MAKE A NOISE! 第42回

メリル・ストリープのお言葉(第1回をご参照下さい)に従い、まだ知れ渡っていない面白い映画をロンドンからMake a noise!
 

一人映画

 

山口ゆかり
(第16号で「どんなに幸せでも罪悪感と孤独感はぬぐえない」を執筆)
 
 
 
 昨年度の話題作『ゼロ・グラビティ』はご覧になりましたか。サンドラ・ブロックにジョージ・クルーニーときて3D。がっつりお金かかってます感に観る気をそがれましたが、まんまと感動させられたのでした。おいしい空気、清らかな水、地球に生まれてありがとう!多幸感に包まれ試写会場を後にした私は、危険ドラッグ要らずです。

 もう1本、こちらも感動作とされた『オール・イズ・ロスト〜最後の手紙〜』はご覧になりましたか。ローバート・レッドフォードが遭難者を演じるというのが、いかにも感動しそうですが、やっぱり感動したのでした。

 両作に通じるのは、ほぼ全編、画面にいるのが一人ということ。クルーニーは最初だけです。あとはずっとブロック一人きりですのでご安心を。なんだか、一人ぽっちで困難と格闘する映画が流行った昨年度。時代の閉塞感とか、そんなことなんですかねえ。
  
 そして、今回、ご紹介するのも昨年度の1本、トム・ハーディが一人きりの『Locke』。ブロックがいたのは宇宙、レッドフォードがいたのは大海原と、怖いくらいに広々でしたが、ハーディがいるのはシンとした夜間の車の中。閉塞感ここに極まれり。長距離を走りながら、ずっと車で一人。サービスエリアでトイレ行ったり、飲み食いもしないんです、少なくとも画面では。

 
 

 でも、これ、感動し損ねました。いえ、感動作ではないので、感動しないのはOK、最後に明るさを感じさせて終わる、くらいなとこです。明るさを感じないことはなかったのですが、明るくなってたまるか!という反発心がわいたのでした。
 画面上はハーディが運転しているだけのこの映画、興味をそがれないのは、ハーディが車から次々電話する会話のみで徐々に何が起こっているか明かされるからです。ネタばれに細心の注意を払い、奥歯にものがはさまったように反発心を説明します。

 タイトルのLockeは、ハーディ演じる男の名前アイヴァン・ロックから。タイトルにするだけのことはある、かっちょいい名前です。名前負けせずにかっちょよく、抑制の効いた調子で電話するのが、できる男の雰囲気プンプン。この冒頭あたりから、かっちょよさが私には裏目に出てます。すでに、こいつのこと、うっすら嫌いです。

 バーミンガムからロンドンにひた走るロック が電話する相手は、まず、バーミンガムの人たち。いわば残していく人たちにテキパキ指示を出すロックに、苛立ちがつのります。電話するうちに、指示を出すロックも無傷ではいられず、それどころか満身創痍の状況になっていくのですが、それはそれとして、主役はいつも旅立つ奴と決まっているのが腹立たしい。残されて、その人がいなくなった分の穴ぼこを感じつつ、それまでと同じ暮らしを続ける人は、いつだって脇役。
 時間は、仕事も終わって、ご飯も食べたし、さて風呂にでもつかるかという頃。その平穏を破って、電話攻撃しまくるロックに、もう、かなり共感しにくくなってます。こいつ、ロンドンに向かう理由によっては、ただじゃおかないぞ!

 ここまでの電話から、秘密の任務がなんたらとか、人類を救うザ・ワンとかいう話ではなく、あくまでも日常のドラマだとわかります。車の中だけなのに、背後のヒューマンドラマが見えます。そして、ロンドンの人との電話も混じり始め、だんだんはっきりする理由が、思ったとおり、ただじゃおけないのでした。
 そういう文句が出るかもしれないのは、ロックにもわかっているらしく、こいつ、言い訳を始めます。この選択をせずにはいられない、自分の生い立ちをモノローグでぶちこんできます。抑制の聞いた口調をキープして電話しながら、涙が一筋ツーッと頬を伝ったりします。ハーディ名演。
 
 そして、上記のように、明るさを感じさせるつもりらしい結末となるのですが、後に残された人を気にする私には、○○○もん勝ちかい!と叫びたくなる明るさだったのでした。
 私の腹立ちをよそに、上手い俳優と上手い脚本があれば、ミニマムな舞台で良い映画が作れる見本ともなって、高評価でした。
 この○にはまる3文字を予測できる方は、鋭いです。もうDVDも出ましたので、輸入版とかあるのではと思います。腹立つ私も映画として出来が良いのは否定しませんので、○○○が何か確認してみてください。

 今回はストーリーをなるだけ明かさないという拘束がしんどかったですが、次回は拘束されるのが商売だった人の映画から入ろうと思います。
  

 

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-ヒビレポ 2014年10月8日号-

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