MAKE A NOISE! 第48回

メリル・ストリープのお言葉(第1回をご参照下さい)に従い、まだ知れ渡っていない面白い映画をロンドンからMake a noise!
 

自称、日本の血を引くカナダのアクションヒーロー

 

山口ゆかり
(第16号で「どんなに幸せでも罪悪感と孤独感はぬぐえない」を執筆)
 
 
 
『Kung Fu Elliot』、エリオットがカンフーをする映画と思ったら大間違い。それカンフーなのか?から、誰なんだエリオット?まで、クエスチョンマークの大波に飲まれ、予想を超えた場所に打ち上げられるドキュメンタリーなんです。

 エリオット・“ホワイト・ライトニング”・スコットは、カナダのアマチュア映画製作者で自称マーシャルアーツチャンピオン。前作『They Killed My Cat』に続く新作『Blood Fight』の製作に余念がない。「今度は、大爆発の中を抜けていく映画を撮る!」というエリオットは、家の窓(1階)にたくさんの花火をくくりつけたかと思うと、それに火をつけ、果敢にも飛び超えた!…突っ込む隙を与えない見事な展開、まるでジャック・ブラックあたりが主演するコメディですが…
 

 
 
 
 ブラック主演ならおバカながら愛すべきキャラクターになるところ、愛すにはやばいんじゃないかと思わせるのがエリオット。それはパートナーであるリンダが追々証明してくれます。当のエリオット含め脇役の友人にも「本気なのか?」と問いただしたい中、陰に日向にエリオットを支えるリンダは、唯一、本気を感じさせる人。

 カップルでやばい? いえ、違います。むしろ、一番、地に足が着いている。エリオットとはネットで知り合ったというリンダは、離婚歴のある中国系女性。エリオット以上にエリオットの成功にかけているみたい。エリオットが映画製作に現を抜かしている間、リンダが稼ぐ生活では、そりゃ成功してもらわないと困るわな。

 ところが、エリオット、リンダにも本気じゃないような…。リンダの勧めで通い始めた針・灸・マッサージ師養成教室の研修旅行先の中国で、リンダに指輪を買ってくる約束をしたエリオット「高くって、とてもじゃないけど手が出せなかったよ」、不機嫌になるリンダ。観ているほうも『They Killed My Cat』で笑ってる場合じゃなくなってきます。

「映画はなんたって東洋だね。でも好きなのはチャック・ノリス」、ノリスの顔プリントTシャツ姿で語るエリオットに、微笑ましいワナビー・アクションヒーローでは済まされないところもちらほら。指輪を買えなかった中国で何をしていたかというと、一際目立つ朱色の上下を着て「僕はカナダの映画スター」てなことで、寄って来た女の子たちと写真に納まったり。
 肝心の映画製作も、アクション映画のはずが、グラマーというかボヨンボヨンな女性が登場、ポルノ撮影が開始される。コメディチックだったドキュメンタリーは、ダークな要素を加えつつ展開、ある意味、カタストロフィックな結末へ。

 登場人物自らが招いた結末にたどり着けたのは、このドキュメンタリーの作り手たちが、突っ込んだり、問いただす代わりに、2年かけて撮り続けたおかげ。馬には乗ってみよ、人には添うてみよ、ドキュメンタリーはただひたすら撮り続けてみよ、ですね。
 
 
 次回は、ワナビーではない、ほんもののマッチョによる映画です。

 
 
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-ヒビレポ 2014年11月19日号-

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