MAKE A NOISE! 第44回

メリル・ストリープのお言葉(第1回をご参照下さい)に従い、まだ知れ渡っていない面白い映画をロンドンからMake a noise!
 

子どもと動物、じいちゃん、ばあちゃんにはかなわない

 

山口ゆかり
(第16号で「どんなに幸せでも罪悪感と孤独感はぬぐえない」を執筆)
 
 
 
 まずは、前回予告のレインダンス映画祭からの1本『そして泥船はゆく』です。これ、アラの目立つ映画です。でも、チャーミングなので、愛でておきたいと思いました。
 昨年のお披露目以来、あちこちの映画祭でかかっているところをみると、各国映画祭選考委員の中にも愛でている人がいるんですね。

 アラからいきます。映画評論家ならずとも観た人誰もが指摘するであろう部分が、後半の展開。前半の良いペースから急転、まるで違う世界に。主人公の頭の中のことのようでもあり、早く覚めないかと待っていたら、そのまま終わってしまいました。あまりのことに茫然自失みたいな状態に置かれます。

 
 
 早く覚めて、戻って欲しいと願っていたのが、言うなれば、こたつの世界。前半じっくり描かれる主人公、中年にさしかかった失業中の男の日常です。ベースとなるのが茶の間で、こたつとお祖母ちゃんがいつもセット。
 このお祖母ちゃんが素晴らしい。こたつでちんまり丸くなっているお祖母ちゃんに、目が釘付け。赤ちゃんを見飽きないのと似た感じです。人は年をとると、だんだん子どもに戻って、最後は赤ちゃんみたいになっていくというのを、思いました。
 このお祖母ちゃん役を演じているのが、渡辺紘文監督の実際のお祖母ちゃん。撮影当時96歳で、タイミングといい、内容といい、ナチュラルすぎるお祖母ちゃんの台詞はアドリブだそうです。
 当初、台詞無しで眠っている設定だったお祖母ちゃん、目の前で台詞の応酬が繰り広げられると入っていっちゃった。それが面白くて採用したという監督、ナイス・ジャッジ!

 そのお祖母ちゃんのアドリブを拾って、「そうだよな、ばあちゃん」みたいに返しているのが主人公を演じる渋川清彦。憎めないダメ男を、コミカルかつ無茶しそうな危なさも漂わせて演じられるあたり、日本のパディ・コンシダイン(第13回をご参照ください)的役者さんでしょうか。

 よく、子どもと動物にはかなわない、といいますが、そこにおばあちゃんを加えたくなったのが『そして泥船はゆく』なら、おじいちゃんも入れたいのが『Charlie’s Country』。こちらは、10月開催ロンドン映画祭からです。

 このおじいちゃんは『クロコダイル・ダンディ』などにも出演したベテラン俳優デイヴィッド・ガルピリル。味わい深い顔だけで、説得力あります。今回の主演で、カンヌ国際映画祭ある視点部門俳優賞を獲得しました。

 ガルピリルが演じる主人公はアボリジニのチャーリー。狩りのための銃が、無免許だからと警察に取り上げられ、ならばと作ったお手製の槍も、危険物として取り上げられ、なすすべも無し。昔ながらの暮らしを続けているだけなのに、後からやってきた人々の文明的なルールでは、あれもこれも違法。 
 店で買うパック詰めされたり、加工されてるようなものは、チャーリーには「ほんものの食べ物」ではないし、病んだ仲間が運ばれる病院は「自分たちの場所ではない」。
 
 でも、無垢で純粋なアボリジニという描き方はしていません。ドラッグ・ディーラーを手伝ったかと思うと、ちゃっかり、それを追う警察にも良い顔したりで、なかなか隅に置けないチャーリーですが、居場所は狭まっていくばかりで…
 原始的かもしれませんが、おおらかで、自然の恵みを直に使うようなチャーリーの暮らしを見ていると、自分の暮らしがフェイクに思えてきます。
 
 私も、70代位までは、チャーリーのように元気で野山を駆け巡り、100歳近くなったら、お祖母ちゃんのようにこたつで丸くなってたいです。その70代と100歳の間がどうつながるのか、想像もつきませんが。
 

 次回も、ロンドン映画祭からの予定です。
 

 
 
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-ヒビレポ 2014年10月22日号-

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