笑いたい読書  第8回

安かろう悪かろう愛しかろう

木村カナ(レポ編集スタッフ)

 
 
 
 
 
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内海慶一
『100均フリーダム』
ビー・エヌ・エヌ新社

 
 2010年の「笑う本棚」で新保信長さんが、今年の「笑う本棚」で乙幡啓子さんが選んでいるこの本。『愛しのインチキガチャガチャ大全』とともに、かの乙幡さんにとっての「「間違った」バイブル」って! レポの愛読者ならばそれだけでもう読みたくなっちゃうでしょ?

 しかもカバーが悪相のパンダフィギュアの写真なのである。パンダ好きとしては猛烈に気になってしまう。裏表紙・背にも同じパンダ、買ってみてからカバーを外したら、またしても同じパンダが! この悪そうなパンダ、本文でもいちばんはじめに登場している。もしや著者のお気に入りなのか? ゆるんゆるんのパンダグッズが他にもいくつか、もしかしてパンダ好きなのでしょうか……!?

 100円ショップで見つけた「脱力感あふれる自由」を感じさせる商品を、ひたすら紹介している本書。黄緑色の目のパンダはインパクトのわりにはまともな部類で、何が何だか、よくわからないあれやこれやがたっぷり載っている。えー、こんなの、100円だって誰も買わないよ……と溜息をつきたくなるような悲惨なモノも多々ある。は〜あ、これってどうしてこうなっちゃったんだろう、と首をひねりつつ、ニヤニヤしながら眺めていく。痛々しささえもほのかに漂うそれらをそっと拾い上げ、買い集めてきた著者の視線はあくまでも優しい。そうか、こういう面白がり方があったのか、と目を開かれた。


 
 大量生産・大量消費、安さ万歳の経済活動の波間に浮かんでは消えていく、取るに足らない、ちっぽけな安物たち。誰かの生活に少しでも彩りを添えようとかそういう、何らかの意図がそこにあったのかどうか。よくわからない。カップやグラスなどの実用品はまだいい、置物や人形といった装飾品の類は、本気でいかんともしがたい。どうにもこうにもテキトーすぎて、もはや意味不明なのである。キッチュと呼ぶには薄味で物足りない。だが、こうしてよくよく眺めてみれば、他のどこにもない、独自の味わいがたしかにある。何とも言えないおかしみがある。
 あとがきの中にこうある。

 なんという適当な世界だろう。彼らを眺めていると自然と口元が緩み、眉間の皺がつるんと消えてしまう。そして、いろんなことがどうでもよくなってくるのだ。 やがて私は、この得体の知れない解放感を誰かに伝えたいと思うようになった。

 これでいいのか? これでいいのだ! 本書はそんな肯定感にあふれている。テキトーさの中にフリーダムを見出して愛おしもうとする、著者の逆転の発想に拍手。

 実は、我が家にも「100均フリーダム」の落とし子たちがいる。発見したのは10年ほど前、100円ショップではなく300円ショップでだった。あまりのひどさに衝撃を受け、猛烈なためらいを感じながらも、あまりにもひどすぎるがために、とうとう買ってしまったのだった。
 
300_01

ホッキョクグマとパンダのフィギュアのように見えますが。

 
300_02
真っ黒けの尻、先っぽだけ黒い耳。

 
300_03
君は、パンダ、なの?

 
300_04
凶悪な面構え!

 
 丸くて黒いしっぽのパンダっぽいキャラクターを見るたびに、お前はパンダではない! ジャイアントパンダのしっぽは三角で白いのだ!!と苦々しく思うほどのリアルパンダ原理主義者と言ってもいいわたしが、なぜかこいつらだけはずっと手元に置いている。リアリティもクオリティもあったもんじゃないのに、このテキトーすぎるパンダらしき生き物の顔を見つめていると、不思議なことに、これはこれでまあいいか、と思えてくるのだった。これはこれでね、もう仕方ないんだよね、笑えるからいいよね……でもでも、これってやっぱり、パンダとしては大失敗ですよ! フリーダムにも程があります!!
 
 

-ヒビレポ 2014年11月20日号-

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