ジョン(犬)
島田十万
(第18号で「『ゆめや辨天洞』めぐみ」を執筆)
久しぶりに「ジョン(犬)」と待ち合わせて、中杉通りにある中華料理店「孫(そん)」でランチを食べました。
「ジョン(犬)」はオルガンを弾きながら歌う女性シンガーソングライターで(犬)もふくめて名前。一度写真のモデルをやってもらいました。
熊本の公演から帰ったばかりで、またすぐに京都に行くらしい。
オルガンの弾き語りというのも聞かないけれど、全身オオカミの着ぐるみで演奏するというのも珍しいんじゃないか。もう20年以上前からこのスタイルでやっている。
単独の演奏だから、リズムやディテールを即興的に変えてみたり、その日の客のノリや好みに応じて自在に変化する。かなり独特なパフォーマンス(YouTube「ジョン(犬)」で検索してみてください)。
11時半ごろ入店したときは2席空いていたけれど、ボクがタンメン、ジョンが焼きそばを頼んで、それが出てくるころには店内は満席。入り口には10人くらいの行列が出来ていました。人気の店なんですね。
さっと食べて、コーヒーに誘うと「カフェ・ポトロは知ってますか?」とジョン。
「カフェ・ポトロ」はボクもよく利用する喫茶店です。昔ながらのフツーの喫茶店で、コーヒーもサンドイッチも極々フツー。あまり特徴がない。フツーのおじさんとフツーのおばさんがやっていて、スポーツ新聞とマンガ週刊誌が読み放題のどこにでもあったフツーの喫茶店。ただ何が違うんだかとても居心地のいいところ。
だけど、「ポトロ」は満員で入れなかった。ボクは遅い午後にコーヒーを飲みにくることが多いので気がつかなかったが、昼時はいつもこんな感じなのかもしれない。区役所の目の前だからな。普段ゆったり対応してくれるオバさんがテンパっていた、と中を覗いたジョンが笑った。
中杉通りの「珈司(こうし)」も良いとボクはジョンに教えた。近くの商店街に勤める人たちかな、常連さんがカウンターにいるくらいで4つあるテーブル席はたいてい空いている。静かで、水を補充する以外はほっておいてくれるから一人でぼんやりするのにいい。今どき、コーヒー1杯250円も珍しいのではないか。
ただ、話をするには静かすぎるので、本日は、ジョンがたまに行くというパールセンターの「ヴィクトリーカフェ」にした。
ここはサンドイッチの専門店で、店の奥でコーヒーが飲める。ボクは初めて入ったがここも満員。一番奥に2席だけ空いていた。年齢層は高めで女性客が多い。サンドイッチは一つ250円くらいからで、どれも美味そうだけれど一つじゃ足りないと思う。
音楽活動のほかに、ジョンはタロット占いの個人授業もしていて、阿佐ヶ谷近辺の喫茶店にくわしい。マンツーマンで喫茶店で教えるのだ。
別になんの用事があるわけでもないからひとしきり喫茶店の話をした。
もともとは、ジョンが新しく「バーレスク」を始めたらしいと聞いて、先月末に高円寺「パンディット」に観に行った。それが5年ぶりの再会で、昼ごはんを食べようということになった。
共通の友人の話とか映画の話になって、ジョンは大学で映画を勉強したんじゃなかったか。ずいぶんマメに映画館に通っているようだ。
バーレスクというのは、酒場で行われるストリップショー。といっても過激なものではなく、オッパイも先っぽはちゃんと隠して踊ります!
お色気よりはダンスや歌を楽しむもので女性が観ても楽しめるショーというのがコンセプトなんですね。ボクは7年くらい前に「紫ベビードール」という人気バーレスクグループを観てすごく楽しかった記憶がある。
精神的に不安定な時期があったけれど、最近はそういう山を越えて元気になったみたいだと言うから、安心した。
-ヒビレポ 2014年12月15日号-