ハルヒマヒネマ 5−3

『ニンフォマニアックvol.1』/『トム・アット・ザ・ファーム』

 

『ニンフォマニアックス』面白すぎた!!

 
やまだないと(「料理入門」連載中)
 
 
 
 
 
『ニンフォマニアックvol.1』2013 デンマーク/ドイツ/フランス/ベルギー/イギリス
D/W:ラース・フォン・トリアー A:シャルロット・ゲンズブール/ステラン・スカルスガルド/ステイシー・マーティン
 
なんといっても、もうステイシー・マーティン! ステイシー・マーティン! ハルヒのエロスの具現化みたいな女の子で、吸い付きそうな肌と男の子みたいな胸と腰、この子がスクリーンに存在してるだけで、これは最高に娯楽映画なのだった。
トリアー監督がこの映画をポルノとしているところがいい。主演はシャルロット・ゲンズブールだけれど、ポルノ映画に主演すればポルノ女優になるのか、ポルノ女優だからポルノ映画に出るのか。娯楽に貴賎はないなんて言い方は陳腐だけれど、ポルノグラフィは誰の人生においても、楽しみの一つだと思う。
ハルヒはかつて、女の子がぱかぱか脚を開く漫画ばかりかいていたけれど、あれを描く事で何かを隠喩していたわけではまったくなく、あの目的は読んでいる人に性的な興奮を起こすことであって、それは読んでいる人の、また描いているハルヒの楽しみのためであった。
つい最近も、芸術とポルノのセンヒキ的な話題があがっていたけれど、芸術であるために、意味のないものに意味づけをするのはなんともつまらない。せめて、なんで人を性的に興奮させたいと思ったのか、って話になればいいのに。
性的に興奮させるきなんかまったくない。性的に興奮するのであれば、それは、する方がやましい。みたいな話はうんざりする。
そういうかんじで、この映画は、実に壮快で痛快なのだった。

 
自分を色情狂よばわりして幼少時よりの性体験を語り、行きずりの善良なおじさんに、少しでも不快を残そうとするおばさん・シャルロット・ゲンズブールの悪意、を、そのおじさん・ステラン・スカルスガルドが川釣りで培った根気と柔軟性で無功化していく、駆け引きが滑稽。
そんな中でみる、主人公の思い出の中の(でも話をきかされているのだから、おじさんの妄想の中の?)女の子、ステイシー・マーティンは、冒険小説のヒロインとして武勇伝をくりひろげてみせる。どちらかというと描写よりセリフで煽るので、ほんとに寝物語のおもしろ話みたいだ。
だれもが、こんなことはなんでもないことだと言う。
セックスも、色欲も、人の心の誠実も、死ぬ事さえも、何でもない事だと。
何でもない事といいながら、一人で抱え込む事をものすごく恐れている。
さて、vol.2に続く訳だけど、これは、ほんとうに「なんでもない」コメディでおわるのか、ものすごい傷を見せつけられるのか。
どっちにしても、観てるひとの貞淑や偽善を責めるものではないと思う。
映画館では爆笑が起こっていた。あれ、ユマ・サーマンだったのか!
 

              ●
 
 
『トム・アット・ザ・ファーム』 2014 カナダ/フランス
D:グザヴィエ・ドラン W:グザヴィエ・ドラン/ミシェル・マルク・ブシャール A:グザヴィエ・ドラン/ピエール=イヴ・カルディナル
 
この日のUPLINKでの上映のあと、岡田育さんと福田里香さんの「少女漫画視点」でえいがをひもとくアフタートークがあった。たしかにグザヴィエ・ドラン監督作品、いや、監督自身、少女漫画的なのだ。子役から活躍してきた役者としてもわりとボーギャルソンで、若くしてフィルムメーカーとして才能を発揮し、ガス・ヴァン・サントも絶賛し、各国映画祭でも評価される、弱冠25歳とか、岡田さんたちいわく「そんなキャラ設定、少女漫画でもそんなやついるかと編集者にボツをくらう」だろう整ったプロフィール。
それもあって、『わたしはロランス』と前後して日本でも公開された『マイ・マザー』『胸騒ぎの恋人』にはじまるUPLINKのドラン祭り、彼を女の子に向けてアイドル的にアピールするのは理解できる。この後もまだまだドラン祭りは続くみたいで、楽しみだ。
この映画をみて驚くのは、ドラン監督がものすごく映画がうまくなっているということなのだった。だって、これ、ほんとうにぞっとする心理スリラーだ!
今までハルヒが観た3本のドランの映画は、80年代MTV風のスタイリッシュを本気でやっているのか狙って外しているのか、微妙なイモくささがあって、そこが若い才能への安心感でもあった。それが、今回、なんだかまるで隙がない。優等生的な隙のなさではなく、圧倒的に彼の脚本・演出技術によるものだと思う。まずい! 25歳が、こんなに映画うまいのまずい!
未だに「いつか映画を撮る日」なハルヒは、映画をみながらたら〜りとあせるのだった。
原作があったことも、大きいのかもしれない。

ある日、トム(ドラン)が、死んだ恋人の実家を訪ねてくる。恋人の葬式に出席するため。そこは、トムたちが暮らしていたモントリオールとは大違いの寂しく保守的な田舎町。恋人の実家は広大な畑の中の孤島のような牧場。
トムを迎えた母親は、理解あるおおらかな女性のようでいて、最初からかなり威圧感がある。弟が出て行ったあと、一人で牧場を運営している兄は、身体も存在も横暴で暴力的で、トムが弟のなんであるか、その存在を知っていた兄は、半ば脅迫するようにトムを牧場にとどまらせてしまう。
恋人は、サラというふたりの同僚の女の子のことを恋人として兄や母に語っていたらしい。だからトムはそのいもしない恋人の存在を証明するために、共通の友人として母親にサラの言葉として自分の言葉を伝える。
トムは、冒頭、恋人への手紙を書き綴っている。失ったもののあとをうめるのは代わりの誰かだという、決心を。
それは最初、恋人を失った傷心のトムが、恋人の代わりをどこかに求めているようにも聞こえたのだけど、あれ? これ、は、トム、自分が恋人の代わりになるためにこの田舎町にやってきたんじゃないの??
トムの金髪は、そういえば、不細工に染められた偽物の金髪だ。トムがわざわざ恋人の葬式にたったひとりでやってきたのは、恋人と自分の時間の証明を求めたからじゃないのだろうか。見ず知らずの彼の家族に。
二人は幸福な恋人だった、そのことだけを、どこかに事実として残したかったのかもしれない。
それは、二人が幸福な恋人ではなかったからじゃないのか。
サラという女友達を、トムは牧場まで呼びつける。恋人のサラが実在する事を、母親のため証明する行為のようでありながら、トムは、いかにこの家族と自分が離れられないかをサラに語る。兄が暴力でトムをつなぎ止めていることをにおわせる。
でも、サラはその兄の暴力につなぎとめられることもない。求めていないから。
弟を息子をつなぎ止められなかったひとたちの心の穴をトムは居場所にする。そこに居座ってやれるのは、自分だけだという陶酔。でも、憎悪の対象になる事には恐怖を感じる。
いや、憎悪されても、手放せないものをトムはえらぶのかもしれない。
と、まあ、これはハルヒ風少女漫画の解釈だ。
映画はまだ公開中だから、内容に触れずに感想をかくのは難しいや。

「少年漫画は父親を越えるのがテーマ。少女漫画はそれが母親になる」というお話があった。
そういう意味でもドランは少女漫画的なのだと。
たしかに、ドランは常に母親を描いている。
デビュー作『マイ・マザー』がハルヒ一番好きだな。
ドランの映画の女の人は、見た目の美しさじゃなく、こう、人生のある顔をしてて好きだなあ。そういう女優を選ぶところが好きだ。
この映画でも主演するドランと母親の親子喧嘩のどうしようもなさは、いろいろ思い出すのか、みんな笑ってた。ドラン母子と対照的に、ドランの彼氏(フランソワ・アルノーがこのみだ! いいな〜あんな彼氏)の母親は、息子がゲイである事もまったく動じず理解と友情を示し、ドランにとって、また映画をみているハルヒにとっても理想のママ、そうありたい親の像にみえる、でも、そこになにも無理がないことはないということも、綻ぶ。
『わたしはロランス』でも感じた相手を理解しようと、相手を受け入れようとする事が、とても不自然なことであるという悲しさ。
不自然じゃない自然なんてない。
映画をみてると、息子ドランの幼さも母親の未熟さも、どちらもよくみえて、ああ、うまくいきそうなふたりなのにともどかしかったが、よく考えてみれば、親子というだけで、無条件に生活をともにしていることの気味悪さ。
ドランが描く母親は、家族そのもので、そしてそれがどれだけ気味の悪い存在なのか、ってこと。「愛せないけど、愛さないこともできない」って、あー、ほんとうに、家族ってそうだな。愛する事をやめれば、解放されることもあるだろうに、解放される事が怖かったりするんだろうか。ハルヒの中に、運がいいのか悪いのか、家族を愛せないという気持ちが無いのでわかんない。
でも、ハルヒがこのデビュー作を好きだと思ったのは、ドランが「愛されたい」と言わないから。ドランも母親も「愛してる」と、なんども、自分の中にその気持ちを探すように、確かめるように言う。「愛されたい」「愛して」とはいわないんだ。そこが好きだった。
『トム・アット・ザ・ファーム』でも、だれも、愛してくれとは言わない。求めない。
ただ、自分の愛を証明したいから傷つける。

グザビエ・ドランはアルターエゴを見つけるまでもなく、自分で自分を演じられて素敵だと思う。
 

 
 
 
 
ハルヒマヒネマ
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最近のハルヒの頭の中、日々をささげる王子様観劇日記
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-ヒビレポ 2014年10月31日号-

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