ぼんやりクッキング  第2回

サングリータ

カルロス矢吹(第2号で「尿ボトルとコンドーム」執筆)

 昨年4月に、メキシコの首都メキシコシティを訪れた時のこと、現地在住カナダ人ピエールと一緒に、彼の家の裏手のバーに行った時のことだ。
「オレもメキシコに来て初めて知ったんだけどさ」とピエール。
「テキーラはどのバーも市販のものを取り扱っているけど、チェイサーのサングリータは店によって味が違うんだよね。だからどの店行くかは、美味いサングリータを出せるかどうかで決めてるんだ。」へぇー。
 テキーラは飲めないワケではないが、決して好んでオーダーする飲み物ではなかった。要するに、あんまり美味いと思っていなかった。なので、当初は現地でもビールばかり飲んでいたのだが、「まぁ飲んでみろって」とピエールに促され、「テキーラ・イ・サングリータ・ポル・ファヴォール!」とオーダー。そして出てきたのは、テキーラと同じ分量の、キンキンに冷えたトマトジュースであった。
「テキーラ一気に飲んだ後、サングリータも一気に飲み干すんだ!」キュキュッ!と素早く二杯続けて飲み干し、お手本を見せてくれるピエール。じゃ飲んでみるか。キュキュッ!
 なんだこれは?テキーラを飲み干した後の、あの嫌な胸焼けが一切ない。「そうだろ?」うん、ありがとうピエール。サングリータはただのしょっぱいトマトジュースではなく、その中にほんのりと「甘み」、そして「コク」のようなものもあった。日本では塩とライムで飲んでいたが、あれは「塩気」と「酸味」のみで、一般には「喉を守る」役目しか果たさないと言われている。けれど、サングリータがあると悪酔いもしない。2・3杯くらいなら平気でスイスイとテキーラを放り込める。まぁ、それを悪酔いと呼ぶのかもしれないが。
 僕がメキシコにいたのは4月だが、真夏でも夜は冷え込む、高地の多い環境のメキシコで、一気にアルコールを摂取することが出来るテキーラは、メキシコ人にとっての「熱燗」の様なものなのかもしれない。そして、それを支えるサングリータ。この二つのお蔭で、僕とピエールは毎夜冷たい風の吹くメキシコシティを、半袖半ズボンで闊歩していたのでした。

 

 

 さて、それでは今回もこのサングリータを思い出して作ってみよう。テキーラは「酒のカクヤス」で一番安かったメキシコ産のものを調達。サングリータの材料はコチラ。

 トマトジュース テキーラショットと同じ分量
 ウスターソース ちょっと
 砂糖 小さじ1
 ライム 1/3
 氷 1個

 たまたま家に輸入物のしょっぱいトマトジュースがあったのでそれを使ったが、市販のトマトジュースを使う際は塩も用意した方がいいでしょう。「コク」と言えば「味噌」なのだが、流石に味噌は使ってないだろうと思いとどまり、洋風にウスターソースで「コク」を出してみる。後は砂糖で「甘味」を、ライムもきっと使ってるだろうと思い絞ってみる。このままだと濃いので、冷やす意味も込めて氷も投入。ぐるぐる混ぜて、ひとまず完成。早速テキーラをキュ、続けてサングリータをキュ!
 ・・・、胸焼けがする。おかしい、何かが違う。というか何かが決定的に足りない。これはサングリータではない。ただの「ケチャップ味の飲み物」だ。後使っていないものは・・・「辛味」だろうか?
 という推測に基づき、今一度レシピを再考。

 トマトジュース テキーラショットと同じ分量
 オイスターソース ちょっと
 砂糖 小さじ1
 ライム 1/3
 タバスコ 数滴
 コショウ 少々
 氷 1個

 タバスコとコショウで辛味を演出、そしてウスターソースを使うとケチャップに味が近づくので、オイスターソースに鞍替え。これらをグルグルして・・・、テキーラをキュ!続けてサングリータをキュッ!
 うむ、これだ!テキーラの苦みがスッと消えていく。多少失敗したが、これは間違いなくメキシコで僕が飲んだサングリータであり、テキーラだ。やはり足りないものは「辛味」であった。大量に作るなら、トマト缶をミキサーにかけてもよいかもしれない。

 今回も見事ガッツポーズとともに終わることが出来たが、ここにたどり着くまでの試行錯誤でのテキーラの摂取量は、翌日の仕事に大きく影響を及ぼす量であったことを最後に書き添えておきます。サングリータがあろうとなかろうと、お酒はほどほどに・・・。

 来週は、韓国を思い出します。

 

-ヒビレポ 2012年10月11日号-

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