あのへん! 〜中野阿佐ヶ谷高円寺〜  第6回


中野新仲見世商店街

 
島田十万
(第16号で「よろずロックバー『山路』」を執筆)
 
 
 夕方、Hさんと中野で会うことになって、少し早めに家を出た。
 出がけに霧雨が降りだしたので電車にする。あたりがうっすら濡れているのはかえって雰囲気が出ていいと思ったけれど、中野に着いていくらもしないうちに雨は止んだ。それなら写真を撮りたいが、傘が邪魔だなぁ。
 カメラは濡らせないし、レンズは曇るし、写真の色は濁る。雨で良いことはひとつもない。ただ、被写体によっては濁った重厚な色になったりする面白さはある。

 阿佐ヶ谷も高円寺も飲み屋は多いけれど、中野はケタが違う。北口の飲み屋街の雰囲気は昔からそれほど変わらず、歩道を整備したところは全体がすっきりしたような気がした。奥が深くて、いつ来ても歩いているだけで楽しい。「中野ブロードウェイ」の知名度は全国区らしいけれど、ボクは一本脇の「中野新仲見世商店街」周辺がいい。
 
中野新仲見世1

中野新仲見世商店街。「ブロードウェイ」のすぐ横の通り

 

 
中野新仲見世2
正面の黄色い建物は「ワールド会館」。九龍城みたいだと言う人も。

 
 待ち合わせたHさんは、去年亡くなったボクの友人の奥さん。二人は子供がなかった。一人になって中野近くに引っ越したというので、ママがひとりでやっている小さなバーを紹介する約束をしていた。
 いろいろ話もあるし、バーの前に焼き鳥を食うことに。
 
中野新仲見世3
やきとり「泪橋」

 
 「泪橋」は商店街から1本裏通りにあって、5、6人座れるカウンターと4人掛けのテーブルがひとつだけの狭い店。
 中生ビール1杯とおまかせ5本セット1000円、を二人前頼んでカウンターに座る。
 テーブル席は年配のサラリーマンが4人。カウンターは男性の独り客、Hさん、ぼく、女性の独り客、若いカップル。満員だ。
 カウンターの前が厨房で、50歳くらいの店主とアルバイトの女の子。
 とにかく狭い店で、カウンターの上には焼酎ビンが林立しているから、店主がテーブル席の注文を渡すにはビンをよけて差し出すかたちになる。それをボクかHさん、もしくはボクの隣の女性がうしろに手渡す。そうやって、客同士もやりとりをするから店内が和やかになったりするのかな。サラリーマンのグループも明るく、静かにしゃべっていい雰囲気。
 
中野新仲見世4
中野新仲見世商店街夜景。

 
 死んだ友人の話などいろいろ聞いて、追加で頼んだ瓶ビールと鶏スープ200円を飲んだら、ボクはもうハラが一杯になってきた。アタマではいろいろ食べたいのに情けないことだなぁ。
 8時過ぎにお勘定、「バー」に行ってみるがやっていない。もしかしたら9時オープンだったか。
 「ワールド会館」は九龍城とか魔窟と呼ばれているという話をしていたら、Hさんが中を覗いてみたいというので探索。
 
中野新仲見世5
会館内、現役の坊さんがバーテンをやっている「坊主バー」。
入り口のお地蔵さんの後ろには「酒力本願」の文字。

 
中野新仲見世6
ワールド会館2Fからの風景

 
中野新仲見世7
行きたかったのは1F正面のお店。

 
 行きたかったのは「ワールド会館」向かいの建物の1Fの「バー」。ウロウロしながら時間をつぶしたが、結局右となりの「インステップ」という初めての店で飲んで待つことにする。ドアを開けると階段で、2階が店。マスターによればフリの客は多くないとか。
 すぐ裏手に大きなビルが建築中で、このあたりもそのうちそうなってしまうのではないかとも言っていた。店を閉めてから飲みに行くところを聞くと、近くの店を何軒か教えてくれた。函館出身。大学進学で上京して、卒業後にこの仕事を始めたという。
 Hさんは昔バーテンだったことがありカクテルに詳しく、ずいぶんと酒豪らしいので驚いた。旦那は飲めない人だった。
 結局11時までねばったが客はボクら2人。隣は開きそうもないので帰ることに。ママは芝居もしているので、公演が近いとか事情があるのかも知れない。
 ほろ酔いで写真を撮りながら帰るのは楽しいけれど、阿佐ヶ谷あたりでラーメンとか立ち食いソバとか食わないようにしなくちゃ。
 しかし、傘が邪魔だなぁ。
 
中野新仲見世8
新仲見世商店街の一画、居酒屋に混じって
レコードCDの店「文化堂」も。

 
中野新仲見世9
こちらは八百屋に見えるけれども、居酒屋。

 
 
 
-ヒビレポ 2014年11月10日号-

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