歌謡な毎日を送っております。 第6回

ゴッドファーザーになれなかったよ〜オトンと映画

 
田中稲(11号で「大阪から来た女」執筆)
 
 
 
 
相変わらず、突然ですが。
その昔、「ダスティン・ホフマンになれなかったよ」という歌がありまして。

ああ、俺も映画「卒業」の主役のダスティン・ホフマンみたいに
花嫁の君を奪い去りたかったけど、できずに見ているだけだった。
なのに、いまだに君のことを忘れられない俺って! 俺ってーーー!!!

…的なシツコイ男のウジウジ後悔がそりゃもう美しく切なく歌われております。
(そんな歌だっけ的な異論は今回に限って受け付けません)
 
hohuman

↑ジャケットが怖すぎてストーカーの香りが…(滝汗)。

 
まあ、映画「卒業」のあの有名すぎる花嫁略奪シーンに憧れるのは10代・20代前半までだよね。
齢食ってきて恋愛に対して現実的になってくると、あのシーン見ても
「今はドラマティックでええけどアンタらこれから大変やでどうすんねん」
という、「その後の二人の展開」ばっかり気になって気になって。
現実に結婚式で新婦奪うなんて実行したら、往生際悪すぎてドン引きだぃ!!


 
……とまあ、この冒頭を読んで
「おっ田中さん、ついに今回は結婚と恋愛に対する独身女の恨み言を特集するのねそうなのね」
と思ったそこのあなた。違う違うそうじゃない…。
そんなことを書きだしたら、400字詰め原稿用紙100枚くらいペロンと越えちゃうから。
私の負の怨念で季刊レポのサイト、ダウンしちゃうから。
今回は、マーロン・ブランドに憧れたけど「ゴッドファーザーになれなかったよ」な
我がオトンの話でございます。はっはっは。意表を突いてやったわ!
(いや、題名ですでにバレてるバレてる)

というのも、これを書いている11月2日、まさにオトンの命日。
そして今年は17回忌。
坊さんが来たり墓参りに行ったり親戚から花が届いたり大騒ぎ。
しかしなにより、オカンがオトンの形見の指輪を鑑定に行ったら、
なーんとなんと、値段がつかんオモチャだったというオチが!!
「あのケチん坊が〜!!! 呪ってやるーー!!」
怒りながら帰って来たオカン。呪ってやると言っても、オトンはすでにアッチの人。
多分天国で高笑いしていると見た(爆笑)。
17回忌にもなって、まだまだ夫婦ケンカのタネを振りまくオトン。
見事だ。見事すぎるよ、いよっ、どこまでも昭和の関白亭主っ。

で、せっかく前「オカンの本棚」を書いたので、
今回は「オトンの本棚」について書こうと思ったのですが、
オトンは根っからの理数系。数字は強いが文字にゃ弱かった。
本棚には彼の神・松下幸之助様の経営論の本と、
「なんとなーくカッコいいから」
と読みもしないのにお飾りで買っていた三島由紀夫が並んでいた程度。
ならば
「活字が苦手なら映像を見ればいいのよ」
と彼がマリーアントワネット風に思ったかどうかは謎だが、映画は、よく一緒に観た気が覚えが……。
いや、数はそんなに多くないんだけど、オトンと観た映画はやたらと印象に残っている。

私が生まれて初めてオトンに連れられて行った映画が「チャンプ」。
いや、良かったよかった!
まだまだチビッ子の私にはシブすぎるチョイスだったが、それでも
「アラいい映画!」
とオチビながら感動したのを覚えている。
日本の誇り、初クロサワもオトンに引きずられて体験。
チャンバラ映画なんて見たくもねーし、とぶーたれながらも
ドナドナ状態でオトンに連れて行かれたのは「影武者」でした。
で、これまた
「アラいい映画!」
オトンの思う壺ながら、大感動して帰ったのを覚えている。
 
champ


「チャンプ」、ボクサーの映画だった。今となってはこれしか覚えてない!!
いや、感動したのはホントです。ホント。

 
video

ほぼ捨てたけど、なぜかこの3つは残しておりました。オトンのビデオコレクション。
「もののけ姫」も「ヒットするには理由があるはず!」と鼻息ふんふんで購入してきたが
観た後「登場人物全員それぞれの信念があるからモメる、という内容で…ええんか?」
とものっすごいザックリした感想をまとめてきて、爆笑した覚えが。

 
あんまり「片っ端から見る」というタイプではなかったけれど、
まあまあ、それなりにいいとこ押さえるみたいなカンジ?(←うわ私エラそー!)
そんなマサオのいちっばんのお気に入りは、ハイッ出ましたッ、「ゴッドファーザー」!!
私は昔ピアノを習っていたのだが、オトンが
「康子、ゴッドファーザーのテーマを練習しろ。娘が弾くあの曲の傍らで酒を飲む。俺の夢を叶えてくれえええっ!!」
と熱烈に拝み倒され、必死こいで練習したものの、ピアノがヘタだった私は間違いだらけ。
それでも、私がピアノに向かうと
「来たぞ来たぞ、父と娘のドリーム・オン・タイム…」
とばかりにイソイソとウイスキーやらブランデーやらわざわざ高そうなグラスに注ぎ、
傍のソファに必ず座るオトン。
想像してください。
西宮のド田舎の山の中の一軒屋で、猫背のこけし顔の娘がヒーコラ間違いながら弾くゴッドファーザーのテーマ。横で聞くのは、丸坊主、しかもステテコ姿で、満面の笑みでグラス傾ける超日本顔のオッサン。
時に、家の真ん前にあった田んぼからカエルの鳴き声も合奏のように入ってくるというね……。
マフィア感ゼロぞなもし。。
 
god

レコードもあったけど、どこに保管してあるっけな…。
ニーノ・ローターのテーマ曲、難しいんだよッ!

 
私は当時、友人が作っていた映画の同人誌にちょこちょこ参加していて、
オトンの映画評はなんだかシンプル面白いので、自分の感想に交えて時々書いていたのですが。
オトンが急に死んじゃってポカーンの時に、
その同人誌のことを思い出して、引っ張り出して読んだら
「ああ、こんな感想言ってたなあ」
同人誌からオトンが何度も生き返って来る感じで、ビックリした!
文章ってすっごいなあ、書いておいてよかったなあ、と
「書く醍醐味?(←良い表現が思いつかない―!)」みたいなのを痛感した覚えがあります。
 

【題・ゴッドファーザーになれなかったよ 詞・田中稲】

DVDで「ゴッドファーザー」を見たよ
マーロン・ブランドが主演の
マフィアの話さ
あなたはコルレオーネに憧れて
「一度銃撃されたい」「マフィアになりたい」
その夢は法治国家日本ではちょっと無理だったよね

二人の娘が生まれても
ヤンチャぶりは衰えず 子どものように笑い泣き
ゴッドファーザーになりたがったよ
ゴッドファーザーになれなかったよ
その代りゴッドになっちゃったよ
まあ ちょっとした間違いさ
 

思い出と感情がぶるぶると甦る。
映画っていいですねぇ。

 
 
 
-ヒビレポ 2014年11月11日号-

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