/プロデューサーとして活躍している人で、賞も獲得するけど苦情もたくさんくるようなきわどいテレビ番組を作っています。

 『Four Lions』のワナビー・テロリストたちは、あんまりおバカすぎて、あろうことか準備段階でメンバーが減ってしまいます。言ってみれば、バカが高じて、死んじゃうわけです。
 この台詞、実は『徹子の部屋』出演時の渥美清のぱくり。学生時代に3バカと呼ばれた中の1人だった話での発言でした。1人は商売か何かで成功していて、もう1人は「バカが高じて、死んじゃいました」黒柳徹子も思わず吹きだしてました。
 語り口に可笑しみと暖かみがあって、ちっとも不謹慎な感じはしませんでした。『寅さん』のイメージが強すぎて、どれほどの役者かよくわからなかった渥美清を、少しだけわかった気がしました。

 『Four Lions』も笑わせるだけでなく、最後でしんとした気持ちにさせるのが高評価につながったと思います。
 2010年5月のイギリスとアイルランドでの公開を皮切りに、ヨーロッパや英語圏の国々から、ロシアとその近隣諸国まで行っています。2011年シンガポール、2012年ポーランド、2013年ポルトガルとまだまだ公開が続いているので、希望は捨てていません。

 当初、こんなに面白いのに日本に行かないのは、イギリス・ローカルな役者さんしか出ていないせい?とひがみました。でも、今となっては事情が違います。世界的に知られるようになったベネディクト・カンバーバッチがいます!それほど出番は多くない交渉人役ですが、市民はもちろん、バカでダメなテロリストたちをも救おうとするような何気にかっこいい役です。

 いや、『Four Lions』でネックなのは、出演者ではなくて、主人公がテロリストということかも。 考えてみると、イギリスの監督が撮ったテロリスト絡みの映画は、なかなか日本では公開されません。
 IRAのボビー・サンズをマイケル・ファスベンダーが演じた2008年『ハンガー』は、この3月でしたから6年越しの公開。2作目の『シェイム』もヒットさせたスティーヴ・マックイーン監督が、3作目『それでも夜は明ける』でオスカーを獲得して、やっとデビュー作も公開というわけです。第21回でもオスカーを予想しつつ似たようなことを書いてましたね。しつこいようですが、『ハンガー』は『それでも夜は明ける』より完成度は高いと思います。
 日本赤軍の重信房子、ドイツ赤軍のウルリケ・マインホフそれぞれの娘をメインにしたドキュメンタリーの2010年『革命の子どもたち』もこの7月だから4年越しの公開です。若松孝二監督の尽力もあり、ようやく公開にこぎつけたそうです。
 オスカーとるくらいの監督になったり、誰かががんばるとかしないと、日本でテロリストの映画は無理なんでしょうか。

 オスカーで有名になって公開がありなら、テロリストではなくて、日本では名前も知られていない新人監督なのがネック?
 でも、それを言えば、カンバーバッチ人気で日本公開となったのであろう映画も新人監督作でした。2010年エジンバラ国際映画祭でお披露目の『Third Star』です。カンバーバッチが末期がんの主人公を演じるものでしたが、当初はスルーで、カンバーバッチが知れ渡った昨年になって『僕が星になる前に』として公開されました。
 新人監督でも、俳優の人気が出れば公開されるんです。やっぱり、余命わずかの主人公には文句言えないけど、テロリストで笑うなんて不謹慎だから?

 思考がループしてしまう『Four Lions』なぜ日本公開されないか問題ですが、仮にテロリストで笑うのが不謹慎説をとっても、2005年にロンドン地下鉄・バス爆破テロがあった、とうのイギリスで、みんな笑って見てるんだから、そこは心配ないのでは。
 さすがに、スポンサー探しは難航したという『Four Lions』ですが、ふたを開けてみたら興行的にも成功しました。あっ、アメリカではそこまで成功してないから?それこそ、9.11のトラウマが大きいアメリカでの大成功は無理です。そのアメリカでさえ限定公開されて、評価も悪くないのに、日本公開がないのはどういうこと?
 意外に保守的なアメリカ人に対し、ブラックな笑いを好むイギリス人とは俗に言われることですが、「バカが高じて、死んじゃいました」で笑わせられる名優もいたし、笑えるセンスがある日本でも『Four Lions』は、きっと受けると思うんだけどなあ。
 なんてことを言ってるうちに今期もおしまいです。最後までおつきあいいただき、ありがとうございました!

 
 
-ヒビレポ 2014年6月28日号-

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