こしょこしょ話 第6回

sumimoto

辞書遊びワークショップ

 
住本麻子
(第16号で「東京駅でプチ帰省」を執筆)

 
 
 
もう随分、紙の辞書を触っていない。自分のヒビレポ原稿を見て気がついた。何かというとググる、ググる。もう一生ググってろよ……と我ながらがっかりした気持ちになる。しかしそう思うのは私だけではないはず。だって速い。量も膨大。その上スマホなんかすこぶる軽い。難しい言葉や専門用語も、一瞬で出てくる。これは紙の辞書に勝目はない。前回(第七回「ペーパーズ」をご覧ください)あれだけ「紙大好き!」と言ったけど、辞書まではかばいきれない。無機質で物語もない。可愛くもかっこよくもないし、人のあたたかみだって感じられない。紙辞書、ジ・エンドである。

しかし辞書には辞書の、遊び方があったはず。小学生の頃、卑猥な単語にマーカーを引くなど、我々はいにしえの昔から辞書と戯れてきた。インターネットで検索するのだって楽しいけれど、紙の辞書ならではの要素で、私がたーんと私が遊んでやろう。

辞書と言えば分厚いのが特徴だ。一般的な国語辞典でも千ページはある。そしてただただ、たくさんの言葉が無造作に並んでいる。五十音順というと大した秩序の中で整理されているようだが、「うんち」と「運試し」が隣り合わせになったりしているところに愛嬌がある。字面は多少似ていても、意味は大幅に違うものが平然として並んでいて、なんだか一触即発という感じ。見ていてハラハラするのは私だけだろうか? ちょっとスリリングじゃないか。パラパラとめくって見ただけでも、面白そうなのがたくさんある。


 
「パズル」「外れ」
「御涙」「おなら」
「パンケーキ」「反撃」
「犯罪」「万歳」
「荼毘」「タピオカ」

「パズル」の次が「外れ」だんて、ちょっと洒落ている。「御涙」のすぐ横で「おなら」が茶化す。「パンケーキ」の「反撃」。「犯罪」「万歳」(※ダメです)。「荼毘」と「タピオカ」は全く違うようで、どことなくアジアンな雰囲気を共有している。などなど、ひとりで楽しくなってしまったけれど、これは二人以上でも遊べそうだ。

〈ミスマッチ単語バトル〉
①まず一人一冊ずつ辞書を用意します
②「せーの」で各々適当に辞書のページを開きます
③開いたページの中から隣り合うミスマッチな言葉をチョイス
④よりギャップのある組み合わせを選んだ人が勝ち

この遊びは判定基準がややあいまいなのが難点だが、人数が多ければ多いほど楽しめそうだ。辞書遊びワークショップ。新明解や岩波の次の版が出たときなどは、ぜひ書店やイベント会場でやってほしい。私、行きます。

「バトルだなんて、はしたないワ」という紳士淑女の方々には辞書占いがおすすめ。今のところ日本では私くらいしか出来る人がいないと思うのだが、よろしい、今日はお手本がてらひとつ占ってみましょう。

〈辞書占い〉
①今日は8月7日なので807ページを開きます
②807ページの四隅の単語を使って文章を考えます「総別」「僧帽弁」「奏聞」「爽涼」
③難しい言葉は意味を補います
 
photo1-
 
今日の運勢は・・・
総じてさわやかで涼しい一日になりそう。「僧帽弁」と天皇に申し上げると吉☆

ちなみに「僧帽弁」とは、「心臓の左心房と左心室を仕切る弁膜(『新明解国語辞典 第六版』807ページより)」のこと。ラッキーカラーやラッキーナンバーはもう古い。ラッキーワードは僧帽弁です。「天皇に申し上げる」のは難しいかもしれないけど、天皇にも言えないようじゃ好きな子に告白なんてできないよ!

……やってみてわかったけど、この占いは占う方も占われる方も難易度が高い。「爽やかで涼しい一日になりそう」ってこれは占いじゃなくて天気予報だ。そして「僧帽弁」。占いに出てくる言葉じゃない。「奏聞」は「天皇に申し上げる」という意味だけど、多分誰も実行できない。ノリで「吉☆」と書いてしまったけど、嘘嘘、どう考えても警備に引っかかってアンラッキーなので、どうか実行しないでほしい。もうちょっと修行してから出直してきます。

あと三つくらい辞書遊びのヴァリエーションがあるのだが、予想以上に占いにエネルギーを消耗したので今日はここでおしまい。久々に言葉のエネルギーに真正面からぶつかった気がする。このヒビレポを読んで何か面白い辞書遊びを思いついた人は@ask_smmtのツイッターアカウントにDMなどください。この連載の終わりの方で紹介します。
 
 
 
 
-ヒビレポ 2014年8月7日号-

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