初めまして津島ですけど、いい年なんで大人やってます。  最終回

tsushima

美容院での仕上がりに不満がある場合

 
津島千紗
(第16号で「探偵失格」を執筆)
 
 
 
 いよいよ今回、今季ヒビレポ最終回となりました。初めまして津島でしたけど、なんとなく私のことがわかってしまわれたかもしれません。
 
 今回の連載を始めるにあたり、周りの友人知人に「何を書けばいいかな」と相談したところ、「クレーム話がいい」というリクエストがなぜか複数あがりました。普段、私は、何かに不満がある場合、わりとすぐにカスタマーセンターなどに報告して改善を求めるタイプです。
 ちなみに、毎回文句ばかり言っているわけではなく、
「本当に美味しくて気に入っていつも買って食べているお菓子が、今日だけなんか味が違う気がするんですけど、何か作り方や原料が変わったんですか? もしかしたら自分の気のせいかもしれないんですけど・・・もしそうだったらすみません・・・いや、でも、いつもほんとに美味しくて、何度も何度も買ってるんで、気のせいってことないと思うんですけど・・・もしも味が変わったのなら残念なんですけどどうなんですかねえ?」
 などわざわざ電話して聞いてしまうこともたまにあります。めんどくさい人だと思われてますよね。すいません。ちなみに私は、別に普段おしゃべりでもないし、見た目から、よく知らない人からはおとなしい人だと思われていることのほうが多いんですよ。
 
 そんな私の、まだ友人もほとんど知らないNEW!な案件を今回お話します。最終的にはクレームになりました。美容院での仕上がりに不満がある場合、あなたはその場で言いますか? どうしますか?
 

 
 先週末、初めて行く美容院にパーマの予約をした。まず、先に断っておくが、私は日本の美容室でクレームを言ったことは今まで一度もない。一度だけ、大学生の時何を思ったかタイのバンコクのショッピングモールにある美容院でパーマをかけて、変なところ(襟足)を勝手に切られた上に、美容師がスナック菓子をボリボリ食べながらその手で人の髪をいじっているので、文句を言ったことならある。それだけだ。
 
 そもそも、この十年ぐらい、髪形が一切変わっていない。ロングヘアーのため、美容院に行っても
「傷んでる毛先だけ切って適当に梳いてください」
という指示しかしないので、別に変な髪形になりようがないのだ。カラーに関しても、別に特に希望はなく、「色が入って仕上がってからのお楽しみ」にしているところがある。髪の明るさの目安だけ伝えて「春っぽいピンクブラウンにしたい」とか「アッシュ系でお願いします」とかだいたいの色味だけ伝えると、あとは「へえ、こんなのもいいねえ」などと呑気にしている。そもそも私の髪は色素的に、何色に染めようとも結局しばらくするとなんかよくわからない赤みのあるオレンジっぽい黄色に最終的に勝手に必ずなるので、なんでもいいのだ。
 
 今回、十年ぶりぐらいにたまにはパーマを当ててみようと思った。地毛が「くせ毛風ゆるふわパーマ」風の天然パーマなので、やるなら派手にパーマにならないと意味がない。
 
 まず、予約時間の5分前にお店に着いたにも関わらず、ほとんど断りもなく「少々お待ちくださ〜い」など言われたまま、20分ほど待たされた時点で、短気な私はかなり苛立っていたことは認めざるを得ない。「あと1分待たされたら帰ろう・・・でもまた他のお店探して予約とかしてお店に来るのめんどくさ・・・」と思っていたところ、呼ばれた。
 そして、目の前に置かれた雑誌が全く私の趣味とは違った「MORE」や「AneCan」などの、妙齢の二十代後半OLが会社に行く服装のことやもう若くはない年齢のことを気にして読む雑誌を置かれたことも、気に入らなかった(これは、正直に言って変えてもらえばよかったので自分が悪い) 
「OLミオの一週間着回しコーデ」など読んでも仕方がない。
 
 担当の美容師は同世代かと思われるアラサー女性だったが、異常に声が小さく、他のお客さんが入ってきたときの「いらっしゃいませ〜」という声などが妙に小さかったことも、少し気が障っていた。
 
 というように、私がキレる前の伏線として、微妙に最初から苛立っていた部分はかなりあった。が、だからといって別に私は美容師相手にいきなりアナーキーな態度を取るほど非社会的ではないし、ごく普通にしていた。
 
 パーマは、ヘアスタイル雑誌を見ながら、髪の長さが同じぐらいのスタイルいくつかの中で一番ウェーブがハッキリしているものを、「こんなかんじで」と注文した。
「きつめでお願いします」とはっきりと何度も言ったし、美容師も「しっかりめですね」などと返事をしていた。
 
 私が十年ぶりぐらいにパーマをかける間、世の中の主流はデジタルパーマという、熱を加えて形状記憶するタイプのパーマに変動していた。それは初めてである旨も話していた。
 
 パーマの施術中は、雑談は一切なしである。別に、気が合うわけでもない相手にベラベラしゃべられても疲れるので、それは構わない。が、ここで、感じのいい接客をされていたら、おそらく、最終的にクレームになった場合でも私の態度は違ったと思うのだ。下手したら、ほとんど言わなかった可能性すらある。相手はちょっと不愛想なタイプだった。
 
 微妙に手が遅い気はしたのも少し気にはなっていた。なんか作業遅いよな・・・?といった具合で。そして巻き終わり、趣味ではない雑誌を読みながら(もう、流し読みなので読み終わりまくっていたが変えてももらえないまま)熱を加える時間が終わり、カーラーを取ってパーマ液を流して乾燥に入り、いよいよ仕上げに入ったときである。
  
 鏡の中の私にパーマがほとんどかかっていなかった。
  
 私は目を疑ったが、しばらく鏡を見ていた。え、どうしよう、全然パーマなってない。言ったほうがいいんか? え? これ、違うよな。絶対違うよな。え?え?
  
 ドライヤーをされている時間自体も異常に長く、やっぱりこの人仕事遅いわと思っていた。左側を美容師がドライヤーで乾かしている最中、終わったほうの右側を勝手に触って、手触りでもウェーブがかかっていないことを確認した上で、おそるおそる
「これ、かかってます・・・?」
 と非常に控えめに聞いてみた。美容師は
「かかってます!」
 と、今までの小声はなんだったのかと思うほどの大声を突然出し、私を驚かせた。
「え・・・これ、なんかあんまりかかってるように見えないんですけどかかってるんですかね・・・」
「かかってます!」
 美容師の一切譲らねえぞ、といった頑なな態度と、それに反して全然満足のできるパーマ状態でない鏡の私。だんだん苛立ちと焦りが私に出てくる。え、なんかこの人、強引にかかってるって言って認めないつもりだ・・・! その場できちんと伝えないとこのまま言い張られて終わることを私は恐れ、相手が認めるまで主張するという態勢に切り替えた。プランBである。
 
「いや・・・私、きつめのパーマって言いましたよねえ? 全然違いますよねこれ」
「はい。しっかりめっておっしゃっていたので細かめのロッドで巻いてますね」
「さっきの雑誌あったじゃないですか、全然あれと仕上がり違いますよね」
「ああ、あれは、雑誌なんで、撮影用にコテで巻いて仕上げてるって部分もあるんですよね正直。それに、髪質には個人差があるんで全く同じにはならないですね。それを考慮した上で近い状態にさせてもらうのが私たちの仕事なんです。わかります?」
「髪質が違うのはわかるし、私は別に、モデルと全く同じになるなんて当然思ってないですよ。そんなこと言ってんじゃないですよ。でもこれ、あのスタイルと全然違いますよね。同じにならなくても、似てすらないですよね。ていうか、私の髪質上、パーマかかりにくかったんですかね?傷んでるし、パーマかからなかったんですか?」
「そんなことないです。かかってます」
 
 私はいっそ、自分の髪質のせいにしてほしかったのだ。それだったら納得がいく。その時点で私はあきらめただろう。私のこのダメージだらけの天パの髪質ならしょうがないな、と思う。しかし、相手はかかっていると言って譲らない。
 
 たぶん、気の弱い人だったら、美容師から「かかってます」と言われたらあきらめていたと思うのだが、私のようなタイプに、相手に最初から食って掛かるような物言いは火に油である。
 
 パーマがかかっていないという主張を続ける私に対し「濡らすと、かかってることがわかると思います」なども言い出したため、
「それ、濡らしてかかってても、乾かしたらかかってなかったら意味ないですよね。街で濡らして歩くわけでも日常濡らして生活するわけでもないじゃないですか。濡らしてないとパーマじゃないって、それ、もう、失敗ですよね」
 と言うと、デジタルパーマの乾かし方についてあれこれテクニックを伝授してきた。
「ていうか、その乾かし方でずっとやってもらってますけど、パーマに仕上がってないじゃないですか。そもそもプロの人がこんなにここまですんごい時間かけて乾かしてるのにパーマになってないって、それ、失敗じゃないですか。私みたいな美容師じゃない人が自分で家でやったらどうなるんですかねえ」
 
 ここで、もう一度濡らして、もう一度違うやり方で乾かされるといったことが行われたがやはり希望通りのパーマがしっかりとかかっていると思えず、すでに不満を伝えてからかなりの時間が経過していた。もうひどく疲れたので、帰りたくてしょうがなくなっていた。
「ていうか、これでいいです、って言うしかないってことですよね。私がどんなに、これ注文通りじゃないって言っても無駄ってことですよね」
「・・・大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないけど、大丈夫ですって言うしかないじゃないですか! 大丈夫じゃないんですけど逆にどうしてくれます?」
 
 思い出してこれを書いているだけで疲れてきてしまった。(読んでる人も疲れてるだろう)
 結局、一週間以内にまた電話してくれれば、無料でお直しはさせていただく、ということは言われたが、それ、普通なことなのにやっとそれ言う?しかもそれ、めんどくさいなという気持ちでいっぱいだった。
 
 なぜ、これでパーマがかかってると彼女が言い張るのか理解できないが、お客さんはこれで納得できないと言っているのだから、早い段階で直すということを言ってほしかった。そうすれば、私はあんなにしつこく言わなかったのだ。
 
「てか、一切謝ったりとかってされてないんですけど、まあ、ご自身ではこれ失敗でもミスでもないって思ってるんですよね。だから謝らないんですよねさっきから」
 まで言ったところ、さっきまで強気だった相手が急激に弱った。二度に渡って洗われた挙句、さらに一度梳かして切られたりなどもあり、さらにパーマは伸びており、まったく納得いかない姿で帰ることになってしまった。
「もう一回やってもらうとしたら一週間以内ですよね。来週予定とかあるし来れないんですよね。ていうか、そもそも、もう二度とここ来ないと思うんですよね」
 
 私は決して無料にしたくてこんなクレームを言ったわけではなかったのだが、結果的に全額無料になった。別にそういうの、求めていたわけではない。後味の悪い結果となった。
 
 私としては求めていたのは
1. 早い段階で自分の髪質のせいにされる
2. 早い段階で謝り、一週間以内に直すなどの前向きな解決策を明示される
3. 早い段階で他の美容師や上司(店長)などを呼んできて現状を確認してもらった上で、第三者からの意見を聞き納得させられるか、上司から一週間以内に直しますと謝られる
などである。
 
 よく、クレーム対策で、「お客様のおっしゃることはもっともです。不快な思いをさせてしまい申し訳ございません」と最初に言う、というマニュアルがあるはずだが、もう、そのとおりなのである。それを言われた時点でこっちの気持ちは八割がた収まるのだ。
 最初から否定され、相手がああいえばこういう状態だと、「いや、違うでしょ」とこちらの怒りが収まらなくなっていくという一つの典型例である。クレームの心理など、しょせんそんなもんである。
 
 ちなみにパーマは、あの場では間違いなくかかっていなかったし、後からパーマが出るといった説明もなかったのだが、なぜか、翌日以降自分で洗って乾かすと出てきた。そういう意味で「かかってます」と言ったのか? いや、違ったよ?
 
 今からでもお金を払いに行った方がいいのだろうか・・・と悩んでいる。
 美容院での仕上がりに不満がある場合、あなたはその場で言いますか?
 
 
 
-ヒビレポ 2014年9月30日号-

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