今朝はボニー・バック 最終回

bonnie

学童野球狂の詩

 
ボニー・アイドル
(第11号で「原稿料よりバイト料が多くても、ぼくは断然ライターだ!」執筆)

 
 
 
今からちょうど20年前、小学6年の夏休みには苦い思い出がある。小学4年のときから3年間打ち込んだ野球部員としての最後の試合をぼくのエラーで落としてしまったからだ。
孫の晴れ舞台とあって、その日スタンド席には両親と共にばあちゃんも応援に駆けつけていた。試合後、家の玄関先で落ち込んでいる孫にばあちゃんがかけた言葉は、
「あんなにうだっこ歌うんだなぁ」
だった。
うだっこ? ああ、補欠がベンチ上のスタンド席で歌っている応援のことか。
ぼくら選手にとっては日常的なものだったが、学童野球の観戦初体験のばあちゃんにはプレイボールからゲームセットまでの間、味方の選手がヒットを放つたび、三振を奪るたびに巻き起こる大合唱が新鮮だったらしい。
その時は、「ンなことよりも、普通、このシチュエーションで最初にかけるのはなぐさめの言葉だろ!」と思ったが、その数ヶ月後、中学に上がり野球部に入って補欠に逆戻りしたときにぼくが最初に思ったのも、
「中学野球は歌わなくてもいいんだ」
だった。

小学校の学童野球と中学野球のいちばんの違いは、補欠が応援歌を歌うかどうかではないだろうか。
中学野球の応援は、それ自体部活として活動している応援団が担う。なので、補欠は試合中先輩の目を気にしながら中腰のまま「声出し」に徹していればいい。
この声出しも同じ応援には違いないが、「歌」ではない。
例えば、味方チームのバッターが四球を選んだとすると、中学野球では「ナイッセン、ナイッセェン!」と選球眼の良さを褒めたたえるかけ声がベンチのあちこちから飛んだのち、「ピッチャー荒れているよぉ!」とヤジのおまけが入る。一方、学童野球では、「♪よく見たよく見た、ボニー」と節付きの大合唱。
なるほど、たしかにばあちゃんじゃなくてもこの統制が取られた大合唱は学童野球初心者の目には異様なものに映るのかもしれない。
てなわけで、学童野球では今でも歌われているのか? そして、ぼくの現役時代と歌の内容に違いはあるのか? を調べに、9月14日(日)、杉並区の富士見ヶ丘球場で開催された「第37回学童軟式野球秋季大会」を観に行った。
朝の10時から夕方4時までベンチ前にへばり付き、ICレコーダーで採取した応援歌を紹介したい。URL先は、音楽共有サービス「soundcloud」にアップした実際の音源。屋外での録音なもんで音質の悪さは勘弁してください。
 
①-
 

 
「これから始まるpart.1」

毎回、味方チームの先頭バッターが打席に入るや歌われる、学童野球応援歌におけるスタンダード中のスタンダード。結論から言うと、ぼくの現役時代と変わらず歌われていたのはこの曲しかなかった。
歌詞は以下のとおり。
♪これから始まる○○(チーム名)の攻撃、何点入るかわからない
1点2点3点4点5点6点7点8点9点、コールドだ
かっとばせボニー、ボニー、ボニー!

「いつものバッティング」

味方チームのバッターが打席で緊張していたらこの曲を歌って励まそう。「これから始まるpart.1」もそうだが、後半、「♪一塁打、二塁打、三塁回って本塁打」と横溝正史風数え歌になっていくのも学童野球応援歌の特徴のひとつ。
♪いつものバッティング(ヘヘヘイ) いつものバッティング(ヘヘヘイ)
い・い・いつものバッティング(バッティング)
センターバック(センターバック) ライトバック(ライトバック) レフトバック(レフトバック)
一塁打(ヘイ) 二塁打(ヘイ) 三塁回って本塁打(オオー)

「ナイスカット」

味方チームの打者がポール際に切れる大飛球だろうがチップだろうが、ファールを打ったらこの曲。歌詞とは裏腹に、学童野球のレベルでは意識してボールを「カット」している打者はほとんどいない。
♪ナイスカットナイスカット ホームラン前のナイスカット
いい当たりいい当たり い・い当たり

「今の盗塁見たか」

学童野球では、走者がよっぽど鈍足で相手チームの捕手がよっぽど強肩でない限り二盗は当たり前。三盗もバンバン決まる。なので試合中ヘビロテでかかる曲。
♪今の盗塁見たか(見たよ) 見たか(見たよ)
××(不明)からこれができるんだ(ヘイ)
当たり前(当たり前) 常識(常識)

「まだ1アウト」

攻撃中、一死を取られたときはこの曲を歌って悔しさをごまかそう。当然、「まだ2アウト」もある。
♪1アウト1アウト まだ1アウト
まだいける まだいける まだいける

「ラッキーラッキー」

四球をもらったときや相手チームがエラーしたときは、「刑事貴族2」の水谷豊のように「ラッキー」を連射しよう。
ただ、マナーだなんだとうるさくなってきた学童野球でここまで相手チームを馬鹿にした応援歌は珍しい。ぼくの現役時代には、味方チームの守備の鉄壁ぶりを褒めたたえる「♪ピッチャーキャッチャー内野外野、鉄の壁〜」という歌があり、その逆バージョンで相手チームのザル守備をけなす「♪ピッチャーキャッチャー内野外野、便所紙〜」というヤジ歌もあった。が、当時ですら汚い言葉を使うと審判団から注意されたのに。しかし、前述したように、なぜか中学野球になると少々のヤジぐらいは当たり前になる。
♪ラッキーラッキーラッキーラッキー(ラッキーラッキーラッキーラッキー) ラッキーラッキーラッキーラッキー(ラッキーラッキーラッキーラッキー)
もうけたもうけた こりゃまたもうけた ラッキー
ありがとサンキュー

「ドカンと一発」

ここからは有名曲の替え歌を紹介。これは曲名、歌詞、メロディからすぐに真心ブラザーズの「どか〜ん」が元ネタであることがわかった。味方ピッチャーを励ます「ドカンと一球」もある。
♪ドカンと一発 △△(選手名)打ってみろ
場外破りのホームラン

「夏祭り」

味方打者を鼓舞する応援歌。少年たちの元ネタはJITTERIN’JINNではなく、たぶんWhiteberry。「♪空に消えていった〜」からの転調はオリジナル。
♪君がいた夏は遠い夢の中 空に消えていったボニーのホームラン
いい当たり いい当たり いい当たり いい当たり
パラッパラ パラッパラ パラッパラッパ パラッパラ
オオー

「狙いうち」

監督の声がうるさくて、ところどころしか歌詞が聞き取れず、文字起こしした部分も間違ってるかもしれない。「♪打てよ打てよ」の当たりから元ネタのメロディに突入する。
♪パーパパラパパーパ パーパパラパパーパ
パーパパラパパーパ パーパ パー
狙いうち 燃えろ
打てよ打てよボニー ××××(不明)ホームラン
君ならきっと打てるはず 外野の頭を越えていけ
(繰り返し)

いかがだったろうか。採取した音源はこれ以外にもあるので興味を持った方はsoundcloudのぼくのページ「https://soundcloud.com/bonnieidol」でお楽しみください。
ぼくの感想はというと、改めて、というかほとんどが初めて聴く歌だったけど、小学生とはいえ、よくもまあこんな屈辱に甘んじてたなというもの。なんで野球部入って歌を歌わなきゃいけないんだ、と。
でも、屈辱的行為だからこそ、新米のペーペー部員には必要な通過儀礼なのかもしれない。そして、いつから始まったかは知らないが、この野球部員による応援歌というのはまちがいなく学童野球だけの文化だ。
替え歌編で紹介した「ドカンと一発」「夏祭り」のように年代によって取り上げられる曲も違うだろうし、地域によってもさまざまな応援歌があるだろう。
例えば、関西地方のチームに死球を与えてしまった日には「ぼてくり回したろか」系の歌詞がメロ付きで流れ、逆に沖縄だと相手チームから「なんくるないさ」系の島唄が贈られるような気がする。
いつか全国の学童野球応援歌を集めたコンピレーションアルバムを作りたい。
 
 
 
-ヒビレポ 2014年9月24日号-

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