初めまして津島ですけど、いい年なんで大人やってます。  第3回

tsushima

女の料理に対する男の反応について

 
津島千紗
(第16号で「探偵失格」を執筆)
 
 
 
 
 実家が近所で子供の頃よく遊んでいたK子の噂をよく耳にする。「せっかく作った料理なのに旦那が文句ばかり言う」そうである。K子は有名企業の会社員で残業も多い様子なのだが、その残業をして遅く帰ってきたK子に料理を作らせ、自分は何もせず、料理の文句だけ言っているようなのだ(品数が少ない、これはおかずにならない、まずい、など)
 さらに、掃除や洗濯も一切しない模様。

 さて、書いているだけでイラついてきました。
 いや、ありえないんだけど。最低なんだけどその旦那。子供もいないんだし離婚すればええやん。今ならまだ遅くなくねえ? てか、DVじゃね!? いやインターネットで調べたらやっぱそれDVだから。つか、なんで結婚したん? マジで意味わからん。

 って、本人に言いたいけど、意外とこれ言えないですね。

 たぶん、旦那が最低ということは本人もよくわかってるんだけど、人に言われたら腹立つことってあるからね。ほら、自分でもデブだと思ってても人から太ってるって言われたらムカつくみたいな。

 ああ悔しいほんとに悔しい。なんでK子がそんな言われ方を毎日せねばならんのか。そんな男に文句を言われるような料理を作るためにK子は大人になったのか? そういうこと言われるために、料理を覚えたんとちゃうやろう。特に十代の頃のK子は、いわゆる毒舌キャラで、斬らなくてもいいようなもんまで斬りまくっていた。あの頃の彼女に聞かせたら平気で「さいてーやん、そいつ。なんで結婚してん。ありえへんやろう」って絶対言うと思うよ。あの頃の彼女を思い出すと、すごく不憫で悔しくなる。


 
 とまあ、この件に関してはかなり長い間、詳しいことは知らないのだがずっと気がかりで腹が立っている。

 というわけで、今回、女房や彼女の料理に対する男の反応について考えたい。このK子の男はひどすぎるとして、しかし、意外と日本人の男は、女の作った料理に対しての反応のレベルが非常に低いということが私の調査によってわかった。当たり前のように味付けやメニューに対して文句を言ったり、無言でむしゃむしゃ食べて当然のような顔をしてお礼もコメントも言わないなど一般的にごく普通の反応のようなのだ!
 本当に信じられない。ありえない。許せない。

 おそらく、付き合うか付き合わないかぐらいの時期や、付き合ってから初めての手料理の際には、おいしい、とか言っていたはずなのだ。
「うわー俺、ひき肉のカレーって大好きなんだよねー! ほんとわかってるわー」
「これどうやって味つけたの? 超うまいんだけど! 俺が今まで食べた生姜焼きの中で一番うまいわ」
「あ〜腹いっぱい。料理がうますぎて食いすぎたわーすげえ苦しい(笑)」
 とか適当な薄っぺらいコメントぐらいしていたはずなのだ。絶対に。男だって、しようと思えばそれぐらいのリアクションぐらいできるのだ。私は知っている。

 それが、結婚なんかした日には、コメントも何もしないでむしゃむしゃ食べるのだ。なんて作り甲斐のないことか。犬のほうが何も言わぬがよほど美味しそうに食べる。
「おいしい?」とかこっちから聞いて、テレビを見たまま「うまいよ」とか言ったりするんだろう。想像できる。枯れている!! 湿度が低すぎる。
 それどころか、作ってもらっておいて文句まで言っているだなんて・・・「だったらおまえが作れよ!」ってちゃんとみんな言ってるのか? 思っても言わない感じ? 言っても仕方ない感じなんでしょうか? なんなんでしょうか、この世界観。狂っている。

 私は、女の作った料理に美味しいとかありがとうと言えない男は一番嫌いだ。本当に付き合う価値がないと考えている。時間の無駄なので一刻も早く別れたほうがいい。個人的には、「女を殴る」とか「女の財布から札を抜き取る」とかと同じぐらい「別れたほうがいい」という感覚だ。

 彼が料理を作るから、とか、毎日外食だから、というのなら、問題がないかもしれないが、なんだかんだいっても今の日本では女のほうが圧倒的に台所に立っているのだ。日々の料理に対する男の反応によって毎日傷つけられたり、相手が無反応というやりがいのない家事を押し付けられたりするのはまったくもって許されることではない。美味しいと言ってもらってこそ作る意味があるのでは? そんな関係うまくいくはずないのだから、別れるべきだ。それとも一生我慢するんですか? というわけだ。私は私の大切な友達にそんな我慢はしてほしくないと考えているし、私の大切な友達に対してそんな反応をするような男は一生近寄らないでいただきたい。

 何年もの間、お昼休み欠かさずに「お弁当ありがとう。おいしかったです」と必ずメールをしてくる男も、ちゃんと世界にはいるのだ。そりゃ、こっちだって毎日作ろうという気にもなるだろう。こういったことが自然とできる男が、あまりにも少なすぎる。そのメールがそんなに手間だとは思わない。この話をすると、女友達はみんな「めっちゃいい人じゃん!」「そんな人そうそういない」と驚く。情けない。それは周りの男のレベルが低すぎるのだ。
このお弁当ありがとう男子は、目の前の料理に対しても、一口食べたら必ず「おいしい」と言うし、コメントは忘れない。文句など絶対に言わないが、時折「こんなにおいしいおかずがたくさんありすぎると太る」と怒っていることならある。また、よそでよく聞かれる「せっかく作ったのに嫌いだからって食べなかった」という生意気現象も、ありえない。彼は一応食べるのだ。特定の食材に対し、申し訳なさそうに「これ、あんまり好きじゃない・・・」とこちらの様子を伺いながら申し出ることならあるが、それは、今後の参考のためであり決して文句ではない。もちろん言い方というものがあるから気を付けるべきなのだ。そして、作ってもらったのだから今度は食器は彼が洗う。
これぐらい普通であるべきだ。
なお、お弁当ありがとうメールに対して人から褒められることに関しても彼は
「人にお弁当作ってもらってありがとうって言うのなんて当たり前だろ!」と逆に怒っていた。そのとおりである。お互いに感謝の気持ちを大切にするべきなのだ。

 さて、みなさまどう感じましたでしょうか。
ぜひ参考にしていただきたいもう一つの好例を紹介する。

 六つほど年上の夫婦の家にお呼ばれして、夕食をごちそうになったときの話だ。とても料理上手な奥さんの手のかかった美味しい料理をたくさんいただいた。豚の角煮に餃子、リーフサラダ、ナスとピーマンの味噌煮・・・本当に、お世辞抜きで美味しく、私たちは「なんですかこれーっ!!!」「すっごい美味しいですこれ!!」「料理上手すぎますね!!」といちいち絶叫、激しくリアクションしながら食べまくっていた。
 そこの夫婦には、三歳か四歳だかの長男リョウ君と、一歳ぐらいの次男がいた。次男は、まだ日本語を話さず、アブアブ言いながらニヘニヘと笑い、トテトテ走り回っていた。長男は、キラキラした黒目率の高いお目目に、長いまつ毛をバサバサさせてニコニコしておりとにかく顔がかわいく、また、非常に穏やかな性格で騒いだり走り回って暴れたりしない子で、恥ずかしそうに話しかけてくるのがすごくかわいいのだ。

 そんなかわいい子供たちと絡んだりしつつ食事をいただいていたら、奥さんがまたキッチンから何かを持ってきた。
「ピザ焼いたんだけど、ちょっと焦げちゃったあ〜ごめんね〜」
と言いながらテーブルに置かれた手作りピザは、確かに焦げていた。さて、これに対する長男リョウ君のリアクションである。

 彼は、迷うことなく、見た瞬間、
「でも、おいしそうっ!!」
とニコニコしながらコメントした。

 完璧である。百点満点どころではない。もう、これ以上ないくらいの完璧な答えだ。あのあと、大人の頭をどんなに駆使させても、これ以上が見つからない。

 ピザは別にひどい状態ではないし全然食べられるし、実際に本当に美味しかったのだが、「そんなことないですよ〜焦げてませんよ〜」と言うと明らかに嘘になる感じだ。
「全然食べれますよ大丈夫ですよ」
など、まあ普通とっさに人が言ってしまいがちだと思うが、「実際焦げてるけどね・・・」と思っている感じが出てしまっている。

「でも、おいしそうっ!!」
瞬時にこれを言ったっていうのが心から思っていることが伝わってきて、非常に良い。
これが少し間が空いて、大人が「でも美味しそうだよ」など言うと、どうしてもフォローっぽくなってしまう。無邪気に、瞬間にこれが出ないとダメなのだ。

 また、この「でも、」の部分が非常に良い。これが普通に「おいしそう!」だけだったら、「いや、だから焦げたって言ってんだろ話聞いてんのか」という間抜けな印象になってしまう。焦げているのは認めた上での「でも、おいしそう!」の完璧さはもう、恐ろしいレベルに達している。

「でも、おいしそうっ!!」を瞬時に出せる、この三歳児の男子力よ。もう、この子は一生女に困ることはないだろうな、って思いました。というか、もう、「二十年後待つわ!」ぐらいのハートの見事な撃ち抜かれっぷりでした。

「でも、おいしそうっ!!」を不意の状況からでもすぐに無邪気な感じで出せるトレーニングは今からでも大人もしてみてもいいかもしれない。
私はこのセリフは覚えておいて損はないと考えている。男に必要なスキルは、これだ。くれぐれも変な間をあけたり、わざとらしい感じを出さないように。台無しである。
 
 
 
-ヒビレポ 2014年7月15日号-

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