MAKE A NOISE! 第43回

メリル・ストリープのお言葉(第1回をご参照下さい)に従い、まだ知れ渡っていない面白い映画をロンドンからMake a noise!
 

猪木のあれもフーディーニ?

 

山口ゆかり
(第16号で「どんなに幸せでも罪悪感と孤独感はぬぐえない」を執筆)
 
 
 
 イギリスの子どもが日本の子どもに、食べ物自慢しているのを見ました。
「イギリスにはポッドヌードルというのがあって、お湯を入れるだけで食事ができるんだ!すごいでしょ!」とか言ってるのに、日本の子どもは無反応。
 ポッドヌードルがどんなものかわからず、反応に困った?どんなものか知っている私、「日本にはカップヌードルというものが数十年前からあって、円筒形の容器にお湯を入れて待つのも全く同じ。ポットヌードルが真似たのです。味はカップヌードルの方が断然おいしいけど。そこから発展した各種カップ麺が日本にはあふれていて、今時、そんなものに感激するような人、いません」と、こてんぱんにやり込めてやりたい強い衝動と戦っていました。
 
 今回は私のおとな気無さ加減、ではなく、自分が初めて見てすごいと思ったものはそれが初だと思いがちだけど、そんなことは稀、たいがいはどこかで誰かが既に作っている(やっている etc)よね、という話です。

 あらためてそう思ったのは『Houdini』というテレビ映画を見たから。あれも!これも!フーディーニでした!
 フーディーニは、20世紀に入る頃、大スターだったマジシャン。自身の出演映画も、フーディーニを描いた映画もたくさんあります。私もいくつか見ていますが、今回のは前後編合わせ約4時間で史実をよく再現しています。さすがヒストリー・チャンネル。
 

 
 

 フーディーニを演じるのはエイドリアン・ブロディ。やけにパンツ一丁なシーンばかりで、ブロディの裸で魅せようとしてる映画かと思ったら、フーディーニのトレードマーク写真がビキニパンツ一丁、ボディ・ビルダーがよくやる前かがみで筋肉見せびらかすようなポーズ。100年前には、さぞかしインパクトがあったことでしょう。なんだ、それで人気だったのか。
 
 いえ、ビキニパンツなのは種も仕掛けもないところを見せるため、前かがみなのは手錠と足錠を鎖でつながれているせい。その姿ではなく、そこからの脱出がメイン。フーディーニが他のマジシャンと一線を画したのは脱出王と呼ばれたからです。大掛かりな脱出パフォーマンスに1世紀前の人は驚いたのでした。
 子どもの頃、文字通り、固唾を飲んで見ていた初代・引田天功の大脱出も、基はフーディーニだったんですね。

 昭和の日本までさかのぼらずとも、現代のイギリスにもネタモト・フーディーニがいました。ダレン・ブラウンという人気マジシャンです。
 もう何にでも好奇心丸出しの子どもではないので、今ではマジックもたいして興味ないです。それでも、ブラウンには喝采を送ったことがありました。霊媒師のところに乗り込んで種を暴いた時です。マジックで騙されるのはうれしくないですが、誰か亡くした人を騙す霊媒師の鼻を明かしたのは痛快でした。
 
 でも、これもフーディーニ。母親思いだったフーディーニは、亡くなった母と会えるのではと霊媒師に興味を持ったのです。映画では、母親らしい霊媒師の言葉に涙しながら、英語で話した霊媒師を偽者と暴く、となっています。
 フーディーニはブダペスト生まれで、家族でアメリカに渡った移民。アメリカに移り住んでからも、母は、生涯、英語を話さなかったのでした。

 この霊媒師がセクシー美女で、フーディーニを誘惑するも、きっぱりとはねつけられ、ブロディがかっこよく見えるシーンになってます。
 ガイ・ピアースがフーディーニを演じた『奇術師フーディーニ〜妖しき幻想〜』では、霊媒師といい仲になってしまいます。こちらはたいしたことない映画でしたが、霊媒師を演じたのがキャサリン・ゼタ=ジョーンズなので誘惑に抗えないのは納得。  
 このあたりは、記録にまで残らなかったりする部分でしょうから、映画は好きなように盛れますね。
 

 
 いずれにせよ、ドラマチックなフーディーニの人生ですが、最後がまたドラマ。白髪の見える年齢になっても、まだ脱出パフォーマンスを続けていたフーディーニは、ある時、足首を捻挫してしまいます。フーディーニは、そこらへんの人にお腹をパンチさせるパフォーマンスもやっていました。捻挫が癒えないうちにチャレンジに来た青年に、満足のいく体勢をとれないまま殴られたのがきっかけで亡くなっています。殴られてそのままではなく、痛みと高熱に耐えてステージを済ませてから、というのが泣かせます。
 このお腹パンチ・パフォーマンスって、そっくりアントニオ猪木がやってる、あれですね。猪木もフーディーニからヒントを得たのでしょうか。

 ともかく、完璧なオリジナルなんて、そうは無いということですね。映画にしても、パクった、インスパイアされた、真似た、言い方は様々ですが、これはあれだなと思うことがよくあります。名作が見たいなら、そんなものより、小津でも黒澤でもヒッチコックでも自分好みのを繰り返し見ていれば事足りるかもしれません。でも、それじゃ、つまらない。先人には敬意を払いつつ、せっかく同じ時代に居合わせたのだから、今の映画人の作品が見たいです。
 と、このくらい書けば、子どもに食ってかかろうとしたおとな気無いおばさんのイメージは払拭できたでしょうか。
  

 次回は、この5日に終了したイギリス最大のインディペンデント映画祭、レインダンス映画祭からの作品を力の限り応援して、若手映画製作者に温かい目を注ぐ心ある映画ライターのイメージ強化に努めたいと思います。

 

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-ヒビレポ 2014年10月15日号-

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