ヒビムシ  3 – 6

すみよし桃源郷:アカホシテントウ

沢田佳久
(第11号で「五十円玉はどこだ」執筆)
 
 
 
 
 
 旅行に出る都合上,すこし前倒しで1月27日に書きはじめた.ネタのほうも変則的に,おウチに篭って昨今のことをアレコレ考えて書くことにします.

 という,一回くらいは許されそうな手を考え付いて,まずシミのことを思い出した.紙の魚と書いてシミと読むやつだ.前々回のイシノミとの関連で出したいなと.ウチのトイレには紙類の堆積,置いたままのペーパーの芯や読み終えた雑誌が置いてある辺りにシミが生息している.年に数回は十分に成長した姿を見せてくれる.
 このシミを,たしかいちど撮影したことがあって,「一応押さえた」感が残っている.しかし,いつのことか思い出せない.手帳や野帳を繰っても発見できない.他の虫なら文脈的にというのか,前後関係とか場所とかをきっかけに思い出せるのだが,自宅でついでに撮った数コマなので,記録をつけそこなっているのだ.何月ごろかもわからない.
 ハードディスクのどこかにあるのだが行方不明である.それでは意味ないし.すこしく探索してみて諦めた.徒労に終わる.今日はそういう探検をしているのである.
 ただハードディスク内を探検してるうちに,昨年の今ごろのネタを掘り起こすという手を思いついた.昨年の今ごろので良いネタがあった.春編第10回でも少し言及したウメの木のタマカタカイガラムシとアカホシテントウである.肝心な場面が撮れてないのだが,他の時期の写真も引っ張り出して現状を纏めてみることにしよう.


 
 昨年,2014年の1月28日には西脇市の「すみよし桃源郷」という公園でアカホシテントウを撮っている.
 西脇の地名はたぶん,小山か町か城か,ともかく加古川沿いにある何かの西の脇を意味するごく狭い地域をさす名前に由来するのだろう.しかし合併を繰り返した現在の西脇市は加古川の東西に広くまたがり,東経135度,北緯35度も領有して「日本のへそ」を自称する勢いである.
 加古川水系の畑谷川は,平成の大合併までの黒田庄町を流域としている.本流に向けて思いっきり東のほうから流れ込んでいる川で,その意味ではぜんぜん西脇ではない.
 桃源郷は名のとおり,その畑谷川の奥のほうにある.結構な距離を遡っても中流域的な風景で,川に沿って田んぼが続き,集落が点在している.そんな集落の一つに桃源郷の看板が出ているのだ.たぶん元々お寺の畑か果樹園だった場所が小さな公園になっていて,モモならぬウメの類が植わっている.そこのウメにタマカタカイガラムシが密生し,それを食べるテントウが発生している.
 
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タマカタ♀とアカホシ

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 遠目に見るウメの木は,ゴツゴツと屈曲した古枝と,細く上に延びた若枝から成っていて,枝ぶりだけでウメである.花の季節でなくとも独特の趣きがある.
 しかし古枝のゴツゴツ部分をよく見ると,そこには魑魅魍魎の住む別世界が広がっている.固着したタマカタカイガラムシ.若虫は平たいが,成虫は茶色い球形の殻を作る.玉というか粒というか.これが蔓延した古枝では,春に表面がすべて茶色い玉で覆い尽くされてしまう.そのビッシリさは気づいた者が凍りつき,虫だと知ってドン引きするレベルである.
 玉というか粒になるのは♀だけで,♂は翅のある普通の虫になる.普通といってもかなり弱々しいアブラムシみたいなものらしいが,それをまだ見ていない.
 醜悪な♀のカイガラムシの表面は硬く,並みの虫では歯が立ちそうにない.ところがこれを専門に食べてくれるテントウがいる.アカホシテントウがそれである.半球形のイメージのあるテントウムシ類にあって,アカホシは正面両側を押しつぶしたような,独特なフォルムである.成虫はほぼ通年見られ,冬にもしぶとく活動している.厳冬期に産卵するらしいのだが,それも未確認である.昨年はそれを見に行って早かったのだ
 
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タマカタ幼虫の残骸と

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 冬に見られるアカホシは,ちゃんと黒地に赤い星が二つある.2013年の12月8日の写真には,カイガラムシが分泌した汚色の蝋物質や,食い散らかされた死骸に囲まれて幸せそうな様子が写っている.このときもあまり活発ではなかった.食われるほうに合わせて食うほうもゆっくりだ.カイガラムシを食うテントウはいろいとあるが,タマカタとアカホシは二種で特別な世界を作っている感じである.
 だいたいタマカタの♂はセミやカメムシと同じ半翅類のくせに蛹の期間を経過するらしい.♂成虫が出現するのもごく短期間だと思われる.テントウの方もモリモリ食っているところを見たことがないが,多いところには死ぬほどいる.重大な害虫と強力な天敵なので既知情報は多いのに,なかなか決定的な場面を見せてくれない二種である.
 
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アカホシの羽化

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 さて,さらに時を遡って,アカホシテントウの羽化を見たのが2013年の6月13日.写真のように羽化しつつある成虫は瑞々しい.羽化後しばらく経過して黒くなった個体もいたが,背中(翅鞘)は広くぼんやりと赤いだけだ.つまり赤い点や星にはなっていない.
 蛹は幼虫時代のトゲトゲの皮を半脱ぎのまま,割れたアケビの実のような状態である.そんな蛹がびっしり並んでいて,次々と羽化.
 このときには這って移動している幼虫も残っていた.とても正義の味方といえる代物ではなく,むしろカイガラムシをしのぐオゾマシさと言えよう.
 無事に羽化を果たして一休みしているテントウも撮った.その周りをよく見ると,こっちはカイガラムシの♂の抜け痕がびっしり.正常に抜けたものや,食われたものや,まぜこぜである.
 
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タマカタ♂の抜殻とアカホシ

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 こんなウメの古枝の世界を,皆さんも一度のぞいてみませんか.

 
 

◆立体写真の見方◆

同じような2コマが左右に並んだものは「裸眼立体視平行法」用の写真です.
平行な視線で右の目で右のコマ,左の目で左のコマを見ると,画面奥に立体世界が見えてきます.
大きく表示しすぎると立体視は不可能になります.

色がズレたような1コマのものは「アナグリフ」です.
青赤の立体メガネでご覧ください.
メガネは右目が青,左目が赤です.
緑と赤の暗記用シート等でも代用できます.

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MPO版とは,複数の静止画を一つのファイルにまとめたもので,ここでは立体写真の左右像を一つにまとめたファイルです.3DSをはじめ,多くのmpo対応機器で3Dとして再生,表示することができます.PCやスマホ等でダウンロードできますので,各機器にコピーして再生してみてください.
 
 
 
 
 
-ヒビレポ 2015年2月9日号-

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