MAKE A NOISE! 第52回

メリル・ストリープのお言葉(第1回をご参照下さい)に従い、まだ知れ渡っていない面白い映画をロンドンからMake a noise!
 

死のうとする人

 

山口ゆかり
(第16号で「どんなに幸せでも罪悪感と孤独感はぬぐえない」を執筆)
 
 
 
 今回は死のうとする人に対する人の映画2本、1本はコメディ、1本はヒューマン・ドラマ。

 誰かが飛び降り自殺しようとしているところに、立ち会ってしまったら?というシーンがポイントになるコメディの前に、そのシーンから始るアークティック・モンキーズ『Leave Before The Light Come On』PVをどうぞ。デビューした2006年の曲で、3番目のシングル。歌詞はナンパした翌朝みたいなこと。白けた朝を迎えるより、明るくなる前に立ち去った方がいいよとか歌ってますが、PVは歌詞と関係ありそうでなさそうな、なかなかの短編映画です。
 
https://www.youtube.com/watch?v=SEukS2YN9B8
 
 さて、コメディ映画。こちらで、飛び降りようとするのは恋に破れたフランスの中年男、対するは誠実を絵に描いたようなアフリカの青年。もちろん、青年も何とか思いとどまらせようとがんばる。その言葉がとってもナイスで、そのまま映画タイトル。
 実際、そういう人を見たら「アーッ!」、せいぜい「ノーッ!」とか「止めろー!」の後が続かない気が。何言えばいい?死んで花実が咲くものか?そんな時代がかった文句は普段から言いなれてないと無理。
 この青年の苦し紛れの言葉が『Jump Tomorrow』。「(とりあえず)明日にしようよ」、好きだなあ。
 そのタイトルを裏切らない、間抜けで可笑しくて切実な展開もナイス。青年は青年でいろいろある。家同士で縁組された婚約者との挙式が控えていて、それでいいのかという思いがあるところに、スペイン人の女の子との出会い。でも、そちらも彼氏持ち。あんなことやらこんなことやら夢見ながら、スペイン語を勉強する青年。このスペイン語学習が、最後につながる上手い伏線にもなっています。
 

 
 
 
 この映画で2001年に長編監督デビューしたジョエル・ホプキンス監督は、2008年にはダスティン・ホフマン主演、相手役にエマ・トンプソンで『新しい人生のはじめかた』を撮りました。演技派の2人も良いですが、私は『Jump Tomorrow』の方が可愛いいです。評価も高く、複数の映画賞獲得・ノミネート。輸入DVDが出ていますので是非。

  
『Goodbye Solo』は、自殺を考えているとしか思えない老人と、かかわることになったタクシー運転手、ソロのお話。こちらも、10分間のスタンディングオベーションを受けた 2008年ヴェネチア映画祭での国際批評家連盟賞はじめ多数受賞。
 ソロの運転するタクシーで、映画館に行く無愛想な老人。何度か乗せるうちに、人懐っこく親切なソロは、あれこれと老人の世話を焼くようになり、その境遇もわかってくる。
 そんなソロに、老人が告げた行き先はブローイング・ロック。行きだけで迎えはいらないという。ブローイング・ロックは切り立った崖の名所。風が吹き上げる場所でもあり、飛び降りた若者が強風に乗って崖の上にいた恋人のもとに戻ってきたという伝説も。
 崖から物を投げ、吹き上げられるのを確認するソロが何を考えているか、痛いほどわかります。
 

 
 わけありな老人を演じるレッド・ウェストは、高校時代に1つ年上だったエルビス・プレスリーと出会い、そのままプレスリーの運転手やボディ・ガードを務め、映画にも出るようになったという経歴の持ち主。
 ソロを演じるスレイマン・スイ・サヴォネは、この作品の前に短編1本に出演しただけの新人だったのが、いきなりインディペンデント・スピリット・アワーズ主演男優賞ノミネート。その時の受賞者は『クレイジー・ハート』のジェフ・ブリッジスで、ノミネートされたのが『(500)日のサマー』のジョセフ・ゴードン=レヴィット、『シングルマン』のコリン・ファース、『ビンテージ・ラブ〜弟が連れてきた彼女〜』のアダム・スコットとそうそうたるメンバーでしたが、引けをとらない演技です。ソロはこの人しかないと思わせるはまり役。
 ラミン・バラーニ監督はこれが長編4作目。その前の作品も高評価で、最近ではハリウッド・スターが出る映画も撮っているので、いずれ日本でも観られるのでは。

 今回は、2001年と2008年の映画を記憶の下の方から手繰り寄せました。はぁー、一安心。『Jump Tomorrow』は、普通にお金払って観た映画なので、まあ、いいですけど、『Goodbye Solo』は試写だったので、心苦しかったです。プレスとして、ただで観せてもらってるのに、書く場所が見つけられず、無銭飲食したみたいな気分でした。
 どうしようもない映画なら、そんな気分にはなりません。ダメなものはしょうがないので、無視できますけど、良い映画なのに書けないのがつらい。次回は、そういうつらさを含めた残酷な映画のお話です。
 
 
 
 
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-ヒビレポ 2014年12月17日号-

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