あのへん! 〜中野阿佐ヶ谷高円寺〜  第10回


阿佐ヶ谷ラピュタ

 
島田十万
(第16号で「よろずロックバー『山路』」を執筆)
 
 
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「加東大介特集」の何本かを観たいと思って「ラピュタ」で会員証をつくってきました。
「ラピュタ」は阿佐ヶ谷にある映画館です。というよりはレストランと映画館を備えた劇場、と言ったほうが近いのかな?
 地下の劇場には、未だ入ったことがありませんが、3階のレストランには何度か行きました。
 最近、特に昭和の古い映画ばかりかけている2階の映画館には何度も通っています。『幕末太陽伝』もここだし、『座頭市』シリーズや『不知火検校』、新藤兼人監督の『裸の島』とか『鬼婆』、増村保造監督の『盲獣』もここで観た。
最近はご無沙汰していて、あらためて期限切れの古い会員証を見た
ら、最後にラピュタで映画を観てから3年も経っていた。
 たしかポスターに小津安二郎の名前があって、『風の中の牝鶏(かぜのなかのめんどり)』という聞いたことのないタイトルだなぁと思いながら観て感激したのが最後。敗戦後の暗いテーマの映画で、主役の田中絹代が階段から落ちるシーンをよく覚えています。
 それ以降、会員証が切れたままになっていました。

 
 
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1Fの待合室。時節柄高倉健関係の書籍などが展示されていました。
八千草薫、田中絹代、池部良、鶴田浩二、フランキー堺などなど、
マルベル堂のプロマイドは1枚324円。

 
 で本日、午前10時半の初回上映前に行って会員証を作り直し。平日の大雨降る寒い日だから客も多くはないだろうと出かけたけれど、50席ほどの小さな会場の約半分が埋まっている。古い邦画ファンが多いのだなぁ。
 一人だけ年配の女性がいたけれどあとは全員中高年の男性。古本屋でも感じたけれど、女性は過去を振り返らないのかな。今現在が重要とか。
 最前列右端に落語家の快楽亭ブラックさんがいました。ラピュタでは何度も見かけているけれど、いつもここに座っておられます。
 ブラックさんはもちろん人気の落語家ですが、映画の見巧者としても有名な人。今年9月21日の日記に、正月明けから劇場で365本映画を観た、と日記にありましたから、年間500本近くにはなるんじゃないだろうか!
 観た映画はほとんど『快楽亭ブラックの出直し日記』に載せるみたいだし、今回の映画、丸山誠治監督『女ごころ』にどんな評を下すか楽しみ。
 映画開始前の場内には『若いお巡りさん』『おーい中村君』『カスバの女』など懐メロがずっと流れて、一杯ひっかけたくなります。

 『女ごころ』は1959年東宝作品。翻訳家で大学の先生をやっている主人(森雅之)の浮気を許せない妻(原節子)が苦悩の末に、もう一度やり直そうと決心するという話。昭和30年代初頭の東京が舞台で、世田谷あたりか、まだ住宅街の道路が舗装されていません。大柄でごつごつした顔の原節子が今でも美人の代名詞になるのかはともかく、愛人役の団令子が若くてかわいい。
 
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阿佐ヶ谷、高円寺のあたりには
ラピュタの特集予告のポスターが貼りだされます。
これが、毎回なかなかカッコイイ。

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 昼すぎに一本目が終了して一度帰宅。用事を済ませて夕方5時、朝から続く雨のなか、再びカッパを着込んでラピュタへ。「加東大介特集」の一本で『サラリーマン出世太閤記』筧正典監督。
 東南大4年で応援団長の主人公(小林桂樹)が、苦労の末に自動車会社に入って社長(加東大介)に見込まれていく話。出てくる人がみんな善人で、悪役でさえも純朴という設定。だからあの時代のほうが良かった、というわけじゃないけどねぇ。ここでも団令子が好演。
 終わってみたら「第一部」とあったから続編があるんだろうな。客は13人でした。一番後ろのジイサンは紙袋に入れた赤ワインをラッパ飲みしていた。
 途中おっと思ったのは、大手町とか銀座近くの大きな通り(たぶん日比谷通りか銀座中央通り?)に「A.ave」という英語表記の道路標識があったこと。1957年製作の映画だけれど、そのころまでは東京のド真ん中にまだ植民地の名残があったんだなぁとドキッとしました。
 
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ラピュタ近くの(私設)「阿佐ヶ谷美術館」。
「美術館」そのものがアート。
たまに開館している。

 
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「山路」もラピュタから歩いて1分。
どんなバーかは『レポ16号』、「よろずロックバー『山路』」を参照ください!

 
 今回の「加東大介特集」には「日本映画の至宝・加東大介」というサブタイトルがついて36本上映されますが、ボクの一押しは『南の島に雪が降る』久松静児監督、笠原良三脚本(12月10日〜上映)。原作は加東大介で、本人の戦争体験を小説にしたもの。
 加東大介はもちろん小林桂樹、伴淳三郎、森繁久彌、西村晃、フランキー堺、桂小金治、志村喬、渥美清、三木のり平などなど日本映画最盛期の名優たちが勢揃い。
 ボクは何年か前に一度観ているのですが、その時もラピュタだった。
 
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-ヒビレポ 2014年12月8日号-

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