1980年の山の音、江戸時代の猫  第2回

山下陽光(第7号で「ご近所のみなさま、お騒がせしております!」執筆)

 

 こんにちは山下陽光です。さて、今回はガリ版です。
ガリ版って何だ?
プリントごっこの、お祖父ちゃんのような存在で、
武骨でカッコいい、電気すら使わない印刷機です。
以前、レポでもガリ版特集があって感激しました。
さて、このガリ版。原紙というロウを塗った紙の下にヤスリを敷いてその上から鉄筆(てっぴつ)でガリガリと削っていくんですが、そのガリガリという音からガリ版という名前がついたとか。
削った所をインクをのせたローラーで転がすと、
なんと!印刷出来てしまう優れもの。
ガリ版すなわち謄写版と言うんですが、
この謄写版がとにかく好きで好きでたまんないんす。ガリ版を好きになったきっかけは、俺の人生を台無しにしてくれた名著「日本語大博物館」紀田順一郎著のガリ版ページを読んで、
見て、コレは凄い!!とひっくりかえりました。
何が凄いのかと言うと、ガリ版というのは、簡易印刷で、安いポンコツの象徴のような扱われ方をしてて、今で言うならコンビニのコピー機のような存在で、ビラや簡単なお知らせ等に重宝されたんですが、所詮ガリ版でしょ、という世間の印象に、このヤロー!ガリ版ってのは凄いんだよ!と言ってたのが、ガリ版の神様こと草間京平。この草間京平の作品が日本語大博物館に載ってるんですが、コレが凄い。
本来ガリ版は一色刷りで、簡単にササっと出来るものなのに、草間京平は世界地図や浮世絵等を40版も使って深い色を再現した。
今から10年以上前に水戸の銀行で草間京平展があって、実物を観たんですが、
感動を通りこして、わけわかんねぇという印象で、
目の前にある40版も使ってガリ版で作ったとはとても思えないブツでした。
で、とにかく草間京平についてはもっともっと書きたい事があるんですが、今回はガリ版の神様、草間京平に大きく関わってしまった方々の細部をガン見して、
【1980年の山の音、江戸時代の猫】のような、
考えてもみなかったけれど、
覗いてみたら大変な事になった
お一つをご紹介! では、いってみよう。

もうずいぶん、ずいぶん昔に北尾トロさんが西荻の喫茶店で店番をしながら古本を売るという期間限定SHOPをやっている時に、面識ゼロでお邪魔して、ガリ版について調べてるんですが、ガリ版の本が売ってるようなお店知らないでしょうか?
と聞いたら、
神田にあるキントト文庫を教えてくれました。
まだ雑居ビルの二階にあったキントト文庫に初めて入ったら、あるわあるわで大感動!
ギャーギャー喜んでたら、
うるせーと怒られた。
「謄写印刷新教本」宮川良著を購入。つまり、謄写版(ガリ版)のやり方マニュアル本なんですが、扉絵が、ガリ版やりまくるとこんな印刷も出来るようになるよ!という美しい絵がたくさんあるんですが、それをガリ版学校の校長先生の宮川良が出した本で、ガリ版研究は思いついたら火がついたように研究して、勝手に落ち着いたり、また火がついたりを繰り返しながら続いているんですが、この本の著者、宮川良はガリ版の神様草間京平を顧問にして学校を作った方で、そんな事は覚えてたり、忘れてたりしてたら、
高円寺の古本酒場コクテイルのボスが、「そう言えば、ガリ版好きって言ってたよね」と言って一冊の本をペロンと出してくれました。

 

【画像1】

 

どうでしょうか?
右がキントト文庫で買った本。
左がコクテイルさんから頂いた本。

まず、大きさが違う。右が少し大きい。初版マニアとかいるのはわかるんですが、本というのは基本的にまったく同じ物だと思っていたので、えっ?とバランス感覚が崩れ落ちていきました。
この本は出た時期が違うんだろうと後ろをめくってみると、
昭和14年1月10日 3版
と両方に書いてある。

えっ?同じ時に出て大きさが違うって何よ?
と思い気になって読みくらべしてたら、

 

【画像2】

 

画像2の下の本は、↑に一回目、二回目、三回目
と書いてあるが、上の本には
何も書いていない。
しかもよく見たら、筆跡がまるで違う。
ガリ版は手書き原稿がそのまま製版されるので、いわゆる活字ではなく、人間が一文字ずつ書いているので当然なんだろうけど、この本は三刷り目の本で、筆跡が二種類ある!
なんだか凄くないっすか?

ガリ版は活字に近づく為に文字の癖を無くしていかに活字に近づけるかという教育だけれど、
どうしても、その人らしさが出てしまい、
目に優しい字に見える。しかし書いてる本人は、
コレは活字っすよ!という気持ちで書いてるから、
変なバランスが出来る。
昨今の手書き風のフォントとは違い、チョロ間違いの個性が勝手に出てしまうところに「たまんねぇよ」と言いたくなって酒飲みたい気分になりますね。初回限定版にはDVDが付いてるとか、表紙が三種類あるとかの消費ヨロシクな売り方ではなくて、本です‼と真正面から売ってる物を見比べてみたらコレがまたまるで違うじゃねぇか!魅力しかかんじねぇぞこのヤロー!
で、おそらくこの宮川良の謄写印刷新教本は、
日本謄写芸術院の卒業製作として、学生が最後の大仕事として耕筆したのではないかと思っております。

と、思って、そう言えば発行所である日本謄写芸術院の住所をみると、東京市淀橋区西大久保1-411と書いてある。
淀橋区?西大久保?よくわかんねぇけど、大久保図書館に行ってきました。
昔の地図を見ながら、西大久保1-411を探して、
現在の地図と見比べる。
この辺りの比較作業がたまらなくて、過去と現在が立体的に繋がっていく感覚。

 

【画像3】

 

 

【画像4】

 

明治通りと文化センターが交差したあたりの
カップヌードルの日清食品の本社ビルの向かい辺りに、かつて、宮川良が日本謄写芸術院をやってた場所だ。興奮気味に図書館を後にして、
明治通りを自転車るんるんで現場に向ってたら、
なんとなんと、プリントごっこでお馴染みの理想科学工業の新宿支店がある。
リソーはリソグラフという簡易印刷機を作ってる会社で、元々は謄写版から始まった会社だったはずだ。と思ったらもうコンチャース!と入りこんで、
理想科学さんのこの支店はいつ頃出来たんですか?
と聞くと30年程前だとの事。あれ?関係なかったのかな?と思い、宮川良の本を取り出して、この辺りなんすよ~と言うと、理想が出来たのが1947年(昭和21年)とのことで、何の関係もなかったけれど、
現在もリソグラフでレトロ印刷が健在で繋がっていて嬉しい。印刷のご要望は当社を!と会社案内と社報の理想の詩を頂く。この理想の詩は季刊で出てて興味深い記事多いので、理想スポットに行くと入手できます。富士山を描いて48年、銭湯絵師 中島盛夫さんの記事や日本手話研究所 所長 高田英一さんの記事などあります。

さて、謄写、謄写、ガリ版、ガリ版と言いながら
日本謄写芸術院があった現場に行ってみたら、
ラブホになっとるやんけ!

 

【画像5】

 

ラブとガリの接点は見つけられなかったけれど、電信柱に貼られた頭金0円の物件広告の印刷がまさにリソグラフで刷ってあって、うーんしっくり。

あっ、新宿と言えば、成田君という友人がやってるイレギュラーというインフォSHOPがある。ココは世界中から集めたジンやら、なんだかよくわからないモノを集めたお店で、成田君がオランダに行った時に、やんちゃ連中がリソグラフで作ったブツがとても素敵で、ソレを見せてもらおうと、急遽イレギュラーに行ってオランダのリソグラフ作品を見せてもらう。

 

【画像6】

 

 

【画像7】

 

この多色刷り凄いなぁ。
今回のガリ版特集
【1980年の山の音、江戸時代の猫】いかがでしたか?
一体どこが山の音で、江戸時代の猫なのかわかりませんが、
注文する必要のない所をガン見する事でなにか見えてくるような気がします。
そんな事をやりまくりたいなぁと思ってた矢先にヒビレポの執筆依頼があってハリキリ長文になってしまいました。

こんな感じになってくのかどうか、わかりませんがワクワクしております。
で、こんな感じの発見&行動みたいな事を、やるので、以下告知マン!

オトトイの学校で一日講師やります。
【山下陽光の「今日はググるな」すきまメディア論】
2012年10月28日 14時00分~
受講料: 1,000円
渋谷です。
詳細
http://ototoy.jp/school/event/info/58

オトトイの学校でやる事は無茶苦茶面白い事をやるので、ご期待下さい。
プレ授業として、事前にインターネット内で無料無差別授業を突然開始するので、ご期待アレ?

 

参考サイト

日本謄写芸術院
http://www.showa-corp.jp/month/mats/togei.html

Irregular Rhythm Asylum
(成田君の店)
http://irregular.sanpal.co.jp/

 

-ヒビレポ 2012年10月8日号-

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