今朝はボニー・バック 第45回

bonnie

ローカル路線バス アナウンス広告巡りの旅⑤

 
ボニー・アイドル
(第11号で「原稿料よりバイト料が多くても、ぼくは断然ライターだ!」執筆)

 
 
 
今回の旅では、2つの新たな試みに挑戦することにした。
1つ目は、乗るバス会社を変えてみたこと。
これまで乗った、「上石神井駅発大泉学園駅南口行き」「上石神井駅発西荻窪駅北口行き」「吉祥寺駅発中野駅行き」の3本はどれも「関東バス」が運行する路線で、ルートも中央線から北側を巡ることがほとんどだった。
同じようなルートを回ることでのマンネリ化を避け、この旅を始めるきっかけになった名作「ブティックみゆき」のようなバスアナウンス広告に出会うため、今回選んだのは、京王井の頭線久我山駅と中央線三鷹駅南口の間を走る京王バス「鷹64系統」。
この路線は前回の「吉祥寺駅発中野駅行き」のラストで、武蔵境自動車教習所に立ち寄った際に見つけた。
「連雀通り商店街」「仲町通り」「本町通り」と、終点・三鷹駅に至る停留所の周りは個人商店が立ち並んでおり、バスに流れるアナウンス広告も個性的なものが多いのではと期待がかかる。

そして、2つめの試みというのは、ルポの見せ方の部分。
これまでの4回は、バスに乗ってアナウンス広告を採取→採取したアナウンス広告を書き出す→路線を自転車で回って広告主を実地調査という、ほぼぼくの行動順に記してきた。
さすがに5回も同じ手法というのは芸がないし、読み物としても面白くない。
そこで今回は、アナウンス広告と実地調査の部分を一連の流れで紹介することに。つまり、広告アナウンスが流れる度にバスを降り、どんなお店か見て、またバスに乗り込むというスタイルである。
もちろん、路線バスは観光バスではないので、停留所に着く度に客を降ろして、用を済ませるまで待ってくれるわけではない。調査自体は前回までと同じ。要は、路線バスのルートを観光バスで回ったらこんな感じになるんだろうなというバーチャル原稿である。
ではさっそく、スタート地点である久我山駅前のバス停に行ってみよう。
 

 
7月25日(金)の15時50時分、久我山駅から三鷹台団地、日本無線経由、三鷹駅南口行きのバスに乗り込むや、さっそく最初のアナウンス広告が流れる。 注・この時点で広告出稿主の名称はカタカナ表記
「次は、久我山三丁目、久我山三丁目でございます。カクタ整形外科は平日9時から19時半まで、土曜・祝祭日は17時まで診療。三鷹駅南口より徒歩7分、バス停北浦から徒歩2分です」
一発目がはるか先の停留所「北浦」近くとは。いきなりお預けを食らう。

アナウンス広告がなかった「御嶽神社」を出発したところで、やっとバス停近くで経営している出稿主が放送される。
「次は、東牟礼、東牟礼でございます。家族葬から社葬まで宗派を問わずシンプルで使いやすい対応。ジュリョウ会館はこちらでお降りください」
たまたま右側の座席に座っていたことが功を奏し、進行方向右の歩道に「100m先を右に曲がって4件目」と大きく書かれた看板を発見。「寿量会館」は案内通りの場所にあった。

①-
 
写真を撮り、バスに乗って旅を再開。すると、すぐに次のアナ広がかかる。
「次は、真福寺、真福寺でございます。総合内科、消化器内科、循環器内科、糖尿病内科、皮膚科、整形外科のミタカ病院は日本無線下車徒歩2分です。整形外科では脊髄、骨粗しょう症、膝、肘、関節の痛み、リュウマチなどの治療も行っています」
「日本無線」は4つ先の停留所なので、またしてもお預け。
営業先のはるか前に放送というスタイルはこの路線が特別そうなのか、それとも京王バスのアナウンス広告が総じてそうなのか。
そもそも、アナ広を別の停留所で流すことにメリットがあるとは思えない。今乗っているバスもそうだが、バスの乗客のほとんどはジジイ&ババア。つまり、1分前に食った昼飯のこともすでに忘れているような人たち。そんな客に4つ先にある病院の場所を覚えておけとは酷な話である。

疑問だけが残った「真福寺」を出発するや、次のアナウンスが流れる。
「次は、三鷹台団地、三鷹台団地でございます。インプラント治療はCT、オぺ室を完備したイタヤ歯科クリニックへご相談ください。認定医による確かな診断、手術、保証を行ってございます」
あれ? 歯科クリニックがどこにあるのかの説明がなかったな。普通、「バス停前」とか「バス停から徒歩1分」とかの説明があるもんだけど。
本当はすべての広告出稿主の場所は実地調査に向かう前にホームページなんかで把握済みなんだけど、あくまで乗客の立場からサービスの内容にクレームを入れてみる。
で、「いたや歯科クリニック」はバスを降りて、人見街道を挟んで向かい側に難なく発見することができた。

②-
 
再びバスに乗り込むと、すぐに次のアナウンスが。
「次は、西ヶ原、西ヶ原。お子様からお年寄りまで、目のことならお気軽にご相談ください。アサカワ眼科前でございます」
「あさかわ眼科」は、「いなげや」の真ん前に立っていたバス停の向かいに発見。クリニックの前が空き地になっていて、「売地」と書かれた看板が立っていたので心配したが、診療はその奥のビルで行われている様子。

③-
 
先ほど生じた疑問、「営業先のはるか前の停留所でアナ広を流すのは意味あるか問題」も、次の「三鷹市立三中」の後に流れたアナウンスで解決した。
「次は、日本無線、日本無線。ミタカ病院前でございます」
ちゃんと最寄りのバス停前でも放送するのね。2ヵ所分の広告費を払っているのかはどうかはさておき、丁寧な仕事だ。
で、三鷹病院は日本無線のひとつ手前の路地を入ったところに発見した。

④-
 
バスは人見街道から連雀通りへ。「下連雀」「連雀通り商店街」「南浦」と、3つ連続でアナウンス広告なし。商店街を通る路線はアナ広も多いのではと思っていただけに残念だった。
それに、下連雀には太宰治の旧宅がある。点在する太宰の縁の場所がアナウンスされるのでは期待していたものの、その気配もなくバスは通り過ぎた。
次の「仲町通り」でやっと広告が流れた。しかし——。
「次は、仲町通り、仲町通りでございます。カクタ整形外科は骨粗しょう症診断、交通事故後遺症、スポーツ外傷、外反母趾などの治療を行っています。バス停北浦下車が便利です」
この旅で最初にアナウンスされた「カクタ整形外科」である。しかも最寄りではなく、「北浦」は1つ先の停留所。またしても先走りやがった。カウパーか、てめえは!

バスは「仲町通り」を出て、三鷹駅へと伸びるさくら通りへ。
「次は、北浦、北浦。歯の検診、入れ歯のご相談を承ります。日曜も診療、サクラデンタルクリニック前でございます」
ひょっとしたら北浦でもカクタ整形外科の広告が放送されるのでは、と思っていたものの、実際かかったのは歯科クリニックのみ。
では、カクタ整形外科の先走りは広告のルール上のことなのだろうか。
ぼくはかつて、とある業界新聞社で働いていた。なので、新聞、雑誌に広告を掲載するとき最低限守らなければいけないルールがあることは知っている。最も気をつけなければいけないのは、同じ紙面に競合他社の広告を載せてはいけないということだ。
つまり、ドコモの半5段広告の隣にソフトバンクの広告を載せてもいけないし、「アナ雪」の隣に「マーニー」の広告を載せてもいけない。長渕の隣にサザンの広告を載せても、山口組の隣に・・・、もういいか。
つまり、最寄りの北浦ではカクタ整形外科にとって競合の整形外科が先に広告を出していたので引き下がったのではと思ったのだ。しかし、実際、北浦でアナウンスされたのは、競合ではない歯科クリニック。
謎を抱えたまま、バスを降りて停留所から一本手前の路地を入ったところに「角田整形外科」を発見。かなり手広く診療しているらしく、看板には「胃腸科」「整形外科」に加えて「歯科」の文字も。つまり、競合他社を避けるためというぼくの予想は当たらずとも遠からずだったのだ。
その競合相手、「さくらデンタルクリニック」はクリニックの名前になっているさくら通りの交差点左に発見した。

⑤-
 
⑥-
 
バスはいよいよ駅前のメインストリートへ。
「次は、本町通り、本町通りございます。眼鏡、コンタクトのことならご購入後も安心のメガネライフ三鷹店は、三鷹駅前三菱東京UFJ銀行隣です」
「不動産のご売却、ご購入のことなら、三鷹駅南口前、タイセイ建設グループのタイセイユウラク不動産販売までお気軽にご相談ください」
大詰めを迎えて、初めて2件のアナウンスが流れる。結果から先に行ってしまうと、終点の「三鷹駅南口」ではアナ広がなかったので、この旅はこの2件でラスト。
まず、「メガネライフ三鷹店」は駅ナカのデパート「atre」の向かい、UFJ銀行の右隣にあった。そして、なんと、「大成有楽不動産販売」はその右隣に発見!

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⑧-
 
探す手間が省けてよかったわいと胸を撫で下ろし、今回こそ広告料金や費用対効果について不動産運用の話でもしながら聞き出したかったのだけれど、その時のぼくには体力も家はおろかダンボール代すらなかったのである。

(続く)
 
 
 
-ヒビレポ 2014年8月6日号-

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