こしょこしょ話 第1回

sumimoto

こしょこしょ話

 
住本麻子
(第16号で「東京駅でプチ帰省」を執筆)

 
 
 
小さい頃、こしょこしょ話に憧れていた。

たくさんのこしょこしょ話は眼前に繰り広げられていたが、いつもただ見ていた。割とまじまじと見ていたが、それで仲間に入れてもらえはしなかった。

言う方になれるほどのネタはなかったし、言われる方に選ばれることもあまりなかった。鈍くさい子だったからだろうと思っている。

こしょこしょ話は、しちゃいかん。堂々と言えんことは、言っちゃいけん。

大人からこう教えられたとき、私はほっとした。仲間に入れてもらえないことを、肯定的に考えられたからだ。こしょこしょ話は、している方が悪いんだと。

でもたまに「耳貸して」と言われると、胸が高鳴った。ワクワクしたし、やっぱり選ばれたことが嬉しかったのだった。
ただ、私は耳が悪いのか、聞き損なうことが多く、また察しも悪かった。例えばこんな感じだ。


 
「@7sけ〓※!」
「…え」
「hx◯¥6z;る!!」
「何て」
「あいつ鼻毛でてる!!!」
「え、どこどこ」
「アレ」
「え、わからんどこどこ」
「……もーいいよ」

そして「シッシ」と、突き放された。「使えねぇな」と言わんばかりの目で……今思えば誰もそこまでは言ってないのだが、何かすごく情けない気持ちになったのだった。こういうことでよく、「ダメだな、わたし」ってよく思ったものだった。

こしょこしょ話には、向いてないのかもしれない、と私は何となくわかっている。

だけど私はやりたい。私はこしょこしょ話をやりたい。特別な誰か、でなくてもいい。特別な話、にも限らない。くだらない話も、反応に困る話も、秘密だからねってささやくこと。

こっそり言うからこそ、本当はすごく多くの人と分かり合えることがあるような気がするのだ。
 
 
 
-ヒビレポ 2014年7月3日号-

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