あのへん! 〜中野阿佐ヶ谷高円寺〜  第9回


古本100円棚

 
島田十万
(第16号で「よろずロックバー『山路』」を執筆)
 
 
 ヒマでヒマでなにもやることがないという時に、街のスナップ写真でも撮ろうかと思うのですが、いざ出てみると、そんなに撮るものがあるわけでもないんですよね。自転車でブラブラしている時間が長くなります。

 新刊書店はたいてい駅前にあるから、自転車が停められない。駐輪場に停めたりすると長居しちゃったりして写真を撮れない(まあ撮らなくたっていいんだけど)。
 その点、商店街からちょっと離れたところにある古本屋なんかで時間をつぶすのがちょうどいい。最近は100円棚が充実している古本屋が多いように思います。
 また古本屋めぐりという趣味もあるのでしょう、言葉をかわすわけじゃないけれど、あちこちで顔をあわせる人もいますね。
 
01荻窪ささま書店

 
 自転車で荻窪に行くときはたいてい南口「ささま書店」の前を通ります。ここの100円棚は本が頻繁に入れ替わり、老人が昼間から大勢たむろしている。人気のある店なんですね。と言っても男ばかりで女性はあまり見かけない。女の人は古本を買わないのか?

 ここは店内も広いし清潔で入りやすいのでちょくちょく立ち寄ります。
 先日は、山田風太郎のエッセイ集『半身棺桶』を店頭で見つけて購入しました。
 
02阿佐ヶ谷コンコ堂4185
 阿佐ヶ谷なら北口から歩いて5分くらいのところのコンコ堂がいい。絵本とか写真集とか漫画とか、サブカル関係も。
 100円棚に、松村友?『トニー谷、ざんす』、松下龍一『底抜けビンボー暮らし』を発見して購入。
 
03阿佐ヶ谷穂高書房
 阿佐ヶ谷北口、河北病院方向に5分くらい歩いた「穂高書房」。山岳書専門で地図とか古いガイドブックとか山関係のもの中心。入口は狭くて入りにくいし、なかに入っても……。完全にマニア向けと思います。左トナリは古着屋。
 
04阿佐ヶ谷穂高書房.30

05阿佐ヶ谷穂高書房.31
 
06高円寺都丸書店31

高円寺「都丸書店」ショーウィンドー。「韓国警察史」3冊100.000円。

 
07高円寺都丸書店32
高円寺「都丸書店」ショーウィンドー。「大英商業誌(全17巻揃)」250.000円。

 高円寺駅高架下の「都丸書店」は、映画「苦役列車」(寝たきりになった老人の介護をする前田敦子が熱演)のロケ場所にもなった老舗。知っているところもニュースより映画で出るとなおうれしい。

 この店で一番高価な本はアダム・スミスの『The Theory of Morel Sentiments』という初版本で315万円。一番古い本は1631年発行のフランス語版『イソップ物語』の初版本で250万円、とフリーペーパーで読んだ。ここは、学術的な専門書が多いようでボクは未だ買ったことはありません。
 
08中野タコシェ91 
 中野ブロードウェイ「タコシェ」。新刊、古本、自費出版、少部数ものなどいろいろ。「いましろたかし」の新刊はここで購入。
 
09中野古書うつつ33
 中野ブロードウェイ「古書うつつ」。幻想文学と落語関係が専門。
 
10高円寺酒場コクテイル2
 高円寺「古本酒場コクテイル」。1冊持っているけれども、田中小実昌『アメン父』を発見して、350円で購入。
 
11高円寺アニマル洋子073
 高円寺パル商店街「アニマル洋子」。サブカル関係が多い。最近は改装中か、休みのことも多い。古着も少し置いてあるが、これは若い人向け?
 
12阿佐ヶ谷枡野書店4044

南阿佐ヶ谷「枡野書店」は、「書店」というのとは少し違うのかも。
よく前を通るが入ったことはない。

 
 古本屋は西荻窪にも有名店が多いらしいけれど、ボクはあまり行ったことがない。先日、三鷹の北口からちょっと歩いたところで見つけた「水中書店」もいい店だった。値づけも良心的と思った。
 古本屋を廻るのは楽しい。ただ、いい本を2、3冊見つけて買って帰ると、なにもしていないのになにか仕事をしたような気になってしまってしまうんだな。いいんだかよくないんだか……。
 
『半身棺桶』でこんな一節を見つけました。
「明治37年9月19日、ラフカディオ・ハーンが狭心症の発作を自覚し、胸をおさえて妻の節子に言った。
『私、新しい病気、得ました。……この痛み、もう大きいの、参りますなら、多分、私、死にましょう。私、死にますとも、泣く、決していけません。小さい瓶、買いましょう。三銭、あるいは四銭くらいの、です。私の骨いれて、田舎の寂しい小さな寺に、埋めて下さい。もし人が尋ねましたならば、はあ、あれは先ごろ亡くなりました。それでよいです』
 それから7日後の夕方、庭でタバコをのんでいたハーンは座敷に上ってきて「ママさん、先日の病気、また参りました」といい「人の苦しがるの見るの、不愉快でしょう。あなた、あっちへいって、なさい」といって、ベッドに横たわった。寝てしばらくすると、もうハーンの息は絶えていた。その顔に苦痛の色はなく、微笑の影が残っていた」
 お手本にしたいような最期。

 
 
 
-ヒビレポ 2014年12月1日号-

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