MAKE A NOISE! 第46回

メリル・ストリープのお言葉(第1回をご参照下さい)に従い、まだ知れ渡っていない面白い映画をロンドンからMake a noise!
 

セクシーなフェミニスト

 

山口ゆかり
(第16号で「どんなに幸せでも罪悪感と孤独感はぬぐえない」を執筆)
 
 
 
 セクシーであってほしいのは、ポール・ダンサーよりフェミニスト。だって、せっかく良いこと言ってるのに、もてない女のひがみととられたら、くやしいじゃないですか。

 そんな私でさえ、疑念を持ったのが『Ukraine is Not a Brothel』のフェミニスト。
 

 
 映画タイトル、ウクライナは売春宿ではない、はごもっとも。セックス・トラフィックのメッカになってしまったウクライナで、それを掲げるフェミニストが出てくるのはわかります。でも、そのメッセージを裸の胸に書いて伝える?

 そんな疑念には、映画自体が答えてくれます。実は、女性たちの影に黒幕の男性。男はギャングで女は娼婦みたいに思われているウクライナで、それに異を唱えるグループがまさにギャングと娼婦みたいな関係で活動している。その丸ごとを撮ったドキュメンタリーでした。

 というわけで、セクシーだけどフェミニストじゃない気がする『Ukraine is Not a Brothel』のみなさんでしたが、疑いもなくフェミニスト映画、かつセクシーでもあったのが『Wild』。

 

 

 
 この映画は、いわば女版『127時間』。こちらの女性が行くのはキャニオンではなく、1100マイルのパシフィック・クレスト・トライアル。そして、この映画も『127時間』同様、実話が基。シェリル・ストレイドの自伝が原作です。どこがフェミニストかって、トライアルを決意するに至る全てと言っていいくらい。
 
 決意の直接のきっかけは、とことん落ちて、そこから立ち直ろうとしたこと。結婚が壊れたことをはじめ不運が続いたシェリルは、生活が荒れ、ジャンキーの男とかかわって、ヘロインにまで手を出します。

 生い立ちがまた、酔って暴力を振るう父のもと、母に手を引かれ避難する日々。そして、父と別れた母は、娘と同じ学校に通い始める。女性の自立を、頭の中だけでなく、体験として考えざるを得ない暮らしの中、娘にとって良き友であった母も…

 柔らかく強い女性として母を演じるローラ・ダーン、いつもながら良いです。主人公を演じるのはリース・ウィザースプーン。『キューティ・ブロンド』の可愛い子ちゃん、『ウォーク・ザ・ライン』でアカデミー主演女優賞獲得の実力派です。岩山を登ったり、浮浪者と間違えられるほどヨレヨレのシーンもあって大変そうですが、きつかったのはセックス・シーンといいます。

 ロンドン映画祭の会見では、そのあたりでリースとシェリルのかけあいになりました。ウェートレスとして働く主人公が、レストランの裏口を出た路地で客2人を相手にするシーンを「そんなこと、したこともないし」というリースに、シェリルが「したことないなんて、信じられない!」。見所として作ったシーンかと思いきや、そこも実話!
 
CS&RW 2014L-s

シェリル・ストレイド&リース・ウィザースプーン 
2014年ロンドン映画祭(撮影:著者)

 
 考えてみれば、この映画、ほとんどがシェリルの黒歴史。自伝を書いた時点で吹っ切れてはいたのでしょうが、こうして映像で再現されたのをニコニコ語るのが天晴れ。映画の中でリースが演じるシェリルは自分の酷い状況さえ笑い飛ばせる女性でしたが、目の前のシェリルもほんとそのまんま。おおらかで、明るく、余裕がある。この方の言うことなら、もてない女のひがみとは、とられないでしょう。

 
 次回も、女性の映画です。

 
 
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-ヒビレポ 2014年11月5日号-

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